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日本の「ハイボール」、NYで流行の兆し
理想的な割合で調合されたビールサーバーのような装置からグラスに注ぐ
米ニューヨーク・ブルックリンのウィリアムズバーグ地区にあるバー「キンフォーク90」では、マンハッタンカクテルや、ホップの利いたインディアペールエールなど常連客はさまざまな飲み物を楽しむことができる。だが多くの客が選んでいるのはウイスキーソーダだ。
ただ、これは昔からある古典的なウイスキーソーダではない。スコッチウイスキーのような日本のウイスキーをベースにしている。しかも、ウイスキー1に対して炭酸水3という理想的な割合になるよう調合された、ビールサーバーのような装置からグラスに注ぐ。
「ハイボール」と呼ばれるこのカクテルは、こうした機械が普及している日本のバーで主要なドリンクだ。ニューヨークの有名店経営者の間では、このドリンクはニューヨークで大ブームを巻き起こすとの声もある。
キンフォーク90のゼネラルマネジャー、ジョン・バン・リースハウト氏は、このカクテルの魅力はシンプルさに由来しているが、グラスに注ぐ機械がいくらかの芸術性を加えていると話している。同氏によるとキンフォーク90では、大勢の客でにぎわう夜には1杯12ドル(約1300円)のハイボールが50杯ほど売れるという。
この店のハイボールは、グレープフルーツのエッセンスをスプレーして風味を添えている。
バン・リースハウト氏によればキンフォーク90は、ニューヨークのバーで最初にハイボールマシンを導入した。サントリーグループの蒸留酒メーカー、ビームサントリーから購入したもの。同社は急成長している日本のウイスキー市場では有力企業だ。
リースハウト氏は購入金額を明らかにしていないが、ビームサントリー関係者によると金額は4桁だという。
ビームサントリーは、同社のウイスキー「季(とき)」に合わせて作ったハイボールマシンを、2018年前半までにニューヨークのバーの少なくとも10店に置いてもらいたいと考えており、向こう5年以内に有力店数十店に広めたい考えだ。
ニューヨーク市内の他のバーでも、日本のウイスキーと炭酸水をメインにした、独自のレシピによるハイボールを入念に考案している。
マンハッタン南部ロウアーイーストサイドにあるバー「コッパー・アンド・オーク」では、オーナーのフラビエン・デソブリン氏が、炭酸水はスペインのものがよいと主張している。
ハイボールへの関心の高さは、ニューヨークのバーが次に流行するドリンクを常に模索していることの証しだ。中国のアルコール度数の高い蒸留酒の白酒を使ったカクテルになるのか、はたまた「フロゼ」と呼ばれる、ロゼワインを使ったフローズンカクテルになるのか。
日本のハイボール人気は、日本のウイスキーへの関心が高まっていることの証左でもある。一部の専門家は、日本のウイスキーはスコッチウイスキーをさらに洗練させたようなものだととらえている。
ウイスキー評論家として有名なジム・マレー氏が、毎年発行している評価リポートの15年版で、ビームサントリーのウイスキー「山崎」のある製品を世界最高と評した。この年からウイスキーの人気が大いに高まった。
ハイボールはウイスキーの楽しみ方に、炭酸水を加えるという違った方法を提供している。蒸留酒の専門家は、ハイボールはより爽やかなウイスキーの飲み方だと話している。