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2011-07-14 10:14:00

消費者は各ストアブランドの店舗や施設のどのような点に魅力を感じているのか。
「ストアブランド戦略サーベイ」では各ブランドの店舗や施設の魅力点(バリュードライバー)を50項目に渡って具体的に質問した。その50項目を内容ごとに大きく8つのグループに分け、まとめたものが「バリュードライバー8指標」である。それぞれの指標は4~9項目で構成され、各項目の評価(質問内容に当てはまると回答したパーセント)を合計し、項目数で割って算出した平均値をバリュードライバー8各指標のスコアとした。

バリュードライバー8指標は次の8分野になっている。
①売場作り(ハード)
売場作りのハード面(クリーンネスや品揃え、レイアウト等)を中心とした項目

②売場作り(ソフト)
わくわくする、ゆったりした気分になれる等ソフト面(心理的効果)を中心とした項目

③利便性
 生活者(コンシューマー)にとっての使いやすさ等利便性にまつわる項目

④接客サービス
 店頭で受ける接客サービスや応対に関する項目

⑤顧客リレーション
 客との長期的リレーション構築に欠かせないサービスや囲い込みなどの項目

⑥信頼性
 店舗・施設や商品・サービスに対する品質への信頼性や安心感などの項目

⑦プロモーション活動
 広告やHPなどの宣伝活動や店舗・施設に行くきっかけ作りに関する項目

⑧ブランドメッセージ
 ブランドが発するメッセージがいかに生活者へ伝わっているかを計る項目


スタバ、ユニクロ、マクドナルドが複数指標でトップ
 それでは、バリュードライバー各指標の上位3ブランドとスコアを見てみよう。
①売場作り(ハード)
 1)ユニクロ 19.9 2)東急ハンズ、ニトリ 14.8

②売場作り(ソフト)
 1)スターバックスコーヒー 11.5 2)東急ハンズ 10.1 3)無印良品 9.5

③利便性
 1)マクドナルド 44.2 2)セブン-イレブン 34.9 3)吉野家 33.3

④接客サービス
 1)スターバックスコーヒー 8.5 2)ユニクロ 7.6 3)ドコモショップ 7.2

⑤顧客リレーション
 1)マクドナルド 14.5 2)TSUTAYA 8.9 3)ミスタードーナツ 7.1

⑥信頼性
 1)スターバックスコーヒー 15.7 2)モスバーガー 13.5 3)高島屋 12.9

⑦プロモーション活動
 1)ユニクロ 20.1 2)マクドナルド 16.9 3)ニトリ 13.2

⑧ブランドメッセージ
 1)カルティエ 10.2 2)ティファニー、ブルガリ 10

スターバックスコーヒーが調査対象346ブランド中、3指標で1位、ユニクロとマクドナルドがともに2指標で1位、1指標で2位となったのが目に付く。複数部門での首位獲得は、スターバックスコーヒーなら居心地の良い店舗や気持ちの良い応対、信頼性、マクドナルドなら利便性や顧客を囲い込む魅力的なクーポンサービスといった具合に、ライバルを圧倒するようなセールスポイントを複数持っていることの表れ、と見ることもできる。
ベストテンまで広げると、スターバックスコーヒーは売場作り(ハード)とブランドメッセージで、ユニクロは売場作り(ソフト)、利便性、信頼性で、マクドナルドは接客サービスでもそれぞれランク入りした。一方、「場力PQ」の総合ランキングで1位だったモスバーガーは信頼性が2位とさすがに高評価だったものの、あとは接客サービスで8位に入った程度というやや意外な結果になった。
このほかの指標では、ブランドメッセージで高級ブランドが順当に上位3位までを独占し、ベストテンでも7つを占めた。そんな中、アンチ「既存ブランド」という基本コンセプトからネーミングされた無印良品が6位に入ったのが面白い。


「信頼」のモスバーガー対「便利さ」のマクドナルド
もう少し細かく、特定の業種の競合ブランドについて見ていこう。まず、モスバーガーが場力PQの総合ランキングで1位になるなど大躍進したファストフード。バンズに具を挟んだバーガースタイルのメニューを提供しているファストフード店の総合ランキング上位5ブランドについて、バリュードライバー8指標のスコアを比べてみよう。

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場力PQの総合ランキングでは「時間消費プレミアム」と「推奨意向」の2項目でモスバーガーに大きく水を開けられ、8位に終わったマクドナルドだが、具体的な魅力点に関する評価では、87.9%(全体3位)という非常に高い購入・利用経験者率を反映し、多くの消費者から幅広く支持を集めた。利便性と顧客リレーションで全ブランド中1位。2位に入ったプロモーション活動を加えた3指標の評価でモスバーガーを大きく引き離した。さらに、8指標を構成する50項目を見ると、利便性の「店舗・施設の立地がよい・アクセスしやすい」(57.3%)、「気軽に行く・立ち寄ることができる」(50.3%)、顧客リレーションの「クーポンや優待制度が魅力的」(44.6%)でも全体1位を獲得した。
また、接客サービスの「店員とのやりとりが楽しい」(6.6%)、プロモーション活動の「広告宣伝や企業活動の情報などをよくみかける」(23.2%)、「ホームページを見たくなるようなきっかけがある」(8.7%)、「ホームページを見るたびに新たな発見ができるように工夫されている」(2.8%)でも全体1位になり、合計7項目でトップだった。

対するモスバーガーはバリュードライバー8指標で前述の3指標に加え、売場作り(ハード)、接客サービスを含む5指標でマクドナルドに劣ったが、信頼性、ブランドメッセージ、売場作り(ソフト)では勝った。50項目では信頼性の「商品やサービスの質に信頼性がある」(25.2%)とブランドメッセージの「社会や環境に対する活動や取り組みに共感できる」(5.3%)で全体1位。特に、「信頼性がある」は並み居る高級ブランドを抑えての堂々たるトップで、作り置きをしない、生産者の顔が見える食材を使うなど、食の安心安全を強調した姿勢に多くの消費者の支持が集まり、商品の質の信頼性においては確固たるブランドイメージを築いている。

50項目をマクドナルド対モスバーガーに絞って比べると(数字は%)、「店舗の立地がよい」57.3対20.5、「気軽に行ける」50.3対22、「忙しい時に短い時間で用事を済ますことができる」52.5対14など、利便性の各項目でマクドナルドがモスバーガーを圧倒。また、プロモーション活動も「安さにひかれる商品・サービスがある」43.1対6.1、「広告宣伝などをよくみかける」23.2対9.7など、全項目でマクドナルドが上回った。価格面では「クーポンなどが魅力的」も44.6対7と大差がついた。モスバーガーは利便性や価格面の訴求力で劣ることが購入・利用経験が66.6%にとどまっている背景にありそうだ。

一方、モスバーガーは短時間で用事を済ますのは難しいが、「ゆったり・のんびりとした雰囲気で過ごせる」が17.8対8とマクドナルドを大きく上回り、気軽に立ち寄れない代わりに、そこで「非日常感を感じられる」との回答が3.5と、マクドナルド(1.4)に水をあけた。安売りや値引きをせず、調理法や食材にこだわった商品を提供することで、「そこで購入・利用することは価格以上の価値がある」と考える顧客の割合は14.1。マクドナルドは5.4で、フレッシュネスバーガーやケンタッキー・フライド・チキンも下回った。価格競争にくみしない物作りの姿勢が評価された結果、「信頼性がある」はマクドナルドの10.8に対し25.2とダントツの評価を獲得した。マクドナルドとは異なるポイントで魅力を発揮し、それが顧客の間で強く支持されていることがうかがえる。

安さ・便利さを前面に押し出すマクドナルドの戦略は認知度が高いが、安売りイメージは値上げ局面で客離れを招く恐れもある。今後、ブランド自体の価値をどう高めていくか。モスバーガーは圧倒的な信頼性などプラス面の評価をどうやってより多くの消費者に伝えていくか。PR戦略がカギを握る。ロッテリアやフレッシュネスバーガーは対照的な2ブランドに挟まれて埋没しないような個性を打ち出すことが課題になりそうだ。(ま)

http://www.nikkei-r.co.jp/knowledge/hits/2011/07/post-45.html