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古本屋日誌
ゴールデンウィークになった。
今年は明日5月1日と2日は平日で、そのあと3日から5日までが祝日で、そのあとは土曜日、日曜となる。
通販で送る場合、1日の月曜日にゆうメールで配送すると、土日は配達がないから来週の月曜、つまり8日にしか配達されない。
これではいくらなんでも、お客さんは困るだろう。
すぐにでも読みたい本なのに、しかも決済は済んでいて、お金も払っているのに1週間も待たされるのは嫌だろう。
結局持ち出しになるのだが、高めのサービス(クリックポストやレターパックなど)で送らざるを得ないよなあ。
いしいひさいちは定期的に商業ベースに乗せない本を出している。
自らの「いしい商店」から『ドーナツボックス』シリーズをこれまで8冊、「ガラクタの世紀』と題した戦争もの、『ROCA』という長編漫画などがある。
売れない漫画家が同人誌をコミケなどで販売しているのに似ている。
いしいは「朝日新聞」に連載を持っているメジャーの漫画家なのに、あえて同人誌スタイルの出版にこだわるのは不思議なことだ。
亡くなったみなもと太郎も、幕末を舞台にした『風雲児たち』を『乱』に長らく連載する有名な漫画家なのに、同人誌も出して、コミケなどで販売していた。
大手出版社から本を出さないメリットはなんなんだろう。
いしいの本なら朝日新聞社でも、講談社でも、小学館でもどこでもウェルカムだし、部数もはけるから儲けも多いことは間違いない。
それを、ちまちまコミケで販売したり、露出度のないサイトを通じて通販したりと手間がかかるだけだろう。
才能に恵まれた天才の考えることはよくわからないよな。
今日から5月5日まで8日間、天王寺さんで古本市。
天気も良いが、いつもの年のように暑くはなく、カラッとした爽快感のある珍しいくらいの古本日和。
今年は岡山の不死鳥ブックスが参加していない。
いつも文庫から様々な単行本、辞書、大型本まで取り揃えて、大型トレーラーを思わせるたい、何層にもなった本棚で販売しているのだがな。岡山から大量の本を大阪まで運び込むのは大変だからなあ。
本部は南側にあって、雨除けの大型テントを張り巡らして、子供向けの本が大量に並んでいるのが目を引いた。
例年の何倍もの規模で展開しているので、驚かされた。古本市に来る客は中年以上の男が多い。子供連れを呼び込むための戦略として、絵本や図鑑、児童書は効果的なんだろう。
それにしても、小学生、中学生などはほとんど見かけないな。花見の名所に子どもがいない、USJに老人がいないみたいなものだ。
本なんかよりゲームやYouTubeの方が面白いということかな。
新品同様の本が、明るい空間に整理整頓されて並んでいるブックオフでも小中学生はほとんど見ないな。
それはさておき、100円均一本コーナーについても、今回もテントをしつらえていて雨天でも大丈夫そうだ。
そして、店主が病気で、心配された池崎書店もいつもと変わらない展示を展開していて、一安心だ。
テント内に設けた平台にたくさんの文庫本、文学書、マンガなどが並んでいる。
さて、今回の古本市の感想なんだが、いつにも増して均一本が目についたな。
MKリンクは岩波文庫や講談社学術文庫を4冊1000円だし、瀬戸内アーカムハウスは大量に300円均一本を並べている。
シルヴァン書房も新書を均一販売しているし、淡路の古本屋は文庫本が200円均一でたくさんある。
小町書店はいつものように5冊800円でたくさんの文庫本や新書、東洋文庫何回がある。
郁書店も単行本を200円均一で平台に並べている。
ピエトも200均の本のかたまりがあるし、クロックワークは例によって150円均一の文庫がたくさん平台にある。
これは販売戦略だよな。
4冊で1000円、5冊で800円とか言われると、欲しくなくてもとりあえず、その冊数までついこうてしまうものだ。(もちろん一冊で買うこともできるのだが、すこし割高になるので、それが嫌でこうてしまう)
作家の北方謙三が朝日新聞に思い出話を連載している。
昨日は直木賞の選考の話だった。
北方は長らく選考委員を務めていたのだが、『容疑者Xの献身』で受賞した東野圭吾の話だった。
東野は六度目のノミネートで受賞したのだが、ごく普通に考えて『容疑者Xの献身』は出来が悪い。
北方謙三も、その上で「ここで押しきらないと、ミステリーの受賞はなくなってしまう」と考えたし、「この作品は心理描写が巧みだ」とも思って、受賞に賛成したという。
しかし選考委員の渡辺淳一はこれまでも東野圭吾の作品には辛くて❌を付けて受賞に反対してきた。
その理由は「一人の人間の生き死には大変なことだ」それなのに、人助けのために殺人を犯すなどとんでもない話だ、ということなのだ。
しかしその渡辺が今回は△をつけて、積極的には反対しない姿勢だったため、東野圭吾は直木賞に決まったのだ。
これはなかなか興味深い。
確かに「献身」などというときれいな話のようだが、己のために無辜のホームレスを殺して、アリバイ工作するなど言語道断だ。
また一介の高校の数学教師風情が、数学の重要な発見につながる研究をしていたなどバカバカしい。18世紀ならまだしも、現代数学はそんな甘いものではない。
要するにそんな当たり前のことも知らないその辺の大衆の同情を引くために、適当につくったおとぎばなしで、つまらない。
今日から阪神百貨店で古本市。
先週の金曜日初日の大阪古書会館での小規模な古本市から春の古本市シーズンが始まった。
春先は雨が多いので、古本市もそれに備えて屋内で開催されることが多い。
とりわけ阪神百貨店の場合は8階の催し物会場で、本の他にレトロな雑貨、大阪万博のグッズ、衣料、レコード、CDも合わせて販売となる。
屋外の古本市では、風に飛ばされた砂やほこりがカバーについて、本の触り心地がザラザラだったり、雨の影響で湿気を含んでいたりして、いかにも古本だよなあという感がある。
しかし百貨店の催しでは砂もほこりも飛んでこないし、古本屋が工夫して!カバーにワックスをかけてピカピカにしてあったり、カバーの上から透明のきれいな包装紙をかけてお化粧したりもしているのだ。
また本棚も、百貨店が提供しているのか、木目の美しいものだったり、柱を利用し木々の意匠を作り、その間に本が覗く体にしたりと工夫がこらされていて、見ていて楽しい。
本探しにあいたら、地下2階にエレベーターで直行して、ビールやコーヒーを飲めるわけだから、1日いても大丈夫だ。
それにしても、古本市のお客さんは不思議だよなあ。
なんであんな、どこにでもあるような本を高いカネを出して買うんだろうといつも思う。
百貨店の古本市ではレジは1箇所で、ズラーと精算待ちの客が並んでいる。
レジに到着したら、長テーブルを前に同時に4人が会計するシステムだ。
やってもらう待ち時間に、嫌でもすぐ隣の客の買い物が目に入る。
講談社学術文庫の「徒然草」全4巻やかなり昔の文学全集の端本なんかをこうている。
通販ではなかなか売れない本ばかりなのだ。