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古本屋日誌
講談社現代新書から渡辺勉の「世界インフレの謎」が出た。
欧米のインフレは前年比1割を超えるもので、日本はそれに比べたら大したことはないとはいうものの、かつてなかった高率の3%だ。
日本の場合は円安が続いていて、輸入価格が上昇していることで、説明がつく感じだが、欧米諸国があんなにインフラに見舞われている原因がよくわからない。
たしかにロシアの侵略戦争で穀物価格やエネルギー価格が上がるのはわかるが、それにしても年率10%を超えるのは異常だ。
渡辺はこの本で真の原因は他にあるというのだ。
それはすでに3年に及ぶコロナ騒動だという。
渡辺によれば自粛の波が全世界に等しく及び、サービス業(ホテル、旅館、観光、エステ、ジム、飲食、風俗、あまりにも多い)に客が来なくなり、逆に通販で物を買う頻度が増えたという。
そのためモノへの需要は高まっているのに、生産が追いつかない。
これが一つ目の原因だ。
そしてインフレの二つ目の原因なのだが、モノの生産を掌る労働者は3年にも及ぶ自粛で、在宅勤務になったり、問題なのは働き方のスタイルを変えてしまって工場などの生産現場から退職してしまったりしているのだ。
つまりモノの生産に必要な労働力が確保できないということだ。
そして三つ目なんだが、グローバリズムの衰退にあるという。
コロナ前はグローバリズムの進展で国境はなくなり、効率第一で生産地と消費地を最短で結ぶ取り組みが、全世界的に押し進められていた。
ところがコロナを経て、その危険性に懲りた企業は、たとえコスト高になろうとも、自分たちの管理の目が届く近場の国々に生産拠点を移しているという。その過程でコスト増が生じているのだ。
なるほどね、渡辺の話が正しいとするならばグローバリズムのリコンストラクションが一段落するまでは、世界的なインフレは収まらないということになる。
古本市は初日に行く人が多い。
古本屋の方も初日にいい本を並べることが多いから、お目当てにで会える確率が増すということだ。
しかし皆考えることはおんなじだから、初日は大変な人出でどの店の本棚も人だかりができて、ゆっくり選んでいる余裕はない。
本棚に目を凝らしてお目当ての本を探していても、横手から人がどんどん近寄ってきて、自分が探している本のあたりをチェックしたがっているのがわかる。
場所を譲らず、いつまでも頑張ってる人もいるけど、精神的に疲れるから、勢い集中力も途切れがちで、本をみすみす見逃してしまうことにつながるわけだ。
面白い本や興味深い作品はいくらでもある。
人類が文字を生み出して5000年以上経っているわけだから、自分の知っている本なんかたかが知れてる。
だから古本市は初日でなくても、2日目、3日目で十分楽しめるということだ。
人が少ない分、ゆっくり本に目を通すことができて、内容も把握できるのだ。
今日3日目は月曜日で、百万遍の人出は少なくいろんな本をじっくり読むことができた。
その中に昭和41年に大阪新聞社が出した「大阪食べ歩る記」があった。全然知らない本なんだが、偶然手に取ったものだ。
大阪のその当時のグルメ本で、長谷川幸延、宮城まり子、大村崑、中村珠緒、南都雄二、曽我廼家五郎八らが、自分のおすすめの店を紹介する一文を寄せている。
そのなかでただ一人、宮城まり子だけが大阪弁で書いているのに驚かされた。
「(南区千年町にあった鉄板焼きの「万清」を紹介する)なにしろ夜中の一時までお店があいているさかい便利ですわ。
大阪の劇場に出てて、ホテル住まいをしていたら舞台がすんで、何か食べたいと思ってもホテルのレストランは締まってるでしょ。そんなとき、ここへ行きますねん。
分厚いお肉に、ぎょうさんニンニクのせてジュッと焼いたん食べたらあしたの舞台の活力が出てくるみたい。
お肉はヘレばっかりで、「何グラム焼きましょ」ときいてくれるのも良心的や。」
宮城まり子の大阪弁など思いもよらないところだ。
Wikipediaで見たら彼女は東京生まれなんだが、三つからずっと大阪育ちなんだとある。