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古本屋日誌
現金(げんぎん)で支払う必要がかなり減り、ICカードや電子マネーでサクサク決済できるのは爽快だ。
以前は484円などという支払いで千円出そうものなら1円玉やら5円玉やらがジャラジャラ掌に乗せられ、落としそうになるわ、財布に入れたらパンパンになるわで不快だった。
コンビニのレジでは若い女の店員が、俺みたいな訳の分からない中年男の掌に硬貨を置かないといけないのは苦行ではないか❓
そんな目で店員を見たら、確かに目を背けているような気がする。
やっぱりな、それはわかる、よーくわかる。
でも客商売なんだからもっと真面目にやってもらいたいものだとか、全く意味のない妄想をへめぐらしていたものだ。
今やスマホの画面を差し出すだけだからアホな妄想の出番もなくなった。
ただ、バーコード読み取りが下手くそな店員がいるのはイライラさせられる。
読み取り機をスマホのバーコードにかざすのだが、あまりにも速く引き上げてしまうために、読み取れない。
「あんた、速すぎるで、なんぼなんでももうちょっとかざしとかなんだら、あかんやろ」
ゆうて、女は再度やるんだが、また速すぎて読み取れない。
「お客さんのスマホ、あかんのちゃいますか❓」とかゆうてくるから笑わせるぜ。
お客さんから西村賢太が「本の雑誌」にずっと連載していた『一私小説書きの日乗』のセットを買い付けた。(単行本7冊と未収録分が載っている「本の雑誌」全部)
西村は2月の5日に亡くなっているのだが、3月号にはその直前の1月7日までのが載っている。
2021年の12月19日に気になる記事がある。
西村が初めて「スポンサー付きの小説」を引き受けたが、あれこれもめる話だ。
「作中で煙草を吸いまくる主人公の年齢が何やら問題になっているらしい。
すでに原稿料は振り込まれ、全額費消してしまっているので、伏せ字という伝統的手法で問題を解消し、再提出。
今回初めてスポンサー付きの小説を引き受けたが、厄介也。」
スポンサー付き小説なんか、いろいろ束縛の多いものだし、相手のリクエストに答えなければならず、よく引き受けたものだ。それだけ金に困っていたのだろうか❓
原稿料にしても帯封で手渡されたものを、開封して使ってしまったというなら、美学として返しにくいかもしれない。
でも振り込みなんだから、金子を返そうと思ったらいとも簡単だろう。それなのに「全額費消してしまっている」という意味がよくわからない。
西村賢太は芥川賞以降、夥しい収入があったはず。それなのに、スポンサー付き小説だの、「全額費消」だの、実に面妖だ。
また大晦日は乗り鉄よろしく、在来線を乗り継いで大阪まで来ている。
そして
「ビジネスホテルをおさえたあと、繁華街に出て早々に飲食。
雄心も起きぬまま、狭き室にて静かなる年越し。」
とあるのも不思議だ。
天下の西村賢太が大晦日、旅先の大阪で、ビジホの「狭き室」て、よくわからない。
大晦日だし、コロナ騒ぎだし、いくらでもちゃんとしたホテルが取れると思うのだがな。
今日はあの有名な神戸古書会館で古本市だ。
重たい古本を扱っているのに、2階に本を運ぶエレベーターすらない不思議な会館なのだ。
このご時世だいたいの本はAmazonで検索したらたちどころに見つけられる。
わざわざ神戸まで出向いて本を漁る意味はあるのだろうか❓
もちろんある。
それはこの古本市には尼崎の「図研」が参加しているからだ。
この古本屋はいろんなパンフレットや雑誌を扱っている。
今回の古本市でも
『ヌードショー OSミュージックホール、クリスマスプレゼント、B5判16頁、東宝株式会社関西支社、1954年の12月13日、1500円」
とか
「紀元二千六百一年記念公演、第16回春のおどり記念帳
大阪劇場、非売品 横綴60頁、昭和16年4月10日、2000円」
とか面白そうなのが並んでいる。
こういうパンフレットや限定本は実際に手に取って状態をチェックしたり、中身や目次を眺めたくなる。
また、昨日は高槻で古くからの友人と飲んだ。
年齢は71なのでだいぶ年上なんだが、すこぶる健康体で、病気や体調の話は全く出ない。
今日も串カツ屋で紅生姜、牛カツ、豚カツ、アスパラなど15本くらいに、山芋のお好み、きのこの天ぷらなんかをあてに、生ビールを3杯、酎ハイを2杯飲んでから、馴染みのバーに移動した。
会社を60で定年退職してからは
「仕事はしてないな。一日ひま。」
「ただな、私学の中学や高校に非常勤の先生を派遣する仕事をしたろ思て、やってたんやけど、なかなかええ人は見つからんし、今はな、中学や高校が自分とこで先生を見つけよんねん。せやし、ちょっとも、もうからなんだわ」
とのことだ。
彼の奥さんもすこぶる壮健であられて、普段は喫茶店でケーキなどを作る仕事をしている。
帰宅して、毎日500ミリのロング缶を2缶、料理をしながらきこしめすとのことだ。
クッキングが終わる頃には飲み終わり、食事時には酎ハイをさらにお飲みになるとのことで、驚くほかない。
うちの飼い猫、雄のカイは8つなんだが、かなり禿げている。
人間でいうと50くらいなんだそうだが、腹まわりはすっかり黒い毛が抜け落ちて、白い和毛になっているし、左の後ろ足あたりもほぼ毛なし。
医者に連れて行こうとしたが、大暴れして果たせず、結局患部の写真をスマホで撮影して診断してもらった。
「これね、気になって舐めてしまうと和毛が抜けてしもて、どんどん禿げが広がるのよ」
「ストレスかからんように、好きにさしといたらええよ」との診断だった。
それで外へ出たいといえば、なんとか出してやり、おいどを叩いて欲しいといえば頑張って叩いてきた。
しかし先日のみが体にかなりいることがわかった。
ブラシの上に透明なプラスチックのちりとりのようなものがついたのみとりグッズで、身体をくまなくくしすいてみたら、昨日だけで10匹からのまるまるこえたのみを捕獲した。
のみに血を吸われるので、全身痒みで舐めたり、皮膚を噛んだりしていたのではないかと思うのだ。
こだまの『ここは、おしまいの地』には中学生時代に付き合ったヤンキーの話がある。
同じクラスの金髪の、100キロ以上あるヤンキーで、小学生を脅して金を巻き上げたり、平気で万引きしたりするという。そういう男と付き合っているのが、クラスにも、知られることとなりいじめが始まる。
「わたしの机にガムテープで『豚』という文字が貼られるようになったのだ。
カタカナじゃないところに執念を感じた。
朝登校すると、まず机上のガムテープをびりびりと剥がすところから始まった。
好きではないのに、クソ。全然好きではないのに。クソが。そう心の中で吐き捨てながら剥がす。
(中略)
傷ついた顔を見せてはいけない。それを確認したくてうずうずしている人間がいるのだから。
私は落書きに気付かぬふりをして着席し、しばらく俯いた。
そして心の中の『せーの』のタイミングで、バッと顔を上げた。すると教室にいた男女十数人が私の反応を愉しむように薄ら笑いを浮かべていた。
全員かよ。
呆気にとられた。」
中学生ながらその分析力は大したものだ。
漢字で豚と書いてあるのに「執念を感じた」というあたりなど、ちょっと余裕すら感じられる。
わざと俯いて、クラスメートのどの程度がいじめに加担しているかチェックしよとも企てるところも、頭のよさというより、余裕みたいなものの現れと思う。