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古本屋日誌

2020-03-31 12:01:00

創元社から橋爪紳也の「大阪万博の戦後史」が出た。

70年の万博前後の建築物の歩みを通観するものだが、特に新鮮味はない。

まあ橋爪に文学的興趣を期待するのはないものねだりなんだが、それにしても70年の大阪万博を手放しで懐かしむ姿勢には強烈な違和感を感じる。

橋爪も小学生くらいでしばしばパビリオンをへめぐったようなんだが、そんなに面白かったかなあ?

私も小学校の3年で学校をサボってまでなんども行ったんだが、地下鉄御堂筋線の殺人的な混みようにまず辟易させられ、万博ゲートから入場する際も規制線が張られてガードマンが多数配置されていて、まるでネズミかマウスを迷路に誘導するように厳格に入場の順番が決められており、マスの一人として人間扱いされなかった衝撃が強い。

だいたいそれまでの買い物は市場に行くにせよ、個人商店に行くにせよ「えーなんやてー、何が欲しいねん、ハキハキ物言えよ、お母はんにゆうとくでー」みたいな感じで、近所のおっさん、おばはんに監視されて仲間内的なものの言い方しかなかったのに万博では「ようこそ〜〜いらっしゃいました〜〜」「心ゆくまでお楽しみください〜〜〜〜」ですからね。

子供心にも「これは怪しい、なんかたくらんどるやつやな」「何を白々しいことしらっとゆうとんねん。さっき散々人をネズミみたいに追い込んどいて、どの口がゆうとんねん。」と思いましたよ。

三菱未来館なる展示では将来巨大台風を封じ込める秘策として「台風の目に原爆を投下して巨大なエネルギー同士をぶつけ差し引きで台風を消滅させる」というトンデモない企画があった。

要するにこういう大規模な展示、博覧会はナチスドイツのアウシュビッツ強制収容所を真似たみたいなものなんですな。マスをどう扱い、どう処理して行くかはナチスドイツが直面した問題でアクセスにせよ、収容する施設にせよその規模をどうするか、一分間に何人通すか、どう制御して行くかこれらはアウシュビッツの問題であり、同時に大阪万博の問題でもあった。

普通はそこに違和感を覚えると思うんだがなぜか橋爪はその感性を持ち合わせていないようだ。


2020-03-30 17:33:00

わけのわからない自粛ブームが続いている。

集団的なヒステリーであって、かつての言葉狩りブームやフェミニズムの流行みたいなものだ。京阪沿線では八幡市駅の堤上の桜祭りが中止になっているし、トイレに設置してある温風の乾燥機も「コロナ感染症のために」と使用中止になっている。

古本業界では4月頭の京橋のツインの古本まつりが突然中止になったのみならず、ゴールデンウィークの四天王寺の古本まつりも中止となった。こっちの方は6月に会期を短縮してやることになったようだが、それにしても過剰反応には驚くばかりだ。

今回の肺炎騒動、日本人の年間死者数に占める割合は、ものすごくオーバーに見積もって1000人死んだと仮定しても0.07パーセント程度でしかない。

大衆がらみの文化というものは常に行き過ぎるものだ。

民主主義しかり、こんなものナチスを生み出し、治安維持法を生み出したわけで、大いなる限界があることは明白なのに金科玉条、不可侵となってしまう。中国共産党を「民主主義ではない」「独裁はおかしい」などと言って批判した気になっているんだから笑わせるぜ〜〜

そんなもの独裁だっていい独裁と悪い独裁があるだけだろう。

言葉狩り、そもそも差別には意味があることもいくらでもあるのになんでもかんでも差別はいけないとエスカレートしてしまう。

フェミニズム、女の社会参加を求める至極まともな視点はありながら軍隊における差別は何も言わない。帝国陸海軍で男しか徴兵されなかったのは明らかに女を差別していた。女にも男同様アメリカ兵を皆殺しにできる体力も気力もあったし、それを自らの手で叶えたい女がいっぱいいたのに、差別ゆえに男に独占されていたわけだ。ところがフェミニズムは一度もそれを問題にしない、トンデモないご都合主義だ。

権力者は大衆の行き過ぎる体質を十分わかっているはずだ、それでも煽るんだから何か「ショックドクトリン」的な意図があるのだろう。


2020-03-29 12:06:00

「じゃりん子チエ」の4本目のDVDがぴあから出た。
相変わらず面白い。今回は花井先生が出版社との打ち合わせで東京に行くことになり、テツを荷物持ちに連れて行こうとするが、テツは途中で逃げ出し花井の家にしばらく居候する話だ。
花井の息子の小学校の先生が風邪をひいて寝込んでしまい、テツが出前を頼むシーンが面白い。
天ぷらうどんを二つ頼むんだが、息子は「素うどんでええから」というのでテツがうどん屋に「ええか、天ぷらうどんを2つつくってな、それからその天ぷらを1つの方にまとめて欲しいんや」という。
テツとしては初めから「天ぷらうどんと素うどん頼むわ」と言ってしまうと自分が得をして先生をいじめておるようになるから嫌なんだというわけだ。このへんのおかしな義理堅さ、筋の通し方が大衆っぽくていいよなあ〜〜

ちょっとだけ頭のいいインテリ風のバカには思いもよらない繊細な思考だよなあ。まあだからどうということはない。細やかに物事を捉えているだけなんだが、その差は大きい。



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2020-03-28 15:31:00

東京の小池都知事は「危機的状況」だと煽って大衆をあらぬ方向に導こうとしているようだ。

大阪の吉村知事も土日は外出を避けてくれとかバカなことを言っている。

しかしこれは集団ヒステリーで、実体的な危機もないのに騒いでいるだけで権力者自らが社会と経済を破壊しているに他ならない。

今週号の「週刊現代」が「あなたが死ぬ確率」と題した記事を掲載している。それによれば今回の肺炎で年間の日本の死者数は多く見積もって1000人くらいだろうとし、昨年の日本の全死者数136万人で割った、コロナで死ぬ確率はたかだか0.07パーセントに過ぎない。これはインフルエンザの0.24パーセントよりずっと低い。

他人に殺されて死ぬ確率は0.02パーセントでこれよりは少し高い程度、交通事故で死ぬ確率の0.26パーセントと比べると格段に低い。

マスコミもバカなやつしかいないのでくだらない危機 情報を煽りまくってどうしようもない。もともと大衆には判断能力などというものはないから、テレビや何やらで煽られたら即座に反応して買いだめをしたり、会社を閉じたり、事業を抑制したりしてしまう。

それにしても、以前日垣隆も縷々述べていたが日本人の死因で侮れないのが、「お風呂で溺れて死ぬ」で年間6000人、率にして0.44パーセントもあって、川や海で溺れて死ぬの820人、0.06パーセントに比べてはるかに高い。

また「平らなところで転んで死ぬ」も「階段など段差で転んで死ぬ」のほぼ2倍あることにも驚かされる。

うーん死ぬならどっちかといえば階段などの方が〜〜てな感じもするが歳を重ねると段差がなくてもこけてしまうわけだ。


2020-03-27 16:28:00

大宅賞をとった堀川恵子の新作が去年出た。

「狼の義」という犬養毅の伝記で、なぜか小説風の随所にセリフが織り込まれた作品だ。堀川恵子は「原爆供養塔」で名を馳せた、従来注目されてこなかった供養塔にスポットを当てて戦後の広島市のマスコミ戦略を描いた作品だ。

確かに原爆のモニュメントとして「平和祈念館」ばかりが取り上げられ、原子爆弾に焼かれた遺骨を埋葬した供養塔が忘れ去られるのは異常だ、堀川恵子はここに目をつけたわけで、その慧眼は大したものだ。

この作品でも冒頭の西南戦争のシーンは印象的で木堂が報知新聞の現地特派員として参加し、政府軍が1日に30万発もの砲弾を戦線に投入して、1薩摩藩の反乱にあまりにも無駄な濫費を繰り返したり、指揮官の山県有朋が優柔不断で敵の弱点があらわになっているのに、慎重の上にも慎重、なかなか出て行かず、ためにこう着状態が続いてしまうことを丹念に描いている。

そしてこの愚かしい帝国陸軍の戦争指揮が昭和に引き継がれていく話になっていく。なかなかの名人芸だよなあ〜〜


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