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2011-06-10 14:19:00

【済南(中国)】人口600万人を抱える中国山東省済南。ここにある職業訓練学校の山東藍翔高級技工学校は毎年、機械工、理容師、溶接工ら30万人を世に送り出している。2008年の五輪北京大会では選手らの食事で腕を振るった料理人も育てた。

James Areddy/The Wall Street Journal

山東藍翔高級技工学校の料理教室の厨房

 

 グーグルは最近、米政府高官らのGメール個人アカウントがサイバー攻撃を受け、パスワードが不正に取得された問題について、済南が発信源と発表していた。関係筋によると、米政府高官にはホワイトハウス関係者もいたという。

 米政府とグーグルはいずれも、山東省の省都である同市からのサイバー攻撃について、誰の仕業であるかについてこれ以上詳しく述べていない。同市には中国版の米国家安全保障局(NSA)に相当する中国の技術偵察局もある。

 サイバー攻撃の発信源が済南であると名指しされれば、長い間、人民解放軍との関係があるこの巨大専門学校にも関心が注がれる。少なくとも米国の捜査関係者の1人は、山東藍翔高級技工学校が過去の米国へのサイバー攻撃の発信源の1つだと主張している。

 同校関係者はサイバー攻撃の関与を再三否定しおり、今回本紙の取材に対してコメントを控えた。

 この学校をめぐる疑惑は、コンピューター・ネットワークなどに対するサイバー攻撃が誰の仕業かをピントポイントで特定することが難しいことを示している。コンピューター・セキュリティー関係の専門家によると、Gメールのユーザーからユーザーネームとパスワードを不正取得した「フィッシング」詐欺の発信源を隠すことはハッカーにとっては難しくないという。

 中国には一流の工科学校があることで知られているが、山東藍翔高級技工学校はこれまで有名ではなかった。学校構内には「Wi―Fi(ワイファイ)」の設備もない。この学校で自動車整備を学ぶ、パスケットボールのジャージにゴム草履履きの22歳の学生は「この学校の生徒が、グーグルのような大手インターネット会社を攻撃できるほど賢いとは思わない」と述べた。

 1時間に及ぶ学校探訪では、、向学心に燃える料理人のクラスも訪れた。授業では最大80人の学生らがフライパンで野菜を返す方法などを学ぶ。また、この学校には自動車のヘッドランプの配線を学ぶため、生産ラインもある。

 山東藍翔高級技工学学校の名前は創立者で主要オーナーの藍翔氏に因む。今月47歳になる同氏は、人民解放軍の協力を得て中国の急成長するサービスセクター向けの一大トレーニング・センターを作ってきた。

 同氏は昨年3月国営ラジオとのインタビューで、15年前からコンピューターの履修講座を開設しているが、教室には1300台のコンピューターが設置されていると述べていた。これは世界記録だという。同市によると、一流大学を卒業したコンピューター専攻の卒業生でも就職が難しい状況であるため、同校ではコンピューター講座は優先授業にはなっていない。3日時点で同氏からはコメントは得られてない。

 過去のインタビューではまた、人民解放軍との関係をどのような形でスタートしたかについて説明している。同氏は20歳だった1984年に済南にやってきて、オートバイの修理の講座を始めた。多くの中国人が仕事を始めようとしている時期だったため、他の職業訓練も行うようになった。

 4年後、独自事業の収入増を目指して人民解放軍は、藍翔氏にある取り決めを持ちかけた。同市の郊外の広大な土地を無償で提供する見返りに一定の役割を求めた。つまり、事実上、職業訓練事業が軍部に組み込まれた。「彼らはわれわれを必要とし、われわれも彼らを必要とした」と同氏。同氏の事業がどのようにして軍部に組み込まれたかは不明だが、政府は人民解放軍にこれらの事業から撤退するよう命じた。藍翔氏は学校経営の実権を再び握ったが、人民解放軍との関係は部分的に残っている。同氏によると、共同経営者は人民解放軍幹部の親族だという。

 この学校で料理を学ぶ28歳の学生は、仮にこの学校が国際的なコンピューター・ハッキング事件に関与しているのであれば、驚きだという。

 この学生は、済南でのインターネットの遅さは学校では絶えず苦情の的で「オンラインゲームすることも出来なくなることが時々ある」と述べている。