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2017-02-11 16:09:00

英国で野菜不足が深刻化、ズッキーニはどこだ

「野菜も食べなさい」と子供に言いたくても手に入らず

 
 
 
 
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スペインの天候不順を原因とする欧州北部の野菜不足が深刻になっている(英語音声、英語字幕あり)Photo: Laura Valdez

 スコットランドの小さな町ラナークに住む「専業主夫」のスコット・パジェットさん(40)は、地元にあるスーパーマーケット3店舗すべてを訪れた後、ツイッターで「SOS」を発した。「ズッキーニがある方、連絡ください」

 ズッキーニは先月初め、英国の食料品店の棚から姿を消し始めた。ブロッコリー、カリフラワー、ナス、ピーマン、キャベツといった野菜もあったりなかったりの状態が続いている。英国のほか、フランス、デンマーク、そしてオランダでもそうだ。

 アイルランドのコーク市に住むブライアン・ケーシーさん(30)は先月、市内にある6つのスーパーを訪れてホウレンソウを探したが見つからず、最終的に冷凍のホウレンソウに落ち着いた。「こんなものがあることさえ知らなかった」

 

 何世紀も前の大飢饉とは違い、この冬に欧州北部を襲っている野菜不足で誰かが飢え死にするわけではない。野菜不足の原因は、戦争でも、干ばつでも、疫病でもなく、スペインの天候不順だ。比較的寒い時期に欧州の大半の地域にこれらの野菜を供給しているのがスペインなのだ。

ロンドン市内のスーパーで売られるレタス
 
ロンドン市内のスーパーで売られるレタス PHOTO: PETER NICHOLLS/REUTERS

 今回の危機をきっかけに欧州の多くの人々は、最も感謝されていない食品群と言われる野菜を見直している。中には、隠れていた野菜への情熱を掘り起こす人々もいる。

 英国葉物サラダ協会の広報担当者、ディーター・ロイド氏は、「サラダ用の葉物野菜はかつてないほど魅力的になっている」と話す。最近の野菜不足が起きるまで、同氏はテレビ出演を依頼されたことなどなかった。それが今は見かけない日はないほどだ。

 「人は『もう手に入らないですよ』と言われて初めて、『いや、どうしても欲しい』と言い出すのだ」とロイド氏は述べる。

 英国の4大スーパーは今や、レタスを制限販売するようになった。

 前出のパジェットさんにとっては、レタスの制限販売は生活にそれほど影響しなかった。「レタスは腹の足しにならない」からだ。だが、ズッキーニ不足は別の問題だという。

 バジェットさんと妻は青果コーナーに足繁く通ってズッキーニを探している。ズッキーニは子どもたちが食べる数少ない野菜の1つだからだ。「子どもたちは野菜が好きじゃない。野菜の少ない食事をせざるを得ないのだが、その摂取量は一層減り始めている」と話す。

ズッキーニの出荷を監視するガードマン
 
ズッキーニの出荷を監視するガードマン PHOTO: NICK MATTHEWS

 1週間をズッキーニなしで乗り切った後、先週には妻が2本見つけた。その後は1本も見つかっていない。子どもたちからは当然のように文句は出ていないという。

 この間、野菜不足に関する報道などによって需要が余計に喚起され、悪循環が生じた。英国野菜生産者協会の代表を務めるジャック・ワード氏は、「明日はそこにないかもしれないという思いが、普段より多く買う行動につながっている」と述べる。英国人は1年中レタスを食べるが、ズッキーニは通常、夏の食べ物だ。同氏は今冬のズッキーニ騒ぎは「奇妙な現象だ」と述べた。

生鮮農作物の流通会社レイノルズの広報担当者、アンディ・ウィア氏は、今回の野菜危機について、消費者が複雑なサプライチェーンに感謝するきっかけになるかもしれないと語る。同氏は「消費者はあらゆる野菜が1年365日入手可能だと考えている」と語った。

 野菜不足が買い物客に打撃を与え始めたのは、昨年の終わり頃だった。スペイン南東部の地中海沿いに位置するムルシア地方が、12月に深刻な洪水と雪に見舞われたのだ。これにより、作物が被害を受けたほか、農家の作付けが阻まれた。アイルランド最大の袋入りサラダ加工業者、ウィローブルック・フーズのジョン・マッキャン社長は、季節外れの寒さにより、野菜不足があと何週間か続く可能性があると指摘する。食品業界の専門家は、今回の欧州の野菜不足が過去数十年で最悪だと話している。

 特に打撃を受けているのが英国だ。政府統計によれば、英国は新鮮な果物と野菜の65%を他の欧州連合(EU)加盟国から輸入。その単独で最大の供給元がスペインとなっている。