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2017-06-15 17:48:00

NZ産のラム肉、脂肪増やして人気回復となるか

新たな品種「テ・マーナ」の肉を高級食材に

http://jp.wsj.com/articles/SB11627286305521544534204583196750137725848?mod=djem_Japandaily_t

 

 
 
「テ・マーナ」と名付けられた新たな品種の羊
 
「テ・マーナ」と名付けられた新たな品種の羊 PHOTO: OMEGA LAMB GROUP (SUPPLIED)

【ラムズデン(ニュージーランド)】20年前に健康的な食事が大ブームになったとき、世界最大の羊肉輸出国であるニュージーランドはのちに後悔することになる賭けに出た。畜産農家が脂肪の少ない羊を飼育し始めたのだ。

 マーケティングの失敗や羊毛価格の下落など、さまざまな要因と相まったその決断は、世界の羊肉消費量の減少を加速させてしまった。消費者は脂肪の少ないラムチョップやラム肉のカツレツに背を向け、豚肉など他の肉を選好するようになった。

 経済協力開発機構(OECD)によると、先進諸国の国民1人当たりの羊肉消費量は1995年から2015年の間に36%減少した。その一方で豚肉と鶏肉の消費量はそれぞれ2.8%と40%弱増加した。

 

 ニュージーランドの羊肉輸出量はオーストラリアと合わせると世界全体の70%以上を占めているが、ニュージーランドの羊の飼養頭数はピークに達した1982年の7000万頭から昨年には2760万頭にまで減少している。

 この数十年の消費減少傾向を覆すべく、ニュージーランドは再び脂肪の多い羊肉を売り込んでいる。同国の畜産農家は「テ・マーナ」と名付けられた新たな品種の羊に期待をかけ、10年間の実験繁殖の後、先月から輸出を開始した。

 同国の羊産業は脂肪含有量以外にもいくつかの難題を抱えてきた。1990年代からの羊毛価格の低迷――羊毛は一部の畜産農家にとって副業となっている――や、その後の乳製品価格の高騰などもあり、畜産農家は飼育する動物を羊から牛に切り換えることになった。質よりも量に焦点を当てた販売宣伝戦略も失策だったと業界の専門家たちは指摘する。

 同国最大級の家畜組合の1つ、アライアンス・グループでマーケティング責任者を務めるピーター・ラッセル氏は「ニュージーランドはつい最近まで差別化されていない羊肉を世界に輸出してきた」と話す。

ニュージーランドは新たな品種の羊の肉を高級食材にしようとしている
 
ニュージーランドは新たな品種の羊の肉を高級食材にしようとしている PHOTO: BOBBY YIP/REUTERS

 状況を劇的に好転させるのは難しいだろう。米国の消費者2000人を対象に昨年実施されたインターネット調査では、ラム肉を少なくとも過去6カ月間食べていなかった人が60%近くに上った。世界銀行のデータによると、ラムとマトンの価格は2016年までの10年間で12%しか上昇しなかった。これに対して牛肉と鶏肉の価格は同期間にそれぞれ48%、54%の上昇となっている。

 ニュージーランドがより味の良い羊肉の生産を目指し始めたのは、ヘッドウォーターズ組合の50の畜産農家が政府とアライアンス・グループと共同で品種改良プロジェクトを立ち上げた2007年のことだ。その「オメガ・ラム・プロジェクト」に携わったグループは脂肪を多く含む肉質と寒い丘陵地でも健康に育つ能力を有する羊を求めて500種類の遺伝系統を分析した。

 その結果選ばれたのは、米国人の約5人に1人が栄養補助食品として摂取している脂肪酸オメガ3も豊富に含む「Ram 211」という羊だった。

 オメガ・ラム・プロジェクトは「Ram 211」から脂肪分の多い羊の品種を開発し、最終的には「テ・マーナ」と名付けた。

 

 グループはニュージーランドのワイン産業を手本にし、マーケティングにも細心の注意を払っている。というのも、同国のワイン産業は安価なワインの大量生産からソービニヨン・ブランなど高級品種に焦点を当てた生産に戦略を転換し、利益を拡大させてきたからだ。

 オメガ・ラム・グループがこれまでに主に国内の試験販売用に食肉処理したテ・マーナ種は3万頭に上る。同グループは輸出の後押しによってその数字が来年には6万頭に、2025年には100万頭に増えてほしいと考えている。現在、ニュージーランドでは年間2000万頭前後が食肉処理されている。