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古本屋日誌

2019-08-31 09:59:00

水木しげるのアシスタントを務めた土屋慎吾は今は故郷の犬山市に住んでいて、屋台店で似顔絵を描く仕事をしたりしているようだ。劇画タッチのエロ漫画で一世を風靡し、今もなお熱心なファンに囲まれる土屋慎吾、謎に包まれた水木プロダクションの真実を赤裸々に伝えてくれる垂涎の回想記だ。

すでに4巻まで出ていてこれはその最新巻だ。「2人のアシスタント編」と題されていて、中でも水木プロの先輩アシスタントだった北川義和の話が興味深い。

北川は最古参のアシスタントだが、なかなか雑誌にデビューの機会をつかむことがならず悶々とした日々を過ごしていて、つげ義春が新しく水木プロに加わった際は先輩風を吹かしてつげに「ここ、枠線引いて‼️」と指示を出して、あわてた水木しげるが「つげさんはプロの作家なんだから、お前さんが枠線やベタをやりなさい」とたしなめられることがあった。

「ガロ」に入選したいと心の底から願っていてつげ義春に「お願いだからあなたの方から長井さんに推薦してもらえないか」と頼み込んだが結局願いは叶わず、同僚の池上遼一やつりたくにこらが雑誌デビューを飾る中疎外感に悩み、とうとう水木に「雑誌に描くことになったから辞めさせてくれ」と申し出てしまう。

水木は「えーどこの雑誌だ?」と尋ねるのだが「まだ決まってません、でも打ち合わせが進んでます」と答えにならない答えをして水木しげるから「バカヤロー‼️‼️‼️」と怒鳴りつけられる。

土屋慎吾は作品の中で「水木は貧乏時代から自分に仕えていた北川を失いたくなかったし、また北川の力を考えて止めたのだろう」と書いている。

まああれやね、水木ほどの天才、その画業を目の当たりにでき、自分もその一翼を担っているという満足感や自負をもってしても、自我は抑えられないということだろう。イエスや釈迦のような圧倒的なカリスマの下での生活であれば、教祖への批判など思いもよらないことだ。しかし中途半端な才能ほど厄介なものはない、何せこの資本主義の世の中は才能などなくてもいくらでも需要はあるのだから、それを目にすると自我を抑えるのは難しいだろう。


2019-08-30 10:35:00
「大大阪画報」は「近代建築画譜」と並んで大大阪時代の大阪を視覚的に記録した好著なんだが、なかなかお目にかかる機会がなかった。
一度大阪の古本屋のネット目録で見つけてすぐに申し込んで金もカードで決済したのに、電話がかかってきて「あの本は前から欲しい人がいてその人に売ることになってましたので、キャンセルします」という。「それやったら初めから目録に載せとくなよ、ほんまにええ加減な店やなあ。」で終わりました。
でもまあ私も長く古本屋からものをこうたり、今では古本屋になってるんですが、これほどの不手際は体験したことがなかった。
そのあとヤフオクに出品されていることがあり2万円くらいなら欲しいと思っていて、25000円で入札したが、結局3万いくらかで落札されていた。
この本自体は国会図書館のネットライブラリーで見ることが可能ですから興味ある方はぜひアクセスしてご覧ください。
刊行は昭和3年で少し早い。そのため地下鉄や昭和10年前後に竣工なったビル(ガスビルとか天守閣、高島屋、国民会館とか)は載ってない。
大工場、主要なビル、銀行、保険会社などは網羅してある。カフェーは外観に加えて内部の写真もあって貴重だ。ホステスも勢ぞろいして皆この時は和服。他に河合ダンスや花街の大和屋の写真がたくさんあって、大和屋のは芸妓のブロマイドのような写真が載っている。やはり下ぶくれの伝統的な美人が多い。経営者の阪口祐三郎は勤め上げた芸妓への慰謝として自分の持つ土地を無償で一人70坪づつ分け与えているという話が載っている。
堺にたくさんあったブルジョアの邸宅も載っていてそれこそ二楽荘も顔負けの洋館を渡り廊下でつなぎ、バラが咲き乱れる庭園を擁する写真だ、今どうなっているか知りたいところだ。
阪神間の甲陽園の全体像もわかる。
今はただの住宅地だが往時は遊園地に広大な池、ロープウェイやゴンドラを備え、山岳地帯も取り込んで健康増進のためにロッククライミングやオリエンテーリングができるように整備していて「甲陽アルプス」の山並みなどとキャプションにある。
逆に従来の名所旧跡、例えば住吉っさんや天満の天神さん、仁徳陵、天下茶屋、円珠庵、などは全くといっていいほど取り上げられていない。また過去の遺物扱いなんだろうが中之島の蔵屋敷群や天王寺公園の黒田藩邸の門、適塾、コニシの建築群も一顧だに与えられず。代わりに大阪湾に面した住友のレンガ倉庫群が「伝統的な建物」として紹介してある。


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2019-08-29 10:57:00

土屋慎吾やつげ義晴、古川益三、池上遼一らが水木しげるのアシスタントを務めていたことは有名だ。今回エロ漫画で名を馳せた土屋慎吾がその回想記を出した。すでにパート4まで出ていて、その1と2が合本になった。

水木の執筆風景はあんまり知られておらず、ごく初期からプロダクション化していて、「ゲゲゲの鬼太郎」のネタを探すために早稲田の学生などを雇って徳川時代の随筆や怪談集を読ませて使えそうなネタがあると報告させていて、その提供料は月に1万(大卒の初任給が2万くらいだった)だったことは呉智英が書いていた。

土屋の本ではさらに踏み込んで水木自身が描くのは鬼太郎の眼やその父親の輪郭などごく一部に限られていたことやそのためネズミ男にせよ、鬼太郎にせよつげ義晴風や土屋慎吾風、池上遼一風がいくらも生まれたが水木は特に気にしていなかったこと、水木の親族がプロダクションの取締役などに名前を連ねてそれだけでアシスタントの何倍もの給与を受け取っていたことなどが細かく描いてあって興味深い。

まああれだけどね、貸本時代の水木の絵はあんなに背景を細かく描きこむようなものではなく、一筆書きのように一気に輪郭を書きおろす感じのものだったから、普通に考えて大部分がアシスタントの手によるものであることは皆知っていた。

今回の出色は土屋慎吾が雑誌でのデビューが決まりアシスタント業を今までのようなペースでは続けられなくなり、水木に「休ませてください」と頼むシーンで水木はしぶしぶ承知はするのだが、裏から手を回して出版社にコンタクトを取り土屋慎吾の作品の掲載時期をずらすように本人に提案してみるように指示していた。

土屋慎吾はそれと察して激怒するのだが、まあさもありなんだな。水木は天才なのに、不思議なことに世間的な常識も持ち合わせている人物だからな。

 


2019-08-28 10:04:00

昨日は天気予報通り昼過ぎから五月雨的に雨が続き、半年ぶりに此花区のUSJに嫁と出向いた。雨が強まり大きな水鉄砲や仕掛けを使って水をかけあうイベントは取りやめになりジェットコースターも運転見合わせとかではあったが人出は相変わらず。

ミニオンズが屋根のあるエリアにたくさん出てきて子どもと記念撮影するイベントがあって、ミニオンズの身長が小学校低学年の子どもと大して変わらない。着ぐるみの後ろに回って換気口やジッパーなんかを探してみたがそれもない。手の振り方もちょっと機械的だし中に人間が入ってるのではなくペッパーくんみたいなロボットかな❓

他のエリアにミニオンズが壁面に絵を描いている設定で、一緒に写真を撮ってくれるアトラクションがあったけど、そこのミニオンズはわれわれと同じ身の丈だったなあ。スタジオだから冷房も効いてるし着ぐるみでも大丈夫ということだろう。

ミニオンズのポップコーンバケツが欲しかったが、今回は浮き輪に乗っかっているバージョンくらいしか期間限定品がないようで、季節の変わり目、端境期なのかなあ〜〜

以前は馬にまたがるミニオンズのポップコーンバケツやセーラームーンとコラボしたのがあってなかなか魅力的だったがそれはもう売ってなかった。

 


2019-08-27 10:09:00

三ノ宮や元町は今もかなりの古本屋が並んでいてなかなか便利な街だ。

古本屋も古くからやっていて何代目ですという店もあってそういう店は洋書や原書だったり、文学書の初版本とか学術書とかそれぞれに得意分野があって昔ながらの商売を続けている。

しかし三ノ宮周辺には80年代のサブカル雑誌(「GORO」「プレイボーイ」「宝島」など)ばかりの古本屋や、ビートルズの海賊版ばかりを売っているレコード屋、福原秀美、土屋慎吾などのエロ漫画の店、花輪和一や幻堂をメインにした店とかおおよそ誰が買うんだろうという店舗が少なくない。

店舗の立地も元町商店街というアーケードがあるメインストリートに面しているのだがエレベーターもない三階にあって、上がって行くのが憚られる店もある。店の名前も「独尊」といい、これで文句あっか‼️みたいな感じで楽しい。お釈迦様がおられるかもと客も来るのだろう。店の方でも三階にまでお客様がえっちらおっちら上がってくれるわけだからやりがいがあるだろう。

耐震対策を施すとして立ち退きを迫られているモトコーにはワープロの中古専門の店や長田のオーダーメードの紳士靴専門店もある。元町駅前ではJRが店舗に立ち退きを求めているが耐震強度がないというのは嘘で、モトコーは震度6にも耐えうることがわかっている、JRは今の店舗を追い出して店賃を上げて儲けたいだけと批判するビラを配っている。

翻って大阪は特色ないよね〜〜〜〜

残念ながら土産にしても食文化にしても、物販にしても、古本屋にしても、建築にしても野球にしても、スタイルにしても何も自己主張するところがない。たこ焼きとお好み焼きなんか別に大して上手くもないし、宣伝するような題材ではそもそもない。東京の連中が大阪は下品だとレッテルを貼り、それに迎合してたこ焼きとかお好み焼きとかゆうてるだけ。本当にバカなやつらだよなあ。阪神タイガースなんか下手くそでプロの水準にも達してないバカの集まりだ。それなのに巨人戦ばかりを「伝統の一戦」などと持ち上げる、つまりは巨人のおこぼれ、七光りをありがたがるというだけのことだ。その程度のものしかアピールできないわけだから笑わせるぜ。


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