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ンアル飲料、欧州でじわり人気 定着するか
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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ビール風飲料は、バーベキューを楽しんでいるのに飲めない哀れなドライバーや妊娠中の女性向けなどのニッチな飲料の地位をついに脱しつつあるのかもしれない。大手ビール会社にとっては恩恵だが、メリットを得られるまでには時間がかかりそうだ。
オランダのビール大手ハイネケンは先週、欧州での低アルコール・ノンアルコールビール販売量が1-6月期に2桁伸びたと発表した。欧米では、仕事や運動時のエネルギー水準に影響しない、ビールよりヘルシーな飲料を求める動きが強まっている一方、メーカーは風味を損ねることなくビールからアルコールを取り除く方法を改善してきた。
ハイネケンは自社の中小ブランドでアルコールフリー版を手掛けてきたが、5月に旗艦ブランド製品のアルコールフリー版「ハイネケン0.0」を発売した。ジャンフランソワ・ファン・ボクスメア最高経営責任者(CEO)はこの商品について、ビールがこれまで失ってきた社会的機会(ランチタイムなど)に浸透する追い風になるとの期待をのぞかせた。
ボクスメアCEOだけではない。ハイネケンの主な競合相手であるベルギーの アンハイザー・ブッシュ・インベブ (ABインベブ)は昨年、低アルコール・ノンアルコール商品がビール売上高全体に占める割合を、当時の約7%から2025年までに20%に引き上げる目標を明らかにした。
こうした高い目標は対外的なことも動機になっている。大手ビール会社は節度ある飲酒に取り組む姿勢を明確にする必要がある。ABインベブが昨年進めた英SABミラー買収案件は、当局から厳しい精査を受けた。
だがノンアルコールビールの販売促進は経営的にも理にかなっている。プライスポイントが通常のビールと似ていながら税金が安いため、ノンアルコール商品の割合が増えればメーカーの利幅が厚くなるのだ。ABインベブは飲酒者にアルコールを見捨ててほしいと願っているが、これは米フィリップ・モリス・インターナショナルが喫煙者に従来のたばこを捨ててほしいと思う構図と同じ。当局と投資家の両方を喜ばせたいことが理由だ。
そうなると、それらの商品が本当に売れるかどうかが問題になってくる。メーカーは本物のビールとの共食いを避けながら、魅力を吹き込まなければならない。ハイネケンはおそらく最も大胆だった。昨年の大型広告キャンペーンでは、さまざまなタイプの酔った男性たちに失望した女性たちが、ハイネケンのボトルを拒否する、勇気ある男性に目を留めるというコマーシャルを流した。男性の魅力はビールを飲みすぎると高まるどころか低くなるとの意味合いが込められていた。
低アルコールビールがどの程度売れているのかも判断しがたい。ハイネケンのノンアルコールビールは1-6月にブームになったかもしれないが、経済が低迷しているナイジェリアとエジプトでのモルト(非発酵ビールの一種)販売量が減少したことの影響もある。世界全体の数値を見ると確かに伸びているが、国ごとの事情で歪められている。例えば中国で低アルコールビールの割合が高いのは、消費者が積極的に選んでいるためではなく、安いビールのアルコール含有量が低いためだ。
バーンスタインのアナリスト、トレバー・スターリング氏の考えでは、欧米の消費者が現在コーラや飲料水を買うような状況でノンアルコールビールを飲むようになるには――大手ビール会社の幹部にとっては夢のシナリオだ――大幅な「考え方の変化」が必要になる。こうした傾向は始まったばかりであり、投資家は近く大儲けできると期待すべきでない。だがビール風飲料は、いずれは業界の健康にいい飲み物になるはずだ。
http://jp.wsj.com/articles/SB10279766253621133958604583314841145609064?mod=djem_Japandaily_t