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古本屋日誌
寺町の「三月書房」がまもなく閉店するという。新刊の本屋なんだが、普通の本屋には置いてないようなちょっとマニアックな品揃えで面白かった。
編集工房ノアの本なんか店に入ってすぐ左の目につく棚に並べてあって、杉山平一、山田稔とか涸沢純平とか川崎彰彦とか三輪正道とか、まあ興味深いラインナップだよなあ。
他にも今はないペアトル工房の本や、身内でしか買いそうもない様々な歌集、青林工藝社のマンガ、花輪和一やら河井克夫やらが並んでいる。
店主は三代目なんだがもう歳で、後継もいないし余生をのんびり過ごしたいらしい。
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テレワークとかできるのは限られた労働者に過ぎず、飲食店や観光産業、旅行業、教育産業、娯楽産業などに従事する人は首にされたり、無給で待機させられたりしている。
ただ古本屋はこの間店舗での売り上げは振るわないものの、通販で減少を補える収益があったようだ。
うちの店でも普段は通販を利用しないだろうお客さんからの注文がある。
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淀川長治の「映画千夜一夜」上巻には悪女ものの映画の話がある。
コンラッドネーゲルの「愚か者の楽園」なんだが、ネーゲルが好きになったニューヨークのバレリーナはオリエントの王様のおめかけさんになってしまう。
女はタイに行き、その王さまと暮らしているのだが、ネーゲルはわざわざそこまで女を追いかけていく。女は来てくれた若い男にするか、それとも金のある王さまとを取るか、迷うんだが、自分の手袋をとって、ワニがいっぱいいる谷に投げてしまう。
「お取りになった人のほうに、わたしは行きますわ」
すると二人は谷に降りて行ってワニのそばで格闘を始めるのだが女はタバコをふかして笑いながら見下ろしている。
そのうち男たちも目覚めて上がってきて「お前みたいな女はいらん‼️」と言い出す。
おんなはちょっとびっくりするんだが、すぐに自分の部屋に入ってそこら中に香水やら花をまいてからあちこちに電話をかける。
「あんたといっしょになりたい❣️」「あんたといっしょになりたい‼️」するとみんなが
「ぼくのところへ来てくれ❣️」「きてくれ‼️‼️」とこうなる。
女はいそいそと踊りながら旅支度をして終わりとなる、とまあそういう面白い内容で、淀川長治によると「そういうのを昔のファンは喜んだのね」とのことだ。
そういえば畑中純にも「愚か者の楽園」というのがあったなあ。
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この本は1987年の刊行で、淀川は70近いわけなんだが、博覧強記何でもかんでもよく覚えていて、舌を噛みそうな昔の男優の名前を羅列していく。
映画は観てないと語ることは難しいですよね。淀川は何せ1909年、明治の生まれでその時から観まくっていたわけで、蓮見にしても山田にしても太刀打ちできるわけもなく、楽しいお話を拝聴させてもらってありがたいという姿勢で、これに気をよくした淀川が話まくるわけです。
たとえば、アイリーンダンの「裏町」の話をまくし立てる。
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この間の騒動で古本業界も打撃を受けて、各地の古本まつりは中止に追い込まれ、店舗での営業も休止した店がある。京都や大阪は大規模な店でない限り営業自粛は求めなかったが、神戸は小規模な古本屋にも自粛を要請したために閉めざるをえなくなった店が多い。
京都の寺町にある「三密堂書店」は老舗の古本屋で私も大好きな店だ。専門は占いのようだが店舗では漫画から文学書、社会科学の本、エロ本までバライアティに富んだ品揃えで古本屋らしいしつらえだ。
ところがここもそんなに店舗規模も大きくないのに、なぜか休業に4月から追い込まれて、しばらくは店頭の3つあるシャッターが左の文庫の棚のは完全に閉まり、センターの入り口のは半分くらい開いていて、一番右の単行本の100均棚があるやつは完全に開いている状態だった。また店舗の前には定期的に発行しているカラーの目録冊子がスチールのカゴに入れて並べてあって「自由にお持ち下さい」とあった。
これって店で買い物したい人は入ってきてもかまへんで〜〜「お上や世間さまがやかましいさかい、うっとこもこないこないさしてもうてますねん、すまんなあ」という強烈な自己主張を感じましたね。
それはさておき、店舗を開いていても大した売り上げのない店は閉じて国や自治体からの支援金を貰った方が、得になるという計算もあるんだろうけど、三密堂なんかはそうでもないだろうし残念だよなあ。
ようやく、なんたら宣言なる、それこそ不要不急の措置が解除となって、さて店を再開しましょうかとなるだろうかね。わしは懐疑的ですな。
店を維持するには人件費がすごくかかるし、地代もバカにならない、その上、客はもともとあんまり来ないし、この間はゼロになって当面戻りそうもない。つまりもう店はやめて、やるにしても通販に改めるか❗️となってしまうだろう。
古本市にしてからが、初日なんかはすごく人が多くなるし、それを避けるために入場制限やら、整理券を出すとなると手間が増えるだけで何の得にもならない。
考えてみたら古本市のためにものすごく重たい本の大群を毎回運び込んで、販売してさらに撤収する作業はペイしているかどうか誠に怪しいものだ、てな感じになって古本市ももうやめようかとなるだろうよ。
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