Welcome
古本屋日誌
今日は快晴で再び天王寺さんに出向いた。
昨日が初日だったが強い雨で均一の安い商品棚はブルーシートがかかったままで販売されなかった上、午後からは突風でテントが巻き上げられそうになったために早めに営業をやめたそうだ。
だから実質今日が初日なのだ。
滋賀の古本屋の「クロックワーク」は、レコードやCDが専門のようだが、余技で本も扱っていて適当な文庫本は1冊150円で売っている。これはかなり相場より安い。
京都から来ている「シルヴァン書房」はもともと写真(戦前の風景写真など)を専門に扱っていて、カラフルな帽子をかぶった色黒の爺さんがやっている店だ。
昨日の雨の中、テント中で1冊200円で文庫が出ていたので、さっそく2冊買い求めて、例の爺さんに支払おうとしたら、しばらく考えて「500円」という。
「えーこれ200円て書いたあるで〜」
「あーさよか、外のやつか思たんや、ほな400円な。外にな文庫1000冊くらい持ってきとんねん、しゃーあけど今日は雨で開けられへん」
さて千円札で払うと600円の釣りなんだが、100円しかよこさない。
「えー千円札渡したで〜」というと
『千円やったかな❓もう頭ぼうーてなってんねん」と言いながらお釣りをくれました。
いいよね〜こういう歳の取り方は。
さて今日なんだが快晴で爺さんの言うとおり、外の文庫台もオープンとなり、300円均一で大量の講談社学術文庫、ちくま文庫、岩波文庫が並んでいた。
値段はちょっとありえないくらい安いもので、たちまち人だかりができていた。
またテント内を見るといろんな辞書(柳田國男の民俗学辞典、森銑三の大正人物逸話辞典など)が1000円均一となっている。
また、その横の台には「千円から5000円」と書いてあって「日本の女性名」や「近世上方語辞典」「上方語源辞典」「上方演芸辞典」といった前田勇の著作も並んでいる。
これらの本の値段はそれを持って爺さんのところに行って聞いてくれ❗️❗️ということなのだ。
さらに爺さんが座っているあたりの台には「定価の3割引き、相談で」てなことを書いてある。
爺さんが言うには「もうな、値段いちいち書き込むのがめんどくさいんや」
でもね、客が「千円から5000円まで」の台に、ある本を手に取って『これ1000円のとこにあったよ❗️❗️」と言ってきたらどうするのかな。
まあそれくらいのことはかまへん、かめへんというものなんだろう。
俺も試しに「上方語源辞典」を持っていって聞いてみたら、「千円❗️」と即答。速くていいね〜
こういう古本屋はつまりは得意分野が別にあるので、それ以外の本はもうどうでもいいのだ。
まことに結構なことだよなあ。
今日から天王寺さんで古本市だ。
早速朝から行ってみた。下らないコロナ騒動で2年開催できなかったのだが、天気予報通り、開始直前の9時半くらいから激しい雨。
参加店はいつも通り。
大半は大阪の古本屋だ。
ただ、神戸から倉地、岡山から不死鳥、京都からシルヴァン、滋賀からクロックワーク、静岡から太一、奈良から五輪書など他府県からもいくつかの本屋が参加している。
100円均一は一番南にテントを設営し、雨に濡れないようにしてあった。
いつものことだが、いい本を安く売っている店もあれば、逆にネットで懸命に予習してAmazonの値段をつけている本屋もある。
一般的に言えば、いくら古本市だといっても集客は大阪周辺に限定されるから、通販と同じ価格では売りにくいことは明白だ。
でも店舗を持たず日頃から通販のみで商売していると、その値段で売りたくなるのは当然だ。
俺だってそうしている。
逆に通販しかしていないのに、いい本を安く売っている古本屋もある。
また専門分野がはっきりしている古本屋が安売りしていることがある。
レコードやCDが専門だとか、実は骨董品屋で、古本はついでに扱っているてな店なら、いちいち本の値段をネットで調べるのはめんどくさい、時間が無駄になるという理由で適当な値段をつけるのだ。
しかし無店舗、しかも本しか売っていないのに安いというのは不思議だよなあ。
これは店主の人徳だろう。
「もう、子どもも巣だったし、そんなに儲けんかてええわ。好きな本やレコードを集めて、自分も読んで、聴いてしていければいい人生だ」ということなんだろう。
実はこのお店の店主と以前話す機会があった。
「あのな、こないだの谷町の古本市でな、レジが古書ディックのおっさんと一緒やったんや。(ディックというのはSFやミステリー、探偵小説をメインに扱っている古本屋だ)
その時な、『この文庫本はこれが相場や』と『この本はちょっと安すぎる』とかいろいろ教えてもうたわ。ほんまにディックのおっさんはよう勉強してる、感心したわ」と言うのだ。
この最後の「感心したわ」はもちろん皮肉ではないのだ❗️
それがすごいよね。
こういうできた人は古本屋にはほとんどいないけどね。だいたいの古本屋の店主は一発当てたろ❗️てなことばかり考えてる。
世間ではカーボンニュートラルが、いわれている。
なんでも2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにするというのだ。
古本屋に関してはまったくありえない話だ。
通販で古本屋ができるようになって久しい。
以前は店舗を持たないと商売は出来なかった。
店に来るお客さんは近所の皆さんで、本を売ってくれるし、気が向けばこうてもくれてそれでメシが食えたのだ。
例えば京都大学の前にあった外山書店という古本屋は岩波文庫をたくさん揃えて 、店主は「この文庫だけは別格、これだけでメシが食える」と言っていた。
これはこの店主の経営努力の賜物とかいうわけではない。
京大の学生がいらなくなった本を売りに来てくれるし、また新入生がこうてくれだけのことなのだ。
左翼がそれなりの力を持っていた時代は共有すべき知識として社会科学や人文科学の特定の本ごあったというだけの話だ。
しかしそんなものは今や誰も信じていない。だから共通の教養を売り物にしていた岩波文庫は売れなくなったのだ。
しかし、こういう時代なら本は近くの人から近くの人に受け継がれて、確かに省エネ、省資源だった。
しかし現在では本の仕入れは近所の皆さんからではない。
全国いろんなところから宅急便で送ってくださったものだ。
そうして仕入れた本をまた全国に向けて販売する。
だから運搬に使う費用や資源は大変なものだ。
ほとんどトラック輸送だし、ガソリンを使うし、たくさんの人の手を煩わしている。
山里絹子が集英社新書から「米留組とアメリカ」を出した。
米留組とは戦後沖縄からアメリカの資金でアメリカ本土の大学で学んだ人たちのことだ。
これまでも「ひめゆり忠臣蔵」などで取り上げられることはあった。
沖縄の世論は反基地なんだが、反面アメリカ留学組はエリートとして扱われていて、そこに何かダブルスタンダードみたいなものがあるのではないかととも言われていた。
今回ようやく体験者のインタビューに基づくしっかりした本が出た。
地上戦を強いられてたくさんの住民に戦死者が出たわけだから、アメリカへの怒りもあるだろう。
本人は勉強に励みたいと思ってはいても、周りが「あそこの息子さんな、ヤンキーの金で留学しはるんやて、恥知らずなお人さんですよなあ」などという口さがない中傷をあびるのも心配だったろう。
そのあたりを知りたかったのだ。
本書を読むとその真実が明らかにされている。
一言で言うと、「余裕も何もなかった。嬉しかった」となる。
センスの良い研究者は貴重だ。
ネット社会の恩恵は古本屋にも大きい。
なにせ店舗など持つ必要がなくなったからな。
ネットのプラットフォームは楽天はかなり高いがAmazonは5000円くらいだし、このホームページは1000円だ。(ただ現状全然売れてない。これは問題だとおもう)
店舗を構えたら家賃、光熱水費、人件費、什器代など諸々の金が毎月発生してしまう。メリットはあるのかというと実は何一つない。
店に来た客がいていい本を売ってくれるというのは幻想で、実態は売り物にならないものばかりを持ってくるのだ。
ということで、ホームページを充実させて、注目度を上げ、注文につながるのが正しい経営だろう。
次のようなコンテンツをホームページに取り入れたい。
❶在庫の背表紙が毎日見れる
❷ネット内に仮想空間の店舗があって客が自由に歩き回れる
❸いろんな本の朗読を聞ける
❹本にまつわる謎解きに参加できる
どれもこれも簡単に出来そうだよなあ。