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古本屋日誌
今朝は雨で涼しいです。猫も郵便局にお願いに行く時にも全く出てくる気配はなく落ち着いた朝です。
雑誌「ミーツリージョナル」を出していて、以前には「大阪人」も発行していた140Bから「ザ 古墳群」が出ました。これは世界遺産登録を目指している百舌鳥、古市古墳群をフルカラーで美味しいお店などとともに紹介する本です。以前のこの手の本は森浩一の「古墳」に代表されるように空撮でたんに森があるなの類か堺の中学校の考古学研究部が作成した破壊されゆく古墳の現状を嘆くスタイルのもので、その写真は当然ながら打ち捨てられて惨めなさまをさらす古墳というものでした。それに比べて今回のはさすがはプロのカメラマンが絶妙のタイミングで夕日に映える前方後円墳の姿や鬱蒼と広葉樹に覆われてジャングルもかくやと思える森林の様子を撮っていて確かに魅力的です。
まあそうなんですが、そもそも発掘して遺物を調べ、整備して墳丘に登れるようにしないとお話にならないわけです。その当たり前の話が全然出てこないのは愚かしい。中井正一の「仁徳陵」には近世のこの古墳では特に春の桜の季節は墳丘にたくさんの人が登り、植えてある桜を楽しんだ、墳丘には茶屋もあって花見の名所だったことが詳細に書いてありますし、応神陵は隣接する八幡さんから墳丘に登るルートがあり祭りの時に定期的に祭祀が墳丘上で実施となっていたことも有名です。
今朝もそうは暑うはなくいい感じです。
雄猫は例によってこんな感じで草をはんでます。心なしか腰にくびれが出来てきた感じもしてます。写真では遠慮しときます。
先日角川文庫の糸井重里対談集「話せばわかる」を手に入れました。この中に村上春樹との対談があって冒頭糸井が「ぼくは群馬です」と出身地の話を始めてこれに村上が応じて「父親が京都、母親が大阪の船場なんです。大阪の人は東京なんか人の住むとこやないと本気で信じてる人もいる。過剰に東京を意識していて、つまりはバカなんだわ。そのくせ別に東京に取って代わろうとは思っていない。大阪は所詮二番目の街で、近くに色々あるんだから、確かに東京にはいいものもあるんだろうが、近場で間に合わしとけばええやん、わざわざ東京まで行くやつの気が知れないという感覚だ。京都の人は様子してそういうことをいい、大阪の人は本音でそういう。そういう親がいる家で育ったから俺は素直ではないんや」と語る。糸井がこれに応じて「確かに必要がないのに過剰に反応するのをバカと言いますね」と賛成してしまってます。
まあ昔は東京に対抗したいという欲望もあったんでしょうなあ、今はないですな。オイルショックの時に一時的に工業製品の全国生産高で大阪府が東京都を上回ったことがあり、この現象は戦後初めてだったのだが、大阪市住之江区の私の周辺でも天王寺区の高校でも誰一人話題にする者はいませんでした。でも敢えて東京に対抗するならば下寺町の佇まい、船に乗ってみる大川両側の緑、なんでもありの広大な住吉っさん、天皇タブーのおかげで残った百舌鳥と古市の古墳群、東洋陶磁器美術館の安宅コレクションと藤田美術館の曜変天目茶碗などのコレクション、竹本織太夫などの文楽、ものすごく安くて便利な古本屋、いわゆる関西料理、ミス大阪などのキャバレーの開放感、他人の褌のようなものだが近場に京都、奈良、吉野、琵琶湖、有馬などの名勝、保養地があること、冬は東京ほどは寒くないことそんなところですかねー
昨日同様今朝も余り暑うはのうて過ごしやすいです。スーパーで豆苗をこうてきて食べた後また水を入れて栽培しているんですが、メス猫がむしゃむしゃ食べています。イネ科のものしか食べないのかとおもてましたがそうではないことがわかりました。メス猫はあかんたれなので外に出てイネ科の草を食べようという時に人が通りかかったり、物音がしたら途端にビクついて落ち着きがなくなり家の中に避難してしまいます。
岡山のあきづ書房が先月取り扱っていたいしいひさいちの「ドーナツボックス1〜4」を購入して楽しく読みました。いしいは売れっ子なのにみなもと太郎同様コミティアに出品している変わった漫画家で私も去年天満橋のOMMでの関西コミティアに参りいしいの同人誌を買いました。このドーナツボックスも相変わらず面白いのですが中でも昭和の重大事件をネタにしたのがなかなか良かった。5.15事件は陸軍の将校によって犬養毅が暗殺されたやつで例の「話せばわかる」「問答無用」が有名ですね。犬養毅は70を越す老体で、それなのに執拗にとどめを刺したことを娘の犬養道子は怒ってました。いしいはこれをパロって犬養毅は実は質実剛健、弁慶もかくやと思われる偉丈夫で「小僧っこどもにやられるわしではない‼︎」と豪語して刀を手にして神出鬼没、青年将校たちを斬りまくるわけです。将校たちは岡山出身の犬養の方言がわからず「標準語で話せばわかる」と助けを求めるのだが、毅は無慈悲にも「問答無用‼︎」ととどめを刺す、という流れです。
こういう実在の人物をネタにしたパロディはいしいの真骨頂だが、もう死んでしまった谷口ジローも「坊ちゃんの時代」の中で漱石が学生たちとビアホールで泥酔して大暴れして逮捕されて豚箱に入るシーンを描いていて私は「そうなんかあ、漱石は酒乱だし、破滅型のところがあるんやな、だから息子をしばき倒したりするのか」と妙に納得してしまったことがありました。
今朝も過ごしやすい気温でありがたいです。時々ホットカーペットの上や畳ににゃんババが落ちてることがあり、嫌がらせでやってるのかな、ふんしの始末が行き届いていないぞ〜さっさと掃除せんかいなというアピールかなと思うのですが、どうもそうではなくババをトイレでした後つけたまま歩き回っていい頃合いで落としてしまうことがわかりました。
昨日竹本織太夫と中川家の礼二がテレビで対談をしていて織太夫は4つの時から入門して小唄から始めて芸歴も25年になるのだが礼二が「高校生とかになったら色気づいたりいろいろあれやりたいこれやりたいとやめたなったことはないんですか?」と聞いたが織太夫が言うには「それはないです」とのことで、さすがは才能のある人は違うなあと思いました。と言うのも先日住太夫が亡くなって追悼番組がありそこで住太夫が今の織太夫に稽古をつけているシーンもあって、ご存知の通り住太夫はいつもの調子でカミナリを落としとにかく震えるくらい怖いんです、「そんなんでよう浄瑠璃かたってんな‼︎、この馬鹿‼︎」てな感じで私なら即座に帰りますよ。
それはさておき礼二がそう聞くからには礼二本人に覚えがあるんだろうと思うわけです、彼も芸歴25年なんだそうで、そりゃあ辞めたくなる時もあったんやないかなあ。後半で織太夫が同じことを聞くんですが礼二の答えは「小さい頃貧乏でなんやかやこうてもらえず、近所の人を観察してモノマネしていた、普通の人の仕草でみんな意識してないんやけど、言われてみたらそうやなみたいなのを出せるようにしている。自分がおもろい思て、やっても受けない時があってがっかりするんやけど、先輩からやり続けなあかんでゆわれたことがあって繰り返しやってます」。そうだよなあ、それが普通だよなあ、仕事である以上いくら得意な分野のことでもストレスはあるし悩みもある、極論したら「仕事としてやりだしたから苦労ばかりで純粋に楽しんだことはない」となるんだろうが、そんな身もふたもないことは言わないのが奥ゆかしくて良い。落合博満はそのまま言ってますよね。
今朝は打って変わって涼しく、風も強く秋に季節が変わったかのようです。昨晩の強い雨でうんきが洗い流されたようです。
先日お客様から「四代竹本越路太夫」などの文楽の本をお譲り頂いたんですがこれは越路太夫にインタビューして取材も交えてその生涯を描こうとした野心作で読み応えがあります。越路太夫は此花区の大きな料理屋の長男だそうでなかなか裕福な暮らしむきだったようなんだが太夫の道を歩むことになったについて親の反対はなかったのかが気になったが特にその手の話はなく、むしろ帝塚山の師匠の家の近所に別に家を構えて入門も後押しをしたとあるから、浄瑠璃に入れあげる芸能一家だったのか、その当時の大阪では浄瑠璃がらみの仕事は芸人風情と蔑まれることがなかったかならいずれがなんだろう。浄瑠璃の内容は封建時代の、なかなか感情移入もできかねる話が多いのだがこれに関しても「バカバカしくて困った」「疑問に感じた」類の話は一切なし。そういうもんだろうかなあ。文楽に関しては例えば谷崎潤一郎が「痴呆の芸術」とその魅力を讃えるとともに限界も指摘していることは有名なんだが取り立てて気にしている節はない。
なかなか面白いのは戦後の食糧事情の悪い時代に本当に食えなくなってきて所属する松竹芸能に待遇改善を求めたが拒絶されて占領軍に相談したら労働組合を作り交渉するのが良いと言われて組合結成に至ったというくだりです。なんでも軍政部労働課のオーバクレ少佐という人なんだそうだが一体何が目的だったんだろうか。とにかく軍国主義を倒すためにはなんでも利用したいとの思惑があったんだろうか。組合には師匠の山城少掾は参加せず、兄弟子の綱太夫は加わったのだが、あってはならないことだが例によって松竹芸能から仕事場を奪われたり、御用組合を作られたりといったいざこざがあり、挙句には組合の副委員長だった綱太夫が恩師との繋がりを断つわけにはいかないというデタラメな理由で組合を抜けて御用組合に走るなどということが起こり越路太夫としても困ったことになった。彼としては師匠と弟子の関係と雇い主である松竹芸能との関係は全く別なんだからそれを混同して論じるのは間違いだとの考えがあったのだが、なかなか現実にはそうもいかなかったんでしょう。
こういうリアリストだった越路太夫なのに浄瑠璃という過去の遺物のような芸能との整合性は彼の頭の中ではどのようになっていたのか気になります。