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2015-10-21 11:35:00

NYのレストランでチップ廃止の動き、業界は戦々恐々

 
高級フランス料理店「ル・ペリゴール」のオーナー、ジョージ・ブリゲ氏。自分のレストランでは「絶対にチップを廃止しない」と語るENLARGE
高級フランス料理店「ル・ペリゴール」のオーナー、ジョージ・ブリゲ氏。自分のレストランでは「絶対にチップを廃止しない」と語る PHOTO: PETER FOLEY FOR THE WALL STREET JOURNAL

 レストランでの楽しみの1つは、最後に来るデザートだろう。一方、ウェイターにとっての楽しみはその後のチップだ。

 だが、米国ではそうしたチップの習慣がなくなるかもしれない。ニューヨークで人気レストランを展開するダニー・マイヤー氏が今週、「ユニオン・スクエア・カフェ」や「グラマシー・タバーン」、「ザ・モダン」など13のレストランで、チップを廃止する方針を打ち出したからだ。この発表を受け、ウェイターはもちろん、ニューヨーク中のレストランのマネジャーやオーナーらの間に波紋が広がっている。チップ廃止の動きが今後広がるのか、チップをもらえなくなってウェイターの収入はどうなるのかなど、不安の声が聞かれる。

 高級パブ「パウンズ&オウンス」のマネジングパートナー、エタイ・シネイダー氏は「ニューヨークの誰もがこの話題で持ちきりだ」とし、自分も頭をひねっているところだと述べた。

 高級フランス料理店「ル・ペリゴール」のオーナー、ジョージ・ブリゲ氏は、このニュースをテレビで知り、「ニューヨークでこんな話が起きるとは信じられない」とこぼした。

 ブリゲ氏によれば、チップをもらなければウェイターの収入が減り、彼らが仕事に不満を持てばビジネスに影響が生じかねないという。「ウェイターの収入が自動車工場の労働者の水準になった日には、誰もが笑顔を見せなくなり、客を喜ばせようとしなくなる」。ブリゲ氏は自分のレストランでは絶対にチップを廃止しないと明言した。

 ニューヨークでは「チップなし」を方針に掲げるレストランは珍しく、全米レストラン協会(NRA)によると市内にあるフルサービスレストラン1万8600軒のうちほんの一部にすぎない。メイヤー氏の決定もグループ内のフルサービスレストランのみを対象とするものだ。

 メイヤー氏によると、チップを廃止する代わりに価格を引き上げるという。メイヤー氏はチップを廃止することでチップをもらえないキッチンスタッフの賃金を引き上げられるとし、これで才能のあるコックを呼び込めると力説した。

 しかし、ほかのレストランオーナーは、チップ廃止が成功するかは、ウェイターの収入を、チップを受け取っていた時と同じ水準に維持できるかどうかにかかっている、と指摘している。

 高級フランス料理店「ル・ペリゴール」では、ウェイターはスーツと蝶ネクタイを身に付け、客の細かい要望に応えるためゆっくりテーブルを見て回る。客の中には外国の大使も多い。

 ル・ペリゴールのチップは通常、合計金額の最低20%とされている。スタッフの間ではチップは良質なサービスへの対価だと認識されており、チップの廃止はウェイターはもちろん、客にも影響が出ると考えられている。スタッフの1人はこう話す−−「チップはプライスレスだ」。