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古本屋日誌
土屋慎吾やつげ義晴、古川益三、池上遼一らが水木しげるのアシスタントを務めていたことは有名だ。今回エロ漫画で名を馳せた土屋慎吾がその回想記を出した。すでにパート4まで出ていて、その1と2が合本になった。
水木の執筆風景はあんまり知られておらず、ごく初期からプロダクション化していて、「ゲゲゲの鬼太郎」のネタを探すために早稲田の学生などを雇って徳川時代の随筆や怪談集を読ませて使えそうなネタがあると報告させていて、その提供料は月に1万(大卒の初任給が2万くらいだった)だったことは呉智英が書いていた。
土屋の本ではさらに踏み込んで水木自身が描くのは鬼太郎の眼やその父親の輪郭などごく一部に限られていたことやそのためネズミ男にせよ、鬼太郎にせよつげ義晴風や土屋慎吾風、池上遼一風がいくらも生まれたが水木は特に気にしていなかったこと、水木の親族がプロダクションの取締役などに名前を連ねてそれだけでアシスタントの何倍もの給与を受け取っていたことなどが細かく描いてあって興味深い。
まああれだけどね、貸本時代の水木の絵はあんなに背景を細かく描きこむようなものではなく、一筆書きのように一気に輪郭を書きおろす感じのものだったから、普通に考えて大部分がアシスタントの手によるものであることは皆知っていた。
今回の出色は土屋慎吾が雑誌でのデビューが決まりアシスタント業を今までのようなペースでは続けられなくなり、水木に「休ませてください」と頼むシーンで水木はしぶしぶ承知はするのだが、裏から手を回して出版社にコンタクトを取り土屋慎吾の作品の掲載時期をずらすように本人に提案してみるように指示していた。
土屋慎吾はそれと察して激怒するのだが、まあさもありなんだな。水木は天才なのに、不思議なことに世間的な常識も持ち合わせている人物だからな。