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古本屋日誌
古本屋の最大の課題はいつも仕入れだ。
仕入れ先はそんなにないから、いつも探しているわけだ。
先日古書組合に加盟している知り合いの古本屋と話をする機会があった。
「組合がようやっている、業者の市なんやけど、写真で見てたら40〜50冊を、ひぼで結わえて『さあ〜なんぼなとこうてくれ❗️』みたいな形でやってるよね。あないにぎょうさんこうて、全部は売れへんやろし、どないすんの❓」
「それはな、悩みの種なんや。俺んとこもな、店もってるわけやない。おまはんとおんなじ、通販専門や。
市で結わえたある本の束落とすやろ、そんなかで要る本ゆうたら数冊なんや。
もうあれやな、川で砂すくうて砂金取り出すようなもんや。いっつもアホらしなってくるわ」
「そうなんや、ほたら、その要らん本はどないすんの❓
店があったらワゴンとかに押し込んで50円均一とか100均とかで売れるやろけど、通販やったら馴染まない本がようさんあるやろ」
「それはな、欲しい数冊取り出したらな、またぎゅーうてくくってな、すぐさま業者の市にだすんやわ」
「えーだれぞこうてくれはる古本屋あんのん?」
「あかんこともあるし、売れることもあるんやけど、あかなんだら、潰しにして処分するわけよ。
処分するのもわしらは業者やさかい、市にただで引き取ってもらわれへんよって、車に積み込んで国道沿いの処分場までもていかんなんさかいめんどくさいわ」
このところ古本屋の閉店が続いている。三ノ宮の「カルボ」、梅田の「汎書店」、京都の「津田書店」、千林大宮の「尚文堂」など。
また閉店はしないが、京都の「梁山泊」が街中から大津の比叡平に移転したり、天神橋筋の「駄楽屋」は同じビルの一階から三階に移転したりしている。
理由は店をやるメリットがあまり無いことだろう。
固定費や人件費が必ず請求されるのに、売上はコロナ騒ぎもあって低迷している。それに対し、通販での売り上げは好調だ。
つまり店舗など閉めて、安い倉庫をレンタルして通販に切りかえた方が効率がいいということになる。
その中で一箱古本屋という経営スタイルがある。
大阪では文の里の「みつばち古書部」、阿倍野の「七味」がそれだ。
いずれも本を出品する人を、本箱一箱につきいくらいくら出してもらう契約で募り、運営していくスタイルだ。
例えば一箱につき月に5000円、売上の5%を納めるという感じだ。
このスタイルならとりあえず毎月安定して資金が入ってくるメリットがある。出品者が10人なら毎月5万、20人なら10万だ。
これは実にありがたいことなのだ。
古本屋の店舗を新しくやる場合、当初はなかなか周知されないから、客も来ない。
なんとか盛り上げようとイベント(読書会とか、人脈を駆使して著者を招いたりとか)を企画したりもするが、手間もかかる上に、そんなにいくつも打てるわけでもないから、尻すぼみになってしまう。
その欠陥を補おうと考え出されたのが、一箱古本屋システムなのだ。
ただ問題もある。
店の立地が繁華街でないことが多い、そのため客は時代小説やベストセラーを求めているのに、売っている古本は古い文学書だというミスマッチが起こる。
また価格がネットのそれになっていて、明らかに割高なのに、気づかず販売を続けてしまい、ほとんど売れないことも起こる。
店主が本の補充に熱心でなく、いつ行ってもおんなじ本なので、すぐに飽きられてしまう危険がある。
店主はリタイア組で、のんびり商売したい、売れても売れなくてもいいやという姿勢の人も当然含まれるからだ。
今日から谷町四丁目の大阪古書会館で古本市、早速行ってみた。
今回は先月で店を閉じた汎書店がたくさん出品していたのが目についたくらいで、それ以外はあんまり変わらない印象だ。
朝は30人くらいで、いつもよりは多い。
入り口には検温と同時に手指の消毒ができる機械が置いてあって、一人ずつおとなしく検査をやっているのが、バカバカしくて面白かった。
古書会館のすぐ南に、先月、居酒屋「酒米」ができた。魚料理を中心にうまい清酒を飲ませる店だ。
もともと夜しかやっていなかったのだが、ついこないだから、お昼のランチもやるようになった。
ランチも魚料理がメインで、午前10時前には店の前の歩道に「本日のランチ」の看板が出ていた。居酒屋の出すあては、だいたい間違いなくいい加減だ。
酒やビールで十分利益は出せるし、酔っ払いは味音痴もたくさんいるから、適当なものでも文句は言わないからだ。
しかしこの「酒米」に限ってはそれはあてはまらない。
「呑んで、食べれる店」なのだ。
さて、肝心の古本市。
京都のシルヴァン書房は雑本、唯書房は大阪の本、新書、新左翼本。真木は大量の小学館文庫と新書。横丁は雑本と和本。杉本は岩波、ちくま、講談社学術文庫。矢野は文学書。ディックはSF。汎は雑本の新書、文庫。寸心堂は海外の文学書と文庫。厚生は雑本と文庫。象々は雑本と文庫。
いつも思うのだが、この古本市の値段は普通だ。
大阪の大規模な古本市、天王寺さんや天神さんに比べると割高であることは間違いない。
大きな古本市に参加している古本屋は、なんらかの手段で大型の顧客を、売るにせよ買い付けるにせよ確保できているからだ。日常的に十分な利益を出せているから、古本屋では文字通りのバーゲンセールができるのだろう。
寺尾文孝の『闇の盾』は権力者などから持ち込まれるトラブルをあらゆる手段を駆使して解決する話だ。
その中に山口組5代目渡辺の話がある。
「神戸市内のゴルフ場でプレーしていた渡辺組長らの一行は、プレー中の前の組にポールを打ち込んでしまった。
渡辺組長の前を回っていた面々は、大阪で会社を経営する社長たちの一行だった。
相手が誰かも知らず、「失礼なやつだ」と渡辺組長らを待ち構えていたという。
「おい、失礼だろう」そう言ったとたん、組長の警備のため周囲に潜んでいた組員が社長たちに殴りかかり、重傷を負わせてしまったのである。」
ということで呆れるしかない話だよなあ。
これまで「ヤーさんはな、下っ端はややこしいけど、えらいさんは物腰も柔らかで、揉めたりせーへんねんで」てな話を爺さん、婆さんから何度か聞いたことがあったが、当然それは与太話だということだ。
兵庫県警は捜査を進めて、渡辺に逮捕状を出す。
山口組は辣腕の弁護士を求めて著者に頼み込み、著者は
「『吉嶋さん(知り合いの弁護士)それは受けてあげなよ。日本の法廷は殺人事件でも弁護士がいなければ裁判を開けないわかだし、今回の件、私は報道でしか知らないけど、警察もちょっとやりすぎな気もするよね。あんたがいいと思ったら、やってあげたら』
私のひと言だけが決め手でもないだろうが、吉嶋さんも踏ん切りがついて、渡辺組長の依頼を受けることに決めた。(中略)
暴力団の現役組長の逮捕ではほとんどの場合が実刑となり、刑期も短縮されず満期を勤めるが、驚いたことにこのときは、吉嶋弁護士の奮闘によって翌日、保釈されたのである。」
大藪春彦は角川文庫や新書本でバイオレンス小説を量産していた。
細かい銃器の蘊蓄は、俺は何の興味もない。ただそのワンパターンでお決まりのストーリーは魅力的だった。
強欲な金持ちは常に豪邸で女と情事を楽しみ、そこへテロリストが現れ、見苦しい命乞いをする金持ちを無慈悲に射殺する話だ。
バカバカしいよなあ、そんなバカで無警戒な金もなんかいるのかよ❗️とかツッコミながら読んでしまう。
金持ちが権力にものを言わせてあれこれ不正をすることもいろんなドラマや小説で描かれてきた。
バカ息子やバカ娘が交通違反したら、息のかかった署長に電話して揉み消してもらう。
銀座に220坪もあるまとまった一等地の出物があるが、手元に金がない。配下の頭取に頼んで無担保で25億融資して、土地を手に入れる。
しかし本当なんかな❓との疑念を挟まずにはいられない。
いくらなんでもバレたらただでは済まないし、身内から裏切るやつなんかいくらでも出そうだから、危ないにも程があると思うのだ。
しかし、それが、実際に行われていることを細かく記したノンフィクションが去年出た。
「日本リクスコントロール社長」を称する寺尾文孝の講談社刊、『闇の盾』だ。
なんでも政治家から芸人、経営者、宗教団体とあらゆる有象無象から持ち込まれる相談事を解決する会社の代表だという。