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2012-02-05 11:22:00

2010年度外食産業動向調査 主要飲食サービス業111社~売上高は2.1%増 専門料理店が伸び率トップ~

 外食産業は急速な市場縮小で苦境に立たされている。リーマン・ショック以降の景気低迷で消費者は生活防衛意識を働かせるようになった。贅沢な支出を抑えるために外食を控え、家で調理する「内食」志向が増えるなど、経済環境の急速な変化は一般消費者の食事スタイルにまで影響をもたらしている。

 主要飲食サービス業111社の2010年度売上高は3兆8,551億円で、2009年度から2.1%増加し、やや好転の兆しが見えた。全体としては減収企業(57社、構成比51.4%)が多かったが、売上高500億円以上の20社では増収企業が半数を超え、全体を引き上げた。また、業態別では「専門料理店」「ファーストフード」「カフェ」などメニューの性格が比較的限定される業態で売上の伸び率が高かった。

 今回の調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(258万社、tsr-van2提供社数)から抽出した、2010年度の売上高100億円以上の「飲食サービス業」を対象とした。


《調査結果》

  • 「飲食サービス業」を主業種とする売上高100億円以上の企業は111社(「持ち帰り・宅配飲食サービス業」、「食堂」を除く)。
  • 111社の2010年度売上高合計は3兆8,551億円で、前年度比2.1%増。
  • 111社の売上高は、「増収」が54社(構成比48.6%)、「減収」が57社(同51.4%)で拮抗。
  • 売上高の伸び率は「0%~4.9%減」が27社、「0%~4.9%増」が26社で、この2つのゾーンで半数近くを占めた。
  • 損益が判明した104社の2010年度損益合計は423億2,300万円で、前年度比68.4%増加した。
  • 104社の損益は、「増益」が48社(構成比46.2%)、「減益」が56社(同53.8%)。
  • 104社のうち黒字企業は68社(構成比65.4%)、赤字企業36社(同34.6%)で、3社に2社が黒字だった。
  • 業態別構成では、「専門料理店」が23社(構成比20.7%)、「ファミレス」及び「居酒屋・ビアレストラン」が各16社(同14.4%)、「ファーストフード」が12社(同10.8%)、「カフェ」が7社(同6.3%)。
  • 地区別構成では、「東京」が63社(構成比56.7%)で最多。次いで、「東京を除く関東」が17社(同15.3%)、「近畿」が15社(同13.5%)、「中部」が8社(同7.2%)。
  • 業態別の売上伸び率では、「専門料理店」が15.0%増とトップ。最下位は「居酒屋・ビアレストラン」の2.9%減。

【調査対象】

  1. 「飲食店」(「持ち帰り・宅配飲食サービス業」、「食堂」を除く)を主業種とした企業で、2010年度売上高が100億円以上。
  2. 対象決算は、2009年4月~2010年3月期決算を「2009年度」、2010年4月~2011年3月期決算を「2010年度」とした。
  3. 「2009年度」「2010年度」2期分の売上高が判明している会社。
  4. 持株会社への移行などで決算に連続性のない会社は対象外とした。
  5. 決算期変更で変則決算となる場合は、売上高、利益を年換算している。
  6. 業態はTSR扱い品コードをもとに独自に分類した。

◇売上高推移

 111社の2010年度売上高合計は3兆8,551億円で、前年度より794億円(2.1%)増加した。

 リーマン・ショック以降、消費者の外食離れが進み、企業でも接待利用が減少するなど外食産業市場は急速に縮小したが、2010年度はやや回復の傾向が見られ、全体の売上高は若干持ち直した。

 売上規模別の構成では、「100億円~200億円未満」が64社(構成比57.7%)で半数以上を占めた。次いで「200億円~500億円未満」が27社(同24.3%)、「500億円以上」が20社(同18.0%)。


2010年度外食産業 売上高上位10社


◇業態別構成

 111社を業態別に分類すると、寿司、焼肉、ラーメンなど、提供するメニューが特定されている「専門料理店」が23社(構成比20.7%)で最も多い。次いで、「ファミリーレストラン(ファミレス)」と酒類飲料を集客の材料としている「居酒屋・ビアレストラン」が各16社(同14.4%)。ハンバーガー、牛丼などを提供する「ファーストフード」が12社(同10.8%)、「カフェ」が7社(同6.3%)の順。業態が複合的などの理由で、これらに当てはまらない「レストラン他」が37社(同33.3%)だった。

外食産業 業態別構成比


◇地区別構成

 111社の本社地を地区別にみると、関東が80社(構成比72.0%)で7割を占めた。このうち63社(同56.7%)が東京に本社を置いている。次いで、近畿が15社(同13.5%)、中部が8社(同7.2%)の順。近畿は15社中、10社が大阪で、顧客の多い大都市圏に大手が集中している。

 また、111社のうち上場企業は41社(構成比36.9%)、未上場企業は70社(同63.1%)。

外食産業 地区別社数

◇売上高の状況

 111社の2010年度売上高は、前年度比で増収が54社(構成比48.6%)、減収が57社(同51.4%)とほぼ拮抗する結果となった。

 売上規模別では「500億円以上」と「100~200億円未満」で増収が減収を上回ったが、「200~500億円未満」では27社中、18社(同66.7%)が減収となった。


◇売上高伸び率

 2009年度から2010年度にかけての売上高伸び率は、「0%~4.9%減」が最も多く27社(構成比24.3%)。次いで「0%~4.9%増」が26社(同23.4%)。この2つのゾーンの合計が53社(同47.7%)で、約半数が売上の微増、微減にとどまった。

 売上高が前年度より2倍以上増加したのは2社(同1.8%)あったが、合併や他社の店舗を複数引き継いだことによる売上の大幅な増加によるものだった。


◇損益の状況

 111社のうち損益が判明した104社の2010年度損益合計は423億2,300万円で、前年度比68.4%増加した。ただし、個別では増益が48社(構成比46.2%)、減益56社(同53.8%)で、減益企業の方が多かった。

 また、黒字68社(同65.4%)に対し、赤字は36社(同34.6%)で、3社に2社が黒字だった。

 売上規模別に見ると、「500億円以上」で黒字率が75.0%と最も高く、赤字率は「200~500億円未満」が44.0%で最も高かった。


◇業態別 売上高伸び率

 業態別に売上高の伸び率を比較すると、「専門料理店」がトップで15.0%増だった。次いで「カフェ」が4.7%増、「ファーストフード」が2.6%増。一方、マイナスの伸び率となったのは「レストラン他」が0.2%減、「ファミレス」が、2.0%減、「居酒屋・ビアレストラン」が最下位で2.9%減だった。

 「専門料理店」は売上高10位の(株)あきんどスシローが大幅な伸び率で、全体のアップにつながった。ただし、同社を除いても伸び率は4.8%増で業態トップは変わらない。外食を控えてきた反動として、消費者の嗜好が左右する「専門料理店」が伸びたと考えられる。また、出店を進める「カフェ」や比較的低価格で手軽に食事を済ませられる「ファーストフード」も好まれた結果となった。