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2011-07-27 22:16:00

【要約】

中国

・鶏以外の家きんの消費も多い。南部で好まれる小型の黄色種とよばれる鶏も多く飼育されている。輸出向け鶏肉を生産地は山東省が多い。統計より相当多くの鶏が飼育されている可能性。ブロイラーには欧米系の品種を使用。

・国内価格は上昇しているが、他の食肉に比較して安く、消費は伸びている。自由市場などへの鶏肉・鶏肉製品の形態の流通が拡大。家庭外消費は牛肉については7割近くある一方、鶏肉が5割弱、豚肉は5割強と推計。

・鶏肉の輸入先国は米国からブラジルへ大幅にシフトしたが、輸入数量は伸び悩む可能性。調製品の輸出は8割以上が日本向けだが、EUへの輸入量が徐々に増加。価格が良い輸出向けを重視する社と、基準が厳しく生産コストの上昇を反映しにくい輸出向けより、好調な国内販売にシフトする社があり。

タイ

・大手インテグレーターによる処理能力の増強が続く。一方原料鶏の供給は疾病の関係もあり、現在伸び悩んでいることから、能力の過剰が見られる。

・卸売価格は生産コストの上昇、需要の増大などに上昇。1人当たりの鶏肉消費量は2003年の鳥インフルエンザ発生後大幅に落ち込む一方、豚肉の消費が増加している。

・鶏肉調製品はEUおよび日本向けの両方が好調。ただし、2011年に入り、国内価格の上昇を反映した輸出価格の上昇が顕著である。

日本への影響

・原料鶏の生産方法や、飼料が生鶏の生産コストの7割程度を占めるコスト構造は鶏肉生産国間で大きくは変わらない。中国は養鶏コストの高さを、低廉な労賃を生かした加工コストの低さでカバー。

・特に国産胸肉、輸入冷凍鶏肉、調製品間で競合。国産胸肉が輸入冷凍鶏肉や調製品の価格に影響を受けている可能性。

1.日本の肉用鶏生産の位置づけと、国内需給状況

 肉用鶏生産は日本の農業総産出額の3.7%を占める。

 産地は北東北、南九州の県に多く、地域の経済にとって重要な産業となっている。

 日本における供給シェアでみると、国産鶏肉が6割、輸入冷凍鶏肉が2割、輸入鶏肉調製品が2割という需給構造となっている。

表1 日本の農業総産出額の内訳(2009年度)
資料:農林水産省
表2 日本のブロイラー飼養羽数(2009年度)
資料:農林水産省
図1 日本の鶏肉供給シェア(2010年度)
資料:財務省「貿易統計」より機構作成
注:鶏肉調製品は製品数量をそのまま計上しているため、鶏肉数量ベースではシェアは低下する

2.世界の鶏肉の生産および輸出国

 鶏肉の生産は米国、中国、EU、ブラジルの4か国で6割を占めているが、ブラジルおよび米国の2か国で輸出量の2/3を占めている。一方タイは生産量は多くないが、生産量に占める輸出向け割合が高くなっており、輸出志向の強い国であることがわかる。

 輸出にあたっては鳥インフルエンザの防疫の観点などから、鶏肉は調製品も含めて、輸入国の求める衛生基準をクリアする必要があり、輸出ができる国は限定的である。

 このレポートのなかでは、日本との関係が特に深い、中国、タイ(および比較対象としてブラジル)の状況について取り上げることとする。

表3 世界の鶏肉生産量と輸出量(2010年)
単位:万羽
資料:FAO “Food Outlook”2011年6月号。1人当たり消費量はFAOSTATの2007年データ
注1:1人当たり消費量は七面鳥、あひる、ガチョウの家きん肉などを含む
注2:中国の1人当たり消費量の数字には台湾含む
注3:骨付きベースの数字

3.主要国による消費実態

 1人当たり年間消費量は米国が飛びぬけて多く、50キログラムを超える。ファストフードや鶏肉加工品での消費が多いことが原因である。アジア各国は20キログラムを下回る水準である。

 一般的に日本ではもも肉が好まれる一方、欧米では胸肉が好まれる。このため、鶏肉の輸出国(ブラジル、タイ)は日本向けにもも肉、欧州向けには胸肉を輸出することが多い。特に国内市場が他の輸出国と比較して小さいタイにとっては、この部位別にすみ分けられた輸出先は重要である。

 またブラジルは欧州への胸肉、日本へのもも肉輸出のほか、丸どりを中近東へ、内臓肉を南アフリカ(内臓肉を調理する習慣がある)へ輸出するなどして、利益の最大化を図っている。

 タイについてもEUと日本のほか、鶏肉処理施設がハラル認証を取得し中近東への輸出を試みるなど、市場の開拓に取り組んでいる。

表4 各国各地域での鶏肉消費の概要

4.中国における鶏肉生産

 (1) 飼養・生産状況

 中国における家畜の飼養頭羽数、出荷頭羽数および畜産物生産量は表5のとおりである。家きん類の飼養羽数は1999年と比較して役牛が減少した牛の飼養頭数を除いて増加している。

表5 中国の畜産関係生産データ
資料:中華人民共和国農業部「中国農業年鑑」、国家統計局農村社会経済調査司「中国農村統計年鑑」
  注:2008年から乳用牛には役用牛が含まれている

 畜産物生産量を2009年を1999年と比較すると、牛肉および豚肉は26%の増加に対し、家きん肉は43%の増加となっており、家きん肉の増加傾向が目立っている。家きん類の飼養羽数に占める鶏の割合は5~6割程度といわれている。

 ただし、今回の調査による業界の聞き取りでは、中国全体の出荷羽数はもっと多いという見方があり、最も控えめな見方でも150億羽、他に200億羽や400億羽であったことから、実際には相当増加している可能性もある。

 聞き取りによると、鶏の中でAA種と呼ばれるブロイラー種は60-65%程度、残りは黄色種や廃鶏である長江以南の地域では先に述べたようなスープ用途に好まれる小型の伝統種(黄色種)の飼育が盛んである。

表6 農家規模別戸数と飼養割合(2010年推測)
資料:訪問先プレゼン資料により作成
注1:1回の出荷単位が(a)5000羽以下、(b)5000~10000羽、(c)10000羽以上
注2:サンプル調査とみられる
表7 地域別家きん類出荷羽数(2008年)
単位:万羽
資料:中国農業統計資料2008

(2)ブロイラー生産・処理体制

 ブロイラーの生産は日本と同様にインテグレーターによって行われている。

 聞き取りによると、中国全体のブロイラー品種はアーバーエーカー(AA)が5割、チャンキーが2割。アーバーエーカーの例では原種(GP)を輸入し、種鶏(PS)を中国内農場で生産したのち、素ひなを各インテグレーターに提供している。

 生産農場は自社農場と契約農場による生産の両タイプがあるが、安全管理の強化に伴い、自社農場による生産が拡大基調にある。

表8 主な中国のインテグレーター
輸出企業は、正大、九聯、諸城市外貿などが代表的
表9 中国の飼育品種ごとの肉用鶏飼育指標
資料:聞き取りにより機構作成
表10 飼料の内容
資料:聞き取りにより機構作成