Welcome

古本屋日誌

2020-10-16 21:47:00

小谷野敦が「岩波文庫に入れられないものだろうか」と書いていた戯曲「兵士タナカ」を読んでみた。

この作品はドイツのカイザーの作で、1940年にチューリッヒで初演となった。

白水社から1970年に出た「現代世界演劇 1」に収録してあり送料込みで1000円くらいで入手できる。

帝国陸軍の狙撃兵で成績優秀なタナカは3日の休暇をもらって実家に帰宅したが、飢饉で苦しんでいるはずなのに、白い飯、御頭付き、酒、タバコと至れり尽くせりの歓待を受ける。

しかし妹は金持ちの家に奉公に行ったとかで不在。

その晩仲間と一緒に遊郭に登ったところ出てきたのはなんと奉公に行っているはずの妹で、親から女衒に売られたことがわかる。その金で今日のご馳走は調えられていたわけで、タナカはショックを受けた。

そこへ上官がやってきて女を所望だといい、タナカの妹があてがわれることになるが、タナカは妹を連れて部屋に立てこもり、あげく妹で刺し殺し、さらに上官も刺殺してしまう。

裁判でタナカは上官殺しのかどで死刑を宣告されるが裁判官は「陛下の御慈悲がある、それにおすがりしてみたらどうだ❓」と勧める。

タナカは強欲な地主や女衒がわれわれから搾り取った金を使って全国の連隊を維持しているのが天皇だとして、天皇こそ俺の前で土下座して謝るべきだと主張する。

天皇制への痛烈な批判である。ただタナカは天皇は徳川時代同様の身分制度で、民主主義の世の中に合わないと批判しているのではない。世の不平等の責任者が天皇で、その不手際で庶民が苦しんでいるとの批判だ。



iPhoneから送信


2020-10-15 23:13:00

今日は京都のお客さんのところへ買取に伺った。いい陽気で暑くも寒くもなく快適だー。

今回伺ったお客さんは宗教関係の本をたくさん持っておられてありがたかったが、ただ面白かったのはカバーの背表紙に糊をつけて本ときつく接着しておられたことだ。

「これなんでみんなくっつけてはるんですか❓」

「いやな、こないしてくっつけたらな本のな、幅が縮まるんや、そやさかい本棚にぎょうさん置けるんやで」とのことだが

「まあそうかもしれませんけど、こないにしてくっついてもうてたら、高うは買えませんで。今度からは読んだ本は糊ではらんとすぐ私んとこに電話したっとくなはれや、じきに飛んでかますよってに」

iPhoneから送信


2020-10-14 13:09:00

通販で古本や新刊書を買うことも多い。

欲しい本が決まっている場合は一瞬で検索できるし、新刊を扱う巨大書店、ジュンク堂などに行って実際に手にとってから買う手もあるが、交通費がかかるし、電車に乗っている時間は無駄だ。

さて目当ての本が到着して早速読もうと意気込むのだが、ものすごく手間のかかった包装がしてあるようだ。封筒の四隅に大きな透明なセロテープが目張りしてあり、引きちぎろうとしてもいっかな手応えがない。

さてやっと本を取り出すと今度はご丁寧にプチプチでくるんである。

これを取り去らねば‼️と気合を入れるがその糸口が見つからない。

こちらも四隅に全てに実に細やかにセロテープ状のもので密封されている。

なんとかセロテープの起点を見つけようとするのだがなかなか見当たらない。
ようやく起点らしき端を発見して「あ〜嬉しい‼️」と喜んだのも束の間、テープの端は無情にも端から1センチもいかないところでちぎれてしまった。

仕方なくカッターを探してきて、テープの上から刃を当てて切り裂こうとするのだが、それはそれで(ひょっと刃が入りすぎて本のカバーを傷つけてしまうのではなかろうか)とビクビクする。

ようやくのようやく本にたどり着いたかと思いきやさらに半透明のビニール袋で梱包されている。

(ビニール袋はあったほうがいい。なにせ急な雨で封筒が濡れてしまうケースもあろう。万が一だが備えは大切)などと冷静に分析できる余裕は失われている。

なにせここまでくるのに5分以上かかっている上に右手の親指や人差し指は悪戦苦闘の苦悶に喘いでいる。

腹が立ってきて勢いよくビニール袋を引き裂いた時、何か重苦しい抵抗が右手に残る。

おそるおそる観察してみたらあんのじょうカバーを半分くらいまで引き裂いてしまっている。

とにかくやり過ぎなんだよなあ。

本は材木と同じでものすごく硬い。ビニール袋はまだしもそれ以上の包装は無駄だ。

iPhoneから送信


2020-10-13 13:00:00

片岡壱太郎が唐衣役を務めた「輝虎配膳」をテレビで見た。

ご都合主義満載の歌舞伎で見ている方は時代劇同様次の展開から最後まで見通せるので安心してみていられる。

武田信玄の軍師である山本勘助の母越路が信玄の宿敵、長尾景虎の配下である直江兼続の屋敷にやってきて饗応を受ける話だ。

そもそもこれがおかしな話なんだが、兼続の嫁の唐衣は越路の娘という無理な設定になっていて、その唐衣から「冥途の土産にお目もじに預かりたい」と頼まれたからということでノコノコ敵の本丸にやってくるのだ。

あとはもうなんでもありになって兼続が将軍から拝領した小袖を義母に捧げようとしたら「わしは古着は着たことなどない」と拒否されるわ、果ては輝虎自らが運んだ料理を足蹴にされる。輝虎は怒り狂って越路を斬り殺そうといきりたつわけだ。

だからこの狂言はかなりコミカルでその際たるものが怒った輝虎が烏帽子を脱ぎ捨て、直垂もとって白装束となり向かっていくシーンだ。

輝虎は直垂に加えてその下に着込んでいる4枚の白装束を玉ねぎの皮むきよろしく長台詞を言いながら脱いでいく。4枚ですよ‼️南座の観客からも笑い声がこだましていた。

ただ徳川時代の武家の賓客の饗応では数枚白装束を下に着けることが作法になっていたので、輝虎の仕草は礼儀に則ったものだ。従って本来のまともな観客なら笑い声ではなく「ほーっっっ」てな歓声が起こるべきなんだが、われわれはとうの昔にその知識教養を失っている。

それにしても片岡孝太郎といい、壱太郎といい昔懐かしい大阪アクセントをあやつり上品な会話を聞かせてくれるのは誠に貴重だよなあ。

大阪に住んでいる人でもちゃんとした大阪アクセントを使える人はそもそも少ない。

iPhoneから送信


2020-10-12 15:56:00

大塚ひかりの「くそじじいとくそばばあの日本史」がポプラ新書から出た。

相変わらず面白い。大塚はどこから着想が湧いてくるのかよくわからないが昔話の深層を寸鉄人を刺す要領でいろいろ展開してくれる。

以前神功皇后が朝鮮から凱旋した際身内に背かれて危機に直面した話を取り上げていた。神功皇后自ら『おきながたらしひめは死んだ‼️」とデマを流して敵を油断させて撃ち破った。

大塚は「本名を明らかにしないタブーが強い中、名乗るのみならず、死んだとまで公言するのは相当な覚悟がいっただろう。その上神功皇后は鎧甲冑を身につけて男装をし、さらに腹ぼてで差し迫った出産を止めるために石を腹に挟んで誠に異形であった。これもパワーを高める呪術で、彼女はよほど追い詰められていたのだろう」などと書いていた。

今回は海幸山幸の山幸彦を取り上げる。

山幸彦が兄に釣り針を返す際に呪いをかけて潮の満ち引きを司る珠で溺れさせる顛末を取り上げて大塚は


「これは兄にとってはまことに理不尽としか言いようがない」

しかし

農耕以前の狩猟採集時代には策略にかけて相手を陥れて少ない労力で倒すのは正しい方針であり「正々堂々と戦うなんていうのは建前だけの道徳に曇らされた近代人の感覚で、やってることは人殺しなわけですから、むしろフェイントで済ませた山幸彦などは素晴らしい策士と言えます」とある。

正々堂々の戦いを建前だけのの感覚とぶったぎるのは天才、大塚ひかりにしかできないことだよなあ。
iPhoneから送信


1 2 3 4 5 6 7