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古本屋日誌

2024-05-15 15:50:00

昭和18年に錦城出版社から『随筆大阪』という、大阪に関する作家のエッセイ集が出た。

 

 

その劈頭に、宇野浩二が「大阪のありがたみ」を論じている。

 

 

宇野はキタのアサヒビル10階にある洋食屋「アラスカ」からの眺望の素晴らしさを論じ、周りに緑なす山々を持っていて、清々しい上、郊外電車で名所旧跡に立ち所に行ける便利さを讃えるのだ。

 

 

これは実にその通りで、鶴橋からものの30分、特急に乗れば東大寺でも唐招提寺でも薬師寺でも簡単に拝観できるし、梅田から阪急で箕面までもその程度で行き着ける。深山幽谷といっても過言ではない澄んだ大気の中ハイキングを、箕面の滝まで楽しめる。

 

 

南海電車に乗ったらさすがに1時間以上かかるものの、和歌浦の雄大な風景を楽しみながら釣りを楽しめる。

 

神戸方面も、岩登りできる芦屋のロックガーデンなんかすぐだ。

 

 

もちろん京阪電車に乗れば、50分くらいは要するけれど、清水、南禅寺、相国寺、御所であれ、なんであれ、立ち所に行き着けるのだ。

 

 

東京にこういう素晴らしい名所は、ない。

 

わざわざ新幹線に乗って、高い金を払い、京都の味ない(不味いという意味の大阪弁)ご飯をありがたがるしかないわけだからかわいそうだよな。

 

 

俺は大学受験に失敗して、大いにヒマが出来たので、バイトで貯めた金を使わな損だと、手始めに石山寺に参拝してみた。

 

 

ここは紫式部が『源氏物語』の構想を練ったと伝えられている旧跡で、1980年の春、「源氏の間」と称する小部屋を外から覗き込むことができて、文机が置いてあって書きかけの和本と硯に筆があったよ。

 

 

なんでもその、建物は徳川時代のものだそうで、バカバカしい限りだけど、(いかにも京都らしいよなあ、歴史の捏造なんやけど、これはこれで立派なサービス精神だよなあ)と思って、鬱屈した心が慰められたよ。