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古本屋日誌
水木しげるのアシスタントを務めた土屋慎吾は今は故郷の犬山市に住んでいて、屋台店で似顔絵を描く仕事をしたりしているようだ。劇画タッチのエロ漫画で一世を風靡し、今もなお熱心なファンに囲まれる土屋慎吾、謎に包まれた水木プロダクションの真実を赤裸々に伝えてくれる垂涎の回想記だ。
すでに4巻まで出ていてこれはその最新巻だ。「2人のアシスタント編」と題されていて、中でも水木プロの先輩アシスタントだった北川義和の話が興味深い。
北川は最古参のアシスタントだが、なかなか雑誌にデビューの機会をつかむことがならず悶々とした日々を過ごしていて、つげ義春が新しく水木プロに加わった際は先輩風を吹かしてつげに「ここ、枠線引いて‼️」と指示を出して、あわてた水木しげるが「つげさんはプロの作家なんだから、お前さんが枠線やベタをやりなさい」とたしなめられることがあった。
「ガロ」に入選したいと心の底から願っていてつげ義春に「お願いだからあなたの方から長井さんに推薦してもらえないか」と頼み込んだが結局願いは叶わず、同僚の池上遼一やつりたくにこらが雑誌デビューを飾る中疎外感に悩み、とうとう水木に「雑誌に描くことになったから辞めさせてくれ」と申し出てしまう。
水木は「えーどこの雑誌だ?」と尋ねるのだが「まだ決まってません、でも打ち合わせが進んでます」と答えにならない答えをして水木しげるから「バカヤロー‼️‼️‼️」と怒鳴りつけられる。
土屋慎吾は作品の中で「水木は貧乏時代から自分に仕えていた北川を失いたくなかったし、また北川の力を考えて止めたのだろう」と書いている。
まああれやね、水木ほどの天才、その画業を目の当たりにでき、自分もその一翼を担っているという満足感や自負をもってしても、自我は抑えられないということだろう。イエスや釈迦のような圧倒的なカリスマの下での生活であれば、教祖への批判など思いもよらないことだ。しかし中途半端な才能ほど厄介なものはない、何せこの資本主義の世の中は才能などなくてもいくらでも需要はあるのだから、それを目にすると自我を抑えるのは難しいだろう。