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古本屋日誌
元町で古本屋を営む戸川昌志の書いた「古本パンチ」にはせどりの話がある。
戸川の店にやってくるマニアの中には彼の店で買った本をネットオークションに出して利益を上げる客もいる。
戸川は「マニアのほとんどは、好きな本は保存状態や帯のあるなしにこだわっておんなじ本を購入して、いらない分は転売している」という。
「1000円の本をこうて、3万で売ったとかいうのはあれだけど、1500円で売ったとかそういうせこい話ばっかり、そんなのは全然気にならない」という。
私も通販でいろんな古本屋さんから注文をいただくこともあります。それはやはり全く気にならない。
ただそれは戸川の言うような理由からではない。
俺が付けた値段でこうていただければ後はお客さんが読もうが売り飛ばそうがわたしはなんの興味もない。利幅が何百円なのか何万なのかも興味がない。
ただ戸川はせどりの利益が大したことないから気にならないと言うのだが、古本屋の商売は1冊売ってその程度の利益しかないものなんだけどね。みみっちいといえば誠にその通りなんだけど、その程度の利益を確保するために日々精進しているわけだ。
そう考えると戸川は男らしいやつだよなあ。
知り合いの古本屋の話では「俺はな、自分の店で扱うてるジャンルが80年代の若者向けの雑誌や写真、スチールなんかやから客や市場から関係ないもんを手に入れたらいらんやつは適当に値段つけて店に出すけどな」とのことだ。
これは昔ながらの古本屋のシステムだ。それでも売れなければ市場で売るか、面倒なら処分してしまう。
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今日から百万遍の知恩寺で古本まつりが開催。
大規模な古本まつりは去年から初めてで、京都の古本屋の中には「いくらなんでも今回やらなんだら一年何にもしてないことになるからな」と開催を待ち望んでいる話も聞くが、その一方で「実際通販で去年の数倍売れている。もうしんどい思いをして重たい本をお寺さんに運び込んでまで売る時代やない」との話も聞いた。
「これだけネットで売れると、あれやな店にええ本置いておく意味など全くないな。しょうむない本ばっかりの店になったら客もおもろないやろし、こっちも張り合いないな」
という話も聞こえる。
さて肝心の知恩寺の古本まつりだが、本堂での古本供養が終わってからの開店なので、いつも10時を回るのだが、今回は法要が長引いたのか10時10分くらいのオープンだった。
大阪の古本市では始まる前からシートの中に手を伸ばしてお目当ての本をつかんでキープしたり、自分の判断で10時になるとどんどん本をつかみだしたりする人がいるが、今回の京都ではそういうことはなく、皆行儀よく、開始のアナウンスを待っていた。
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戸川昌志の「古本パンチ」(東京キララ社)を入手しました。カバーに少し傷みがありますが、ぜひお求めください。
戸川は元町で古本屋「ちんき堂」を経営しているが本に関するエッセーでも知られた面白い人物だ。
この「古本パンチ」には古本屋に関するあれこれをつづったものが収録してある。
興味深かったのは戸川の店に来る客が業者の市のことをよく知っている話だ。
「あれやろ、火曜日に市があるよって今日あたり(木曜日のこと)あんたの店にな、落札した本が並んでんのちゃうか思てきたんやけど、ちょっともええのんあらへんな」とか言ってくる。
業者の市での入札には上値と下値の二枚札が使える。例えば4000円と9000円の二枚の札を入れることができる。他に競争相手がいなければ4000円で落札できる。戸川はこのシステムをYahooオークションにも導入すべきだという。でもすでにヤフオクはそうなってますけどね。
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去年文藝春秋から高殿円の「グランドシャトー」が出た。京橋のキャバレー「グランドシャトー」を取り上げたもので、大阪のキャバレー小説の系譜につながるものだ。
これまで林芙美子の「めし」や花登筐の「ぬかるみの女」が宗右衛門町の巨大キャバレー「メトロ」を描き、「めし」は映画化されてメトロの内部の様子も印象的だった。さらに磯田敏夫のアルサロ小説、黒岩重吾の自伝ものもキャバレーのスカウトの日常を描いて面白かった。
今回グランシャトーの様子で次のようなことがわかった。
①キャバレーはビルの三階にあってエレベーターボーイがいた、上の階にはサウナがあった。
②ホステスの側から客にタッチすることはよいが客がおさわりすることは許されないタイプのキャバレーだった。
③客席は200くらいあり、ホステスは150名。天井から形の違うクリスタルのシャンデリアが垂れ下がっていた、奥に舞台が設けてあって最盛期には専属のジャズバンドの演奏が楽しめた。シンガーの中にはのちに有名になったものも数多くあった。
④舞台の前にはチークタイムで客とホステスがダンスをするフロアーがあった。
⑤朝礼で昨日のホステスの売り上げベスト10が発表され、トップのホステスは70万からの売り上げがあった。(当時の大卒初任給が1万9千円)店にホステスが出ていく際には銅羅を鳴らした。
⑥店内の椅子やテーブルは青を基調としていて、宗右衛門町のそれのように赤いけばけばしいものではなかった。またVIPの使うシートは特別仕様で、ホワイトシルバーだったので、周りから目立った。またグラスも特別なものだった。
⑦客が座るソファーの背もたれに付ける白いカバーは毎日取り替えていた。
⓼客層は公務員や教員も多く、60分で1200円という廉価コースを選んでサッと帰るパターンも多くあった。
⑨万博あたりから斜陽産業となり、客が減った。キャバレーに来ると一番安いコースでも1200円かかるが、家でテレビを見るとすればただだからだ。
⑩常勤ホステスの日給は2千円でプラス指名料がつく。
⑪昭和38年当時ビールは110円で仕入れ店では270円で出していた。おでんや串カツは300円から。
⑫料金は午後8時までのサービスタイムが1時間800円、8時から11時半までのナイトタイムが1200円。
⑬ホステスの指名料は予約してからくる本指名は500円で、そのほとんどがホステスの取り分だった。来店してから指名する場合は300円。
こんな具合で風俗小説としての価値はあるよね。
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こないだお客さんからたくさんマンガを買い受けた。
欲しい本はあんまりなく逆に見たこともないジャンルの漫画が色々ある。
「マンガで分かる心療内科」とか「マンガで分かる古事記」「百人一首」などのシリーズは心療内科のやつなんか10巻とかもあるのがわかりびっくりした。
精神科を訪れる患者のエピソードを漫画化したもので確かに面白いだろう。悩み事を抱える患者が心療内科を受診するきっかけにもなるだろうから実用性もある。
一方「古事記」は人気があるようでまた今月再販されるようだが、中身は下らないもので笑わせるぜ。こんなものが「古事記」だったら誰も読まないだろうよ。
あとは闘病記の漫画なんかだが私のところでは扱いきれないものなので、早速古川橋のブックオフに電話して買い取ってもらうことにした。
①10月中は買取に伺うのは無理で最速は11月1日であること。
②漫画と文庫合わせて70冊くらいとのことだが、車に乗り切らない時は二回に分けて買い取ることがあること。
③買い取れない本を持ち帰ることはできないこと。
などという注意を受けた。
買取が立て込んでいることや、客に電話口で確認した本の冊数は往々にしてデタラメでそれも非常に多いケースがあることがわかる。
しかし本は70冊と言ってるのに「車に乗り切らない場合は………」などとくどくど言うのはマニュアルにそう書いてあるからなんだが、バカであることも間違いないな。
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