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古本屋日誌

2024-05-17 19:00:00

今日から谷町4丁目の古書会館で古本市。さっそく朝から行ってみた。

 

天気もよく、暑くもないという不思議なコンディションだった。いつもの年なら、すでに30℃近い気温になって、汗だくだろう。

 

文学書の矢野書房、洋書の寸心堂、SFのディック、均一本のシルヴァン書房、古地図などのアジア号のほか、真木、汎、古本横丁などがいつも通り参加していた。

 

驚いたのはシルヴァン書房の店主が朝から会場にいたことで、俺の記憶ではこれまでなかったことだ。80を超えてもお元気そうで「このへん、半額やで〜」と宣伝しておられた。

 

 

ありがたいことだ。

 

でも、8月の下鴨の古本市には参加しないそうで、さすがにあの暑さは身体に応えるのだろう。

 

 

こないだ亡くなった唐十郎の著作が、目立つところに置いてあったが、やはりこないだ死んでしまったキダタローの本はなかったな。

 

 

キダは保育社のカラーブックスから『コーヒーの店 大阪』を出していて、5000円くらいするのだが、キダが在命のころAmazonの出品数を見ると25となっていて、今日また確認したら23だったな。

 

 

普通は訃報が伝えられると、注目が集まり、どの通販サイトでも在庫がなくなっていくのだが、そうならない。

 

 

ちなみに日本な古本屋サイトの在庫は1冊だけ、ヤフオクも1冊しかない。

 

 

つまりAmazonが圧倒的にたくさんの本を独占して出品しているというわけだ。

 

それにしても20冊以上も在庫が積み上がっては、5000円では売れないだろう。

 

 

キダがこの本を書いたのはずいぶん前だから、現在では潰れてしまった喫茶店もたくさんある。

 

 

だからガイドブックとしては意味を持たない。

 

 

30年とか40年前の大阪の喫茶店事情に興味をもつ中高年しか購買層はいないだろう。


2024-05-16 12:57:00

本居春庭の伝記である『やちまた』を書いた足立巻一は、あれこれエッセイも多い。

 

編集工房ノアから出た『学芸の大阪』もその一つだ。

 

 

ここには近松門左衛門の墓に関する話がある。

 

 

墓所としては谷町にあるものと、伊丹にあるものが有名だ。

 

谷町のは、そこにあった寺が移転してしまい、今は参道も狭くてフェンスに囲まれた無惨なものになっていることはよく知られている。

 

 

伊丹のも、きちんとした管理は行われず、明治時代半ばには「そこで近松が浄瑠璃を書いた」と伝わる「小堂」が残っていたが、後継問題による財産争いで造作なく解体されてしまったというのだ。

 

 

 

浄瑠璃では近松は確かに有名だが、それは現代人の価値観によるもので、徳川時代は近松半二、並木正三や五瓶の方が有名だった。曽根崎心中など、ほとんど上演されていない。

 

 

でもそれにしても、大近松ゆかりの建物を、くだらない財産分与問題なんかで解体してしまうとは、バカばかりだよな。

 

 

石山寺なぞ、「源氏の間」があるんだぞ‼️(ウソだけど)


2024-05-15 15:50:00

昭和18年に錦城出版社から『随筆大阪』という、大阪に関する作家のエッセイ集が出た。

 

 

その劈頭に、宇野浩二が「大阪のありがたみ」を論じている。

 

 

宇野はキタのアサヒビル10階にある洋食屋「アラスカ」からの眺望の素晴らしさを論じ、周りに緑なす山々を持っていて、清々しい上、郊外電車で名所旧跡に立ち所に行ける便利さを讃えるのだ。

 

 

これは実にその通りで、鶴橋からものの30分、特急に乗れば東大寺でも唐招提寺でも薬師寺でも簡単に拝観できるし、梅田から阪急で箕面までもその程度で行き着ける。深山幽谷といっても過言ではない澄んだ大気の中ハイキングを、箕面の滝まで楽しめる。

 

 

南海電車に乗ったらさすがに1時間以上かかるものの、和歌浦の雄大な風景を楽しみながら釣りを楽しめる。

 

神戸方面も、岩登りできる芦屋のロックガーデンなんかすぐだ。

 

 

もちろん京阪電車に乗れば、50分くらいは要するけれど、清水、南禅寺、相国寺、御所であれ、なんであれ、立ち所に行き着けるのだ。

 

 

東京にこういう素晴らしい名所は、ない。

 

わざわざ新幹線に乗って、高い金を払い、京都の味ない(不味いという意味の大阪弁)ご飯をありがたがるしかないわけだからかわいそうだよな。

 

 

俺は大学受験に失敗して、大いにヒマが出来たので、バイトで貯めた金を使わな損だと、手始めに石山寺に参拝してみた。

 

 

ここは紫式部が『源氏物語』の構想を練ったと伝えられている旧跡で、1980年の春、「源氏の間」と称する小部屋を外から覗き込むことができて、文机が置いてあって書きかけの和本と硯に筆があったよ。

 

 

なんでもその、建物は徳川時代のものだそうで、バカバカしい限りだけど、(いかにも京都らしいよなあ、歴史の捏造なんやけど、これはこれで立派なサービス精神だよなあ)と思って、鬱屈した心が慰められたよ。


2024-05-14 21:19:00

児玉真美がちくま新書から『安楽死が合法の国で起きていること』を出した。

 

これはびっくりするような本で、常識を覆す内容なのだ。

 

 

もう重篤で助からないとなれば、苦痛を増すだけの治療はいらない、安楽死する権利を認めて欲しい、とぼんやり普通の人は考えているものだ。

 

でもオランダなど、安楽死が認められている国では、その範囲がどんどん拡大していて、障害がある人を、「人間らしい生活が送れない」などとして安楽死させて、その臓器を移植しようという動きがあるという。

 

 

確かに「積極的な延命行為はいりません」と考えて、医者に書面で提出しても、気持ちは揺れ動くものだし、「それでも頑張ってみたい」となった時にその希望が聞き入れられないとなれば問題だ。


2024-05-13 11:23:00

武田百合子の本は、今月も中公文庫で『対談集』が出た。

 

 

『富士日記』や『犬が星見た』なども次々新版が刊行されていて、活字が大きくなり読みやすくなった。

 

 

ロシア旅行記である『犬が星見た』の単行本は1979年で、1200円だった。半世紀近く前だが、本は安いね。

 

 

今なら2000円くらいだろう、あんまり値上がりしていない。

 

 

この本では、銭高組の会長の老人(80)も一緒に旅をするのだ。その大阪弁を武田はうまく書き残していて面白い。

 

 

地元では大阪では、周りの人たちが集まってきて、なんでもやってくれるので、嫌になった。ということで、武田らとの(夫の武田泰淳や中国文学者の竹内好ら)ごく普通の団体旅行に参加したというわけなのだ。

 

 

ロシア内陸の6月はひどく暑く、40℃に近づくこともあるし、バスに揺られて悪路を何時間も移動することもある、それをこの銭高老人は、あれこれ文句を言いながらもこなしていく。

 

 

そういえば、学生の頃麻雀にはまって、毎週雀荘に出向いて仲間と打っていた。

 

 

その中にある会社の社長だという人がいて、常に負ける。

 

 

5万くらい毎回負けてくれるので、雀荘に払うしょば代も出るし、お小遣いももらえる状態で、遊びというよりアルバイトみたいなものだった。

 

 

この人も「会社では俺のことをみんなちやほやして、まともに扱ってくれへんのよ」とゆうてたな。

 


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