Welcome
古本屋日誌
20世紀の終わりから、店舗を持たなくても、通販で十分な収益があげられる時代になった。
そして、2023年の今日では店舗なんかよりも通販の方が、はるかに高い売り上げや収益を出せるようになっている。
老舗の古本屋も店舗はあるが、自前の通販サイトを構築している他、Amazonやヤフオクでも販売するのが通例だ。
そして皆、異口同音に「通販サイトでの販売が圧倒的に儲かる。
店舗は賃料や人件費を考えると、割に合わなくなってきている。もう半分くらいは地域貢献みたいな感じ(ネット弱者とかその地域の人寄せ場所になるとかの意味)になってるな」というのだ。
ネット通販ではAmazonは本の販売には15%の手数料の他、一件あたり60円が追加で取られる他にも、月間登録料が6000円近くかかる。
ヤフオクはヤフープレミアム料金の500円くらいの他に、手数料として8.5%。
メルカリは登録料はない代わりに手数料は10%だ。
明らかにAmazonの手数料は、割高なんだが、確かに集客力は高い。
また商品の登録が簡単だというメリットもある。本の写真はすでに用意してあって、あとは価格とコンディションを打ち込むだけ。住所の印刷もスムーズにできる。
しかし問題点としては1100円以上の本は、送料の高いクリックポストや、ゆうパックなど追跡番号のついた手段を選ばなければならないことがある。
他にもAIによって価格が高すぎると判定されると、自動的にその本の出品が停止されることがある。
これまではAmazonの集客力は確かに他を凌いでいたが、このところヤフオクやメルカリとさほど変わらなくなってきている。(これはうちの店の場合には、であることは言うまでもない)
これは一つには、Amazonは同じ商品なのに、いくつも立項されていて、客は探すのがめんどくさくなってしまったからではなかろうか。
新京極には『キリンシティ 新京極店』がある。
ビールは3分くらいかけて、3回注ぎという丁寧な手法で入れてくれて、なかなか美味いのだ。
ビールサーバーが真ん中にあって、それを取り囲むようにカウンター席が配置されていて、向こう側のカウンター席もよく見える。
先日嫁と飲みに行った際に、ちょうど真向かいに、80はゆうに越えていそうな婆さんを囲んで、おそらくその娘と思しきおばさんに、孫だろうと思える姉ちゃんの三人でビールを飲んでいるのが目に入った。
おばあさんは見事な白髪が、生い茂っていて、上品そうな表情で、しかもグビグビ、ビールをあおり、おかわりもして、楽しそうに2人と会話している。
歳をとると身体はえらくなるし、酒の量も減ってしまう。
ただ一部の恵まれた人は、長く体力を保っているうえに、ボケもしない、脚力も十分なのだ。
もう亡くなったけれど水木しげるが、かつての戦友が眠るニューギニアに慰霊の旅に来て、「彼らは若くして死んでしまったが、水木さんはこの年まで健康を保っていて、それを確認できるから楽しくなる」と答えていた。
キリンシティの婆さんも、自分に向けられる羨望の眼差しを確認したり、楽しんだりするために魚来ているのではなかろうかと邪推したくなるのだ。
今日も秋晴れで、糺の森で行われている大規模なフリーマーケットに行ってみた。
京都では25日に北野天満宮、15日に知恩寺、21日に東寺など各所で特色あるフリマを開催しているのだが、糺の森のは古本屋も出店していると聞いたからだ。
さて行ってみると、まず食べ物屋がたくさん出店している。
スパイスカレー、パン、コーヒー、ビール、酒、ケバブ、うどんなどいくらでもある。
丹波の黒豆枝付きというのも500円で売っていた。
雑貨、カバン、帽子、セーター、コート、などもいっぱい販売している。ステージも作ってあって、時折ダンスショーが行われているほか、突き当たりの下鴨神社よりのところでは手品ショー、入り口の河合神社あたりでは紙芝居もやっていて、大人気だった。
客は家族連れが多い、古本市のように高齢の男性が8割ということはなく、学生や外国人もたくさん来ている。
さて肝心の古本屋は、美術書や写真集、映画本といった芸術関係のものが大半で、しかも店の数も数えるほど。
家族連れは雑貨や服なんかを求めているだろうし、小さい子を連れてきている人たちは紙芝居なんかも目当てにしていると思う。
だから美術書や芸術書なんかは変わり者の文学部や芸術系の大学の学生を目当てにしているのだろう。
紙芝居やダンスなどの出し物もそうだが、フリマ自体も学生が関わっている可能性があるから、一定の需要はあるのだろう。
それというのも、店の中に蛇酒を売っているのがあって、(ハブ酒みたいな感じで、透明な酒瓶の中に蛇が入っているやつ)のぼりを見たら「京大、熊野寮」とある。
美味い酒なのかどうかは知らないけれど、学生が運営に関わっているのは間違いないと思ったね。
いずれにしてもこのフリマではうちの扱っている本は売れないことは明白だな。
今日は日本シリーズの初戦。
チケットは全く取れなかったし、もともと仕事が昼からある。
結果はタイガースがバファローズのエース山本を打ち砕いて圧勝。
こういうこともあるんやね。
あの弱いタイガースがシリーズに出ることも異常だし、山本の150キロ台後半のストレートを打って大量得点するなど、面妖なことだ。
俺は2003年のシリーズはなんとか甲子園のチケットを手に入れたいと考えて、あれこれ申し込んではみたが、取れなかった。
それでも諦めきれず、その時はまだまだいろんな人脈を持っていた母に頼んでみた。
「商店街のたまご屋さんがな、猫が好きでな、私も相談に乗ってあげてるよって、頼んだら取ってくれる思うわ」とのことで、アルプススタンドで、観戦できて金本のサヨナラホームランを見た。
2005年のシリーズは、相手がそもそもリーグトップのチームでもないマリーンズで、バカバカしいので、チケットは取らなかった。
2014年のは、確かに東京ドームでジャイアンツに4連勝して出たのだが、面白くもないので、見に行きたいとは思わなかった。
リーグ優勝こそ価値があるわけで、日本シリーズはおまけだ。
今回のシリーズは優勝したわけで、見に行きたい思いもあった。
今は米寿も越えた母に頼んでみたら「あんたなあ、私の人脈なんかなあ、今はもう何にもあらへんで。そんなことくらいわからなあかんで」と言われてしまった。
昨日は阪急茨木の近くのお客さんのところに出向いた。
この人はいろんな文学全集をお持ちだ。
娯楽が少なかった時代はくだらない小説でも売れたから、いろんな出版社からマイナーな作家でも全集が出ていたし、揃いのものは高価だった。
佐多稲子全集など30万くらいしていたが、今はちょっとも売れないな。
新日本出版社から出ていた『宮本百合子全集がなんか、いまや一冊100円でもなかなか売れない。
宮本百合子の小説は『伸子』にしても『道標』にしても、今本屋で売っている凡百の作品より圧倒的に面白いのに、俺は異常な事態だと思っている。
宮本百合子が共産党の宮本顕治の嫁だったから、単に毛嫌いしているだけなのではないか。そんな色眼鏡に囚われているやつらはバカだよなあ。
さて、文庫本の全集という珍しいスタイルで、ちくまから夏目漱石全集や森鴎外全集が出ている。
漱石の方は売れないが、鴎外の方は依然として高い人気があって不思議だ。
史伝といわれている『渋江抽斎』の類なんかはとりわけ高い。
高校で使う文学史の副読本なんかに『渋江抽斎』は史伝ものの傑作であるとか、鴎外の最高傑作だなどと書いてあるからなんだろうか。
俺が一読したところ、事件らしきものも起こらず全然面白くないし、それなら『阿部一族』とか『雁』とかの方がよっぽどいいと思うんだけどね。
ちくま文庫で現在も人気があるのは、
①チェーホフ全集、高校の演劇部でよくやってるからだろうか。
②シェークスピア全集、これは巻数が多すぎる。翻訳者の松岡が30年くらいもかかっていた作品で、誰か他の人に翻訳を依頼した方がよかった。
人気があるのは、シェークスピアはセリフが面白いからだろう。
⓷泉鏡花集成、これは全集ではなく主要な作品を集めたものだが、後半の巻を探しているお客さんはたくさんいる。帯がついているものはあまり見たことがない。
お化けや妖怪への怖いもの見たさが人気の原因だろう。
⓸詳注版シャーロックホームズ全集、事典付き、これはかなり新刊で売れている。
古本屋に持ち込まれることも多い。ホームズの「推理」なるものには全く同意出来ないが、犯人を突き止めてそれで終わりにならないところは確かに素晴らしい。
裁判官のように判決を下すし、それをきちんと実行する。
自ら犯人を死刑に処することもあるわけで、これが読者にはたまらない魅力なのだ。(俺もそう思う。水谷豊のゆうてることなんか、真実は少しもない)
⑥カフカセレクション、これは全3巻なんだが、探しているお客さんは多い。
カフカは短編が多いので読みやすいし、異常な世界観を味わうこともできるから人気があるのだと納得している。
⑦バートン版千夜一夜物語、これは全11巻もあるんだが、人気は高い。
死刑を免れるために、あらゆる知恵や経験を動員して話を作る。そのあたりがいいんだろう。