Welcome

古本屋日誌

2022-11-30 21:37:00

磯田道史が中公新書から『日本史を暴く』を出した。

 

磯田が若い頃から励んでいた古文書読解の成果を縦横無尽に披露した本だ。

 

坂本龍馬の遺著を見つけたり、孝明天皇が死ぬ直前の病状や医者の処方を書いた文書も見つけたりしているのだから、その目利きぶりは大したものだ。

 

 

それはそれで面白いのだが、磯田は以前から面白い比喩やフレーズを好んで使う。

 

今回は「サミット・クラスターの韻」だ。

 

これは磯田道史の造語で、徳川時代と現代も将軍やら大統領、首相など政権のトップは、伝染病に罹患しやすい。

 

なぜとなれば、トップは下からの報告をいろんなケースだ受けなければならず、ために保菌者と摂食するケースが増加し発症してしまうからだ。

 

さらに磯田道史は

 

「『歴史は繰り返さないが、よく韻をふむ』という格言がある。歴史上、全く同じ事件は起きないが、類似したことがしばしば繰り返される。」と書く。

 

徳川将軍はほとんどが天然痘にかかっているし、現代でもトランプ大統領やイギリスのジョンソン首相がコロナに感染したことを例に挙げている。

 

なるほど確かにそうだよなあ。

 

でも「歴史はよく韻をふむ」てほんまにこんな格言あるんだろうか❓

 

 

これも磯田道史の制作ではないかと疑っている。

 


2022-11-29 12:30:00

詩人の寺島珠雄の書簡集が2018年に金沢の出版社の亀鳴堂から出た。

 

寺島は釜ヶ崎や尼崎に長らく居を構えて大阪に関するエッセイ「私の大阪地図」や雑誌「大阪春秋」への投稿でもよく知られている。

 

阪大の宮本又次が、大阪の食い倒れの真骨頂は材料を始末して無駄にしないことだし、安くてうまいものを食わせるところにあるといったお決まりの大阪論を長々と書いていた。

 

寺島は早速、材料を厳選して無駄にしないのは貧乏人はみんなそうだ。何も大阪に限ったことではなく、東京でもおんなじだ。

 

安くてうまいものを食わせるというが、材料代、手間賃、場所代を考えたらそんなことあるわけがない旨の反論を掲載していた。

 

誠にその通りなんだが、宮本又次からの反論はなかったなあ。

 

阪大の学者て、所詮はその程度なのかもしれない。

 

さてこの「寺島珠雄書簡集」には彼が第一詩集『わがテロル考』を1976年に出した時の出版部数のことが書いてある。

 

なんでも500部刷り、そのうちの150冊は著者分だったというのだ。

 

つまり150冊は寺島が知り合いや先輩などにタダで配ってご講評をいただく体のものだったわけだ。

 

確かにこの本は寺島にとっては2冊目で大して名前も知られていない時期のものだから仕方がないのだろう。

 

現在この詩集は1万くらいすると思うけどね。

 


2022-11-28 12:00:00

昭和33年から35年にかけて小学館が「図説日本文化地理大系」全18巻というシリーズを出した。

 

箱入りの大判で日本各地の風景や地質についてたくさんの写真を交えてまとめたものだ。

 

 

月報もついていて、60年をけみした今日では、資料的価値も高い。

 

 

その中の「兵庫、大阪」の巻の月報には今東光の「大阪人気質」が載っている。

 

 

「寝ても、さめても、金、金、金と金を追ひ回して暮らしている大阪人が女と美食に目が無いのは当然なのだ。

 

何となれば人間の本能にだけ生きる限り、彼等は美女と美食を購ふものは金だけだと諦観しているからだ。

 

従って大阪人一般の教養の低劣さは我慢がならない。

 

男がそのように低級だから、女もまた低脳が多い。

 

大阪で文化が育たないと言われる所以であらう。

 

大阪が世界の商都と称せられるには、大阪人がより知性と良識を発達させなければならない。

 

 

民度の低い商人の町は蚤の市とあまり大差はないのだ。」

 

 

今東光は天台宗のおっさんで、河内の寺の住持を務めていた。

 

例の「悪名」や「河内風土記」シリーズで、大阪の人情をあれこれ書いていたのだが、本音としては飽き足りないものがあったようだ。


2022-11-27 16:31:00

東京都の人口は1400万くらいで、古書組合に入っている古本屋は600くらいある。つまり2万3千人あたりに一軒古本屋がある計算だ。

 

京都府は250万くらいで古本屋は120ぐらいだ。これは2万8百人に一軒。つまり東京を凌いでいる。

 

マスコミや出版社、テレビ局にたくさんの大学などの教育機関を独占的に抱える東京は古本の需要も高く、古本屋がたくさんあるのは至極当然だ。

 

京都は、確かに大学はかなりあるけど、東京の比ではないし、そもそも出版社、マスコミなど皆無に近い。それでいて、これだけの古本屋があるのは驚異だ。

 

 

人口150万の京都市に限ると、古本屋は110軒であり、実に4500人に一軒の割合だ。

 

 

従って俺としても、仕入れは京都でやったほうが効率がいいことは明らかで、いろいろ手段を駆使して本を仕入れたいとあらためて思ったよ。

 

参考までに大阪府は人口は880万、古本屋は150だ。5万8千人。兵庫県は540万で、80軒だ。6万7千人。

 

 

この辺は取り立てて不思議なことではない。


2022-11-26 21:08:00

自分で商売していると、日によって売り上げがかなり変わってくる。

 

たくさん売れる日もある一方で、ほとんど注文が入らず、無聊をかこつこともしばしばある。

 

そういった時、俺は人間ができてないから理由をあれこれ考えてみたり、去年の同時期データを引っ張り出して眺めたりと無駄な行為に励む。

 

Amazonでの販売には毎月5,000円余りしかかからないし、このホームページは月に千円程度だ。

 

その程度でもクヨクヨ悩むんだから、コレが店舗なんかを構えでもしたら大変な心労だろう。

 

 

去年講談社から出た寺尾文孝の「闇の盾」を読んでいると、バブル崩壊で多額の借金を抱えて悩む話がある。

 

 

「私は当時、二百数十億円の借入金を抱えていた。

(中略)

地獄のような日々と人は言うけれど、じたばたしても何も始まらないと諦観していた。

 

その日のことが終われば、何も考えずに夜は眠る。次の日の朝、目覚めてからその日のことや考えればいい。そう切り替えて毎日を送っていた。」

 

なるほど、理屈はわかるが、そんなお気楽なことなど、普通はできるわけがないよな。

 


1 2 3 4 5 6