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古本屋日誌

2019-09-30 10:43:00

9月の27から3日間、元町の花森書林で林哲夫、高橋輝次らのプロデュースした小規模な古本市があった。

最終日に行って見たら店の中央のテーブルにいくつかの木箱が並べてあったり、店の真ん中の少し張り出したスペースの壁に板を立てかけて本を並べて手に取りやすくしてあった。

元町は個性的な古本屋が集積していて興味深いエリアだ。耐震工事のために立ち退きを迫られているというモトコーにある古本屋は狭い店内にうず高く所狭しと本や雑誌が積み上げてあるレトロな、伝統的な店構えだ。

さらに「レトロ倶楽部」はマスコミ本やプロレス雑誌、ポップな雑誌を専門にしているし、花隈公園近くには内田百間や赤瀬川原平などをセレクトした本屋もある。元町商店街の中には三階にあって長大な階段をひたすら上らないとたどり着くこともできない「独尊」がある。

まああれですね、神田の古本屋街に似てますね。あちらは万葉集に関する本だけを集めた古本屋だとか、ビートルズの海賊版だけを売っている店とかがありますからね。つまり大阪の古本屋と違って店のテイストが各々違っていて客を選ぶようになっている。

神戸は伝統的に東京志向の強い街で、灘中も京大よりも東大の合格者がかなり多いし、戦前の「阪神間モダニズム」なるものも東京で流行しているものを再生産したもので、なぜか泥臭いものをよしとする大阪の人たちの趣向とは異なる。

まあ個性的な店構えの方がお客さんにはいいだろうから、ぜひともこのスタイルで頑張ってもらいたいものだ。


2019-09-29 10:59:00

蚊によくかまれる人もいれば全然かまれない人もいますよね。かくいう私はかまれまくる方で、周りの人はなんともないのに一方的にやられています。

うちの猫には蚊はよってきて毛がほとんど生えておらず防御が薄い耳を刺そうとしますが、そこは敏感なゾーンのことですぐにパタパタ動かして追い払ってしまいます。

普通は叩かれないように人の目につかない足の指とか肩口とか二の腕の裏側などを蚊は狙うんですが、古本屋の蚊は遠慮会釈なく堂々とかんできます。

手の肘から手の甲に向かうパーツのまあ真ん中にしっかり吸い付いて吸血活動に励んでいたりしますから、客は油断していますな。

しかし本の装丁はいろいろ魅力的なのがあって、私は田村義也のが特に好きで例の旺文社文庫の内田百間のやつは家の壁に木製の出っ張りを5段に渡って設けて、そこにクリスタルのフェンス状のものを取り付けて「阿房列車」や「東京焼尽」やら「東海道刈谷駅」などを載せて楽しんでいます。壁面に絵を飾るのはまえ面白いのだけれど本の表紙をズラリと飾るのも実は素晴らしくいいのだ。眺めてよし、手にとって読んでまたよし、友人が来て自慢するのにまたよし。

 


2019-09-28 12:43:00

朝日放送は例によって昼に相棒シリーズの再放送をしていて先日その17クールで国語辞典の編纂をめぐる殺人を扱ったのがあった。

「文英堂」という出版社が国語辞典を二種類出していて文英堂国語辞典はオーソドックスな語釈なんだが「千言万辞」という方は主幹の個性が前面に出たもので例えば夢の語釈は「心に抱いて実現しょうと目論むもの、叶えられた場合は喜びが湧き上がるが時が経ち普通になるとそれほどでもなくなってしまう。叶えられてもまた叶えられなくてもほろ苦さが残るもの」というものでなかなかファンも多い。

ところがこの文英堂の若手編集者が公園で滅多刺しにされて殺されてしまう。その晩そこで打ち合わせをすることになっていた主幹が疑われる。というのも主幹はアルツハイマーが進行して辞書編纂の業務に耐えられないとの判断で交代させる話が進んでいたからだ。

ところが主幹に変わって辞書編纂の代表となる予定の男が「自分がやった、主幹を私にするという話があったのに、ゲラ刷りを見たら前のままだったので腹が立った」という。

ところがじつは犯人は「文英堂国語辞典」のベテラン編集者で、前々からおかしな語釈で人気の高い「千言万辞」やその主幹を恨んでいたが、今回「売れ行きが振るわない」という理由で「文英堂国語辞典」が廃刊となることが決まり、何としても「千言万辞」を潰したいと思っていた。それで日頃から仕事ぶりに不満を抱いていた若手編集者を自分の手で殺害しこれを主幹がやったものだと押し付けてしまおうと考えた。

まあざっとこういう話なんです。

それにしてもストーリーは雑ですな、ミステリーとして許される限度を超えるデタラメな話で驚かされる。

だいたい気に入らない本の出版をやめさせるために殺人を引き起こすというのが無意味です。そんなもん主幹が殺人犯であるなら話題になってどんどん辞書は売れるから出版社は喜んで増刷をかけるだけです。

 


2019-09-27 12:08:00

新潮文庫から山本周五郎の「季節のない街」の新版が出た。

市井もので「青べか物語」につながる作品です。季節も何もなくいつも同じ暮らしぶりが延々と続き、そこから抜け出すきっかけも何もない街、つまりスラム街の人間模様を丹念に描いた作品だ。

中でも「プールのある家」は心打たれる。それは40がらみの父と6、7つほどの男の子の乞食の話で、変わっているのはこの2人が道端に座って「右や左のだんな様〜〜哀れな乞食にお恵みを〜〜」てなことをやらない、物欲しげなところの全くない点です。

その秘密はやがて明らかになるのだが、2人は始終これから建てる自分たちの家の設計を語り合っている。場所は小高いところがいいとか言うのだが、父親の話はそこでは終わらない。

「日本は台風やら地震が多い、それで強い風が当たらない山の陰とか谷間に住むようになったんだ、他にも淡い光を大切にしたいという日本的な美意識もあった」とかわけのわからないうんちくをたれます。

ここが周五郎の面白いところでうかうかしていたら読んでるこっちが「あーなるほどねー地震が多いから谷間に住んだ方がいいんだあ〜〜」と説得されてしまいます。

もちろんそんなことはない。谷間に住んだら地震の際の山津波で飲み込まれてしまいますよ。

それはそうと2人の食料は子供が夜中に飲食店や飲み屋を回ってもらってきた残飯なんです。

親父はローストビーフの切れ端を食べながら「このねー生の肉なんだけど、ドイツやフランスでは牛の肉は生で食うんだぜ、玉ねぎや月桂樹の葉をレモン漬けにしておいてその中に肉を押し込んで、玉ねぎのみじん切りとスパイスを乗せて黒パンと一緒に食べるんだぜ」とか無意味なことを言う。

まああれですね、これはつげ義晴の「無能の人」みたいな話なんですね。大した能力もないくせに普通の生活には馴染めない、他の人とは打ち解けられない、まあエセインテリみたいな人たちですよね。

 


2019-09-26 10:51:00

文春新書から今泉忠明の「猫脳がわかる」が出た。

面白いのが猫には地震を予知する能力が備わっているのではないかという例の疑問への今泉の答えだ。今泉は阪神淡路大震災前のネコの行動を大量に調べて、結果「猫には地震を予知する力があると確信するに至った」という。

なんでも阪神淡路大震災では調べたネコの4割に地震前急に慌てたり、騒ぎ出したり、飛び上がったりという行動が見られた。これは地震に際して地下で岩石が擦れて砕ける時にでる微量の電流を感じ取っているからではないかととのことだ。

まあこの手の話は以前からあって、「猫や犬は裸足だから地震前に地表を走るわずかな電流を直接感じ取ることができるんだ」と言われてもね〜〜〜〜

家猫はダメだろうし、都会は地表がアスファルトやコンクリートで覆われ尽くしているからね。今泉先生にはぜひとも大量の野良猫を露天で飼育してその「確信」とやらを実証してもらいたいものだ。

それにこれもよくあることなんだが今泉はネコ至上主義者ではないかという疑いがある。ネコを見つめていたら喧嘩する気もなくなるし、ひいては世界の平和につながるとか、香箱の猫をなでていたら骨折がいえて立てるようになったとか、その手の贔屓の引き倒しに近いのではなかろうか。

うちの猫は去年の高槻の地震の時は二階の嫁の部屋に居たんだが、話によるとぐーぐーガーガー寝ていて、揺れとともにガバーと起き上がって部屋ん中を走り回っていたというからまー仕方ない。

 


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