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古本屋日誌
古本屋の仕入先は限られていて個人のお客さんから買い取る、図書館や郵便局のお下がりをもらう、廃品回収業者や遺品整理の業者から買い取る、古書組合の交換会で買う、他の古本屋から買う、ネットで売られている商品を買うとまあこの辺りしか思いつきません。
仕入れの問題はいらない本が実に多いことです。
お客さんが持ってくる本は基本的にはほぼ全部売れないものです。業者から買い取るケースでもほとんどゴミなんですが、付き合いもあるし、誰かが引き受けないと回っていかないとの使命感もあって受け取ってしまうことが多い。
古本屋の中には廃品回収業者と契約して定期的に売れそうな本を持ってきてもらうお店もあるんですが、やはりいらない本も大量に買わざるを得なくなっています。
うちも通販で注文してくださったお客さんには「また売ってくださいね~~よろしくお願いいたします」とのチラシを入れて買取をお願いしたこともあるんですが、ほぼ買取の依頼はないです。
これはお客さんの地理的な分布が関係していて、うちの店に注文してくださる方は関東圏が圧倒的に多く、あとは北海道、東北、沖縄、九州とバラバラで隣近所、大阪周辺はほとんどない。
東京のお客さんは本を売る時は近所にいくらでも古本屋があるわけだから、敢えて大阪くんだりの本屋に電話はしませんよね。
しかし肺炎騒動収束後は店舗売りは今以上に苦しくなりますから通販に活路を見出さないとなりません。
うちとしても「これは本を売りたいなあ~~」となるようなチラシを作っております。
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このふざけた状態をさらに延長すべきだと言うてる輩もいるようだが、まず自らを追い込んでから発言するべきだろう。自分は収入は全く減らない安全な地位にいて「まだまだ危険だから緊急事態は延長すべきだ」とか言うのはつまりは大勢の労働者をクビにしろと言っているに等しい。
それはさておき新井紀子の「AI vs教科書が読めない子供たち」にあったようにAIは人間のトップ層には到底かなわないが、それでも偏差値57くらいには余裕で行けるので、そこに至らないかなりの労働者はクビになる可能性が多分にある。
今回の騒動でパソコンを駆使してテレワークできる労働者はまあ雇用は大丈夫かもしれないが、テレワークが無理なパソコン技量のない労働者、オフィスのメンテナンスや掃除を担当する労働者などは一掃される危険にさらされている。
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毎週土曜日に「朝日新聞」は書評を掲載しているが中には面白そうな本もある。
この間は呉座勇一が木下聡の「斎藤氏四代」を取り上げていた。
従来斎藤道三が独力で成し遂げたとされてきた美濃一国の切り取りは実は親子二代での達成であることや、斎藤義竜の治世は極めてスムーズでもし若死にしなければ信長による併呑には時間がかかったか、不可能だったと思われること、義竜が土岐家のご落胤などというのは江戸時代になって作られた妄説であること、道三がマムシと呼ばれるようになったのは実は坂口安吾の小説からであることなどが書いてあって驚かされる。
それはさておき、この本を手に入れるのは大変で今回の肺炎騒動で土日は大型書店がほとんど閉まっていて、ネットでの検索すら不可能になっている。
仕方なくAmazonで検索してみたらすでに新刊はなく、マーケットプレイスの古本なんだが7000円以上している。
ようやくジュンク堂の芦屋店で見つけて購入はできた。
なるほど朝日新聞の書評はそれなりに権威あるものだからこれを手引きにして本を買う人が、私も含めてそれなりにいることが予想された。試しに朝日新聞に載っている「斎藤氏四代」以外の本はAmazonでどの程度の値段になっているのかを調べてみた。
結果、呉座勇一の推している「斎藤氏四代」だけが高い値段になっていてその他の本は普通の値段で特にプレミアも付いていない。
ふーん、そうなのか。これは呉座勇一が書評家として人気があるためなのか、それとも歴史関係の、とりわけ戦国時代がらみの本は人気があるのか今のところはよくわからない。それにしても5月2日から6日まで、ジュンク堂はほぼ全店舗の休業をすでに予告していて、娯楽の殿堂である巨大書店でクルージングを楽しめないとは残念だよなあ。
おまけにどの図書館もしまっているし、みやこメッセの古本市もないし困ったものだよなあ。
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新潮文庫から去年山本周五郎の「季節のない街」の新版が出た。
活字が大きくなり、カバーは川瀬巴水の版画だ。スラム街の話なんだが川瀬の版画は川べりに家屋が張り出して佇む風景で情緒たっぷり、失われたものたちへの郷愁をそそる。
だが周五郎の作品は赤裸々に貧民大衆の日常を描いたもので昭和レトロブームをあざ笑うかのような作風、そのコントラストの鮮やかさに心打たれる。
なかでも「とうちゃん」は秀逸だ。腕のいい刷子職人の良太郎には五人の子がいるのだがどれも父親が違うという噂なのだ。妻のみさおは男グセが悪く、子供の面倒も見ることなく遊び歩いており、そのくせ旦那の仕事ぶりには「もっとちゃっちゃとできないのかい、グズでノロマだよ」と文句をつけてその稼ぎで遊んでいる。
子供たちは口答えもせず父親の手伝いをする健気な兄弟なんだが、外で口さがない大人の言葉を耳にする。やれ「あそこの家はみんな父親が違っている」やれ「お楽しみのことだよなあ」。
ある時次郎が泣きながら帰ってきて良太郎に「とうちゃん、とうちゃんは本当にとうちゃんなの?みんな違う違ういう」と真剣な面持ちで問いただした。
さて良太郎の返事は?
ここが面白いところなんですな。
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