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2011-08-06 22:55:00

北京】中国当局は食品の安全に関する問題再燃に対処するため、4カ月間取り締まりを行い、2000人以上を逮捕、5000の事業所を閉鎖したことを明らかにした。これは食品汚染が最近相次いで見つかったことを受けて行われた。

STR/Agence France-Presse/Getty Images

闇業者から違法添加物を含む中華ちまきを押収する捜査員(7月、北京)

 

 国営新華社通信が中国食品安全委員会の報告として報じたところによると、350万人の捜査員は食品業界の約600万の事業所を対象にした検査を4月に開始し、2000人以上を逮捕した。

 中国政府は取り締まりと大量逮捕を鳴り物入りで発表することがよくあるが、これは社会問題への対応に真剣な姿勢をとっていることを誇示するためだ。今回の取り締まりが食品の安全を向上させる上でどれほどの効果をもたらすかは不明だ。 

 中国政府は2007年に収賄の罪で国家食品薬品監督管理局の元局長を処刑した。また08年に工業用化学物質メラミンに汚染された粉ミルクが出回り、これを飲んだ少なくとも6人の子どもが死亡し、約30万人が体調不良になった。この事件に関しては何人かの責任者を厳しく処罰した。この事件を受け、中国政府は食品への監視強化と食品業界の徹底的な調査を約束し、食品安全委員会が設立された。 

 しかし、ここ数カ月で新たな事件が次々と起こっており、問題の根深さを浮き彫りにした。例えば、新華社によると、同国中部の河南省の裁判所は先月、ブタの筋肉成長を促進する化学物質クレンブテロールに汚染された豚肉を食べた数百人が体調不良を訴えた事件について、クレンブテロールの製造と引き渡しを行った男に対し2年間の執行猶予付き死刑判決(終身刑に減刑される可能性があることを意味する)を、事件に関与したその他4人に対し9~15年の禁錮刑をそれぞれ言い渡した。

 専門家は食品安全の問題が同国の食品業界の構造に起因するとの見方を示している。同国の食品業界の構造は非常に細分化されているため、生産の監視が難しい。米食品医薬品局(FDA)の中国担当責任者クリストファー・ヒッキー氏によると、同国の農家の数は2億世帯、従業員10人未満の食品加工会社は40万社に達する。 

 中国政府は農業と食品生産業界の統合を図りたいと述べているが、その進ちょく度は遅い。何億人もの農村住民の雇用を維持する必要性とのバランスを取らなくてはならないことも一因だ。

 北京大学公衆衛生学のウー・ミン教授は、当局の取り締まりは継続的に行うことが課題になっていると語る。一時的に取り締まりをしても、その後何もしない時期が長いと、違反者が一時的に身を隠してまた違反することが可能になってしまうという。 

 非営利団体「グローバル・フード・セーフティ・フォーラム」北京支部のディレクター、サン・リーウェイ氏は現在3年来の高水準にあるインフレ率の上昇が、問題をさらに深刻にしていると指摘する。食品価格がインフレ上昇トレンドをけん引している中で、食品メーカーは燃料や労働といったコストの上昇から圧力を受けていると感じている。これら食品メーカーの利益率は低いことが多いからだ。サン氏は「食品に化学物質を入れると、肉の脂肪分が少なくなったり、野菜が大きくなったりするため、もっと稼げると思ってしまう」と指摘した。

 新華社によると、今回の取り締まりで、食用ではない化学物質が製造段階で食品に混入したために刑事事件として挙げられたのは1200件に上った。また捜査当局は化学物質の製造や貯蔵が行われていた施設も閉鎖した。取り締まりは農業省、国家食品薬品監督管理局やその他の機関の協力によって実施されたという。

http://jp.wsj.com/World/China/node_285093/?nid=NLM20110805