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2015-11-23 16:28:00
2015.11.19
  • 江口征男コラム 最適解はグレーゾーンにこそある VOL8
  • 中国飲食業の第3次革命「焼き鳥チェーン”很久以前”」
  • 現在、中国飲食業では第3次革命が起りつつあると言われています。第1次革命は、麦当労やKFCなど欧米ファーストフードチェーンによる標準化、効率化の導入。第2次革命は、海底ロウ火鍋によるサービス革命。そして現在起りつつある第3次革命は、「很久以前」という焼き鳥チェーンが導入している「打賞制度(チップ制度)」です。

ビジネスガイド 江口 征男


現在、中国飲食業では第3次革命が起りつつあると言われています。


第1次革命は、麦当労やKFCなど欧米ファーストフードチェーンによる標準化、効率化の導入。第2次革命は、海底ロウ火鍋によるサービス革命。そして現在起りつつある第3次革命は、「很久以前」という焼き鳥チェーンが導入している「打賞制度(チップ制度)」です。


これまで中国ではありそうでなかったチップ制度。個人単位の利益に直結すればするほどモチベーションの上がる中国だからこそ、チップ制度は、うまく機能するのではないかと、私は昔から考えていましたが、これまでチップ制度のある飲食店には中々めぐりあいませんでした。


中国でこれまでチップ制度が普及しなかった正確な理由は分かりませんが、「経済力」、「信用」、「面子」が原因なのではないかと個人的には思います。サービスという無形のものに対して、余計にコストを払う余力が一般的な中国人にはなかったとこと。そして「良いサービスを提供したからといって、必ずしもお客様がチップを多く払う訳ではない」「お客様が払ったチップを一旦店が受け取った後、店から店員に全額チップが問題なく払われるとは限らない」「チップを払わない、チップが少ない人に対する店員のサービスが著しく低下する」など信用に関する副作用が大きかったことも理由でしょう。そして中国では金銭授受は人間関係をぎくしゃくさせる原因でもあります。自分の面子や、店員・同行者が自分のチップ金額をどう感じるかを考えて金額を決める必要があるので、せっかくリラックスして食事をしたかったのに、帰ってストレスを感じるということもあるでしょう。


そういった障害を乗り越えて定着し始めている「很久以前」のチップ制度の仕組みを説明したいと思います。


1回の食事でお客さんがホール店員に払うチップは1テーブル当たり4元と決まっています。各店員は、店員自身の微信Pay(電子マネーの財布)の2次元バーコードが書いてあるワッペンをつけていて、お客様がその店員のサービスに満足したら、お客様が微信Payで4元のチップを(店員個人に直接)払うという仕組みです。


各テーブルにはチップ制度を紹介する資料が置いてあり、店員もお客様に対して1度だけチップ制度の存在を説明してもいいことになっています(店員はお客様にチップを強要してはいけないことになっており、そういう行為が行なわれていないかは店長を含む管理職が常時チェックしています)。


ちなみにチップ制度に基づく店員の賃金は次のようになっています。


・店員賃金=固定賃金(2700元)+業績給+個人チップ受領額
・業績級=月評価係数(A/B/C)×(日平均店鋪テーブル接客数×4元×30日)÷フロア当番店員数
・月評価係数(A:150%、B:90%、C:60%)※店長が評価する


例えば、日平均テーブル接客数が120、フロア当番店員数が20で評価Aの店員の場合の賃金は、3780元(=2700+150%×(120×4×30)÷20)に直接もらうチップを合計したものということになります。優秀な店員は1日に4元のチップを20回もらうそうなので、月の勤務日が26日とすると、チップ合計2080元(=4×20×26)を加えた5860元(=3780+2080)が月収入となり、飲食店員としてはまずまずの給与レベルとなります。


そしてお客様へ良いサービスを提供した見返りとして、4元のチップだけでなく、お客様からの感謝の笑顔をもらうことも店員のサービスレベル向上に役立つのではないかと思います。実際、お客様側のチップ制度の評判も上々のようです。


很久以前のチップ制度がうまく運営できている理由は、


・1回あたり4元という固定金額を設定したこと
・電子マネーを使うことで、4元という少額のチップを効率的に直接支払う仕組みがあること
・チップ制度を利用して、店員の評価をお客様が直接できるようにしたこと


だと思います。これから中国で普及しそうなチップ制度にも、「お客様に店員評価業務をアウトソースする」だけでなく、「店員へのボーナス一部を負担してもらう」という中国ビジネス成功の方程式の1つ「他力を使う」がうまく応用されていますね。

 

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