7月上旬に、日本と欧州連合の経済連携協定(EPA)が、大枠で合意に達した。その交渉で、大きく注目を浴びたヨーロッパ産のチーズ。今回、EPA交渉の舞台では、「主戦場はチーズ」と言われるほどにその行方が注目されていたが、これまでいわば聖域として守られてきたモッツァレラやカマンベールなどのソフト系チーズに対して、一定の枠を設けて段階的に関税が撤廃されることが決まった。
今、チーズの現場は揺れている。
ヨーロッパはチーズ大国
美食の町として名高いフランス・リヨンの中心部にある、ポール・ボキューズ中央市場。フランス料理界の巨匠、ポール・ボキューズ氏に敬意を表して名付けられたというこの市場には、ジビエなどの肉や、魚介、果物、総菜、ワインなどを売る食材屋が軒を連ねている。新鮮な食材をその場で調理し、地元のワインと一緒に楽しむことができるバーやレストランも併設され、なんとも活気に満ちあふれている。
なかでも目を引くのは、数え切れないほどの豊富な種類が並ぶチーズの専門店。フランスの食文化にはチーズは欠かせない存在、年間のチーズ消費量は1人当たり26.2kgと、世界でトップだ。日本での消費量が同2.2kgであることと比べその差は10倍以上と、いかにフランス人の食生活に慣れ親しんだ存在であるかがうかがえる。
市場の一角にあるチーズ専門店には、優に40種類を超えるさまざまなチーズが並ぶ。牛やヤギ、羊などから作られたチーズは、その製法もさまざまで、パルメザンやゴーダなどハード系のチーズのほか、モッツァレラやリコッタ、ブッラータ、など新鮮さが売りのいわゆるソフト系チーズまで、あらゆる種類のチーズが楽しめる。