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古本屋日誌
昨日は阪急茨木の近くのお客さんのところに出向いた。
この人はいろんな文学全集をお持ちだ。
娯楽が少なかった時代はくだらない小説でも売れたから、いろんな出版社からマイナーな作家でも全集が出ていたし、揃いのものは高価だった。
佐多稲子全集など30万くらいしていたが、今はちょっとも売れないな。
新日本出版社から出ていた『宮本百合子全集がなんか、いまや一冊100円でもなかなか売れない。
宮本百合子の小説は『伸子』にしても『道標』にしても、今本屋で売っている凡百の作品より圧倒的に面白いのに、俺は異常な事態だと思っている。
宮本百合子が共産党の宮本顕治の嫁だったから、単に毛嫌いしているだけなのではないか。そんな色眼鏡に囚われているやつらはバカだよなあ。
さて、文庫本の全集という珍しいスタイルで、ちくまから夏目漱石全集や森鴎外全集が出ている。
漱石の方は売れないが、鴎外の方は依然として高い人気があって不思議だ。
史伝といわれている『渋江抽斎』の類なんかはとりわけ高い。
高校で使う文学史の副読本なんかに『渋江抽斎』は史伝ものの傑作であるとか、鴎外の最高傑作だなどと書いてあるからなんだろうか。
俺が一読したところ、事件らしきものも起こらず全然面白くないし、それなら『阿部一族』とか『雁』とかの方がよっぽどいいと思うんだけどね。
ちくま文庫で現在も人気があるのは、
①チェーホフ全集、高校の演劇部でよくやってるからだろうか。
②シェークスピア全集、これは巻数が多すぎる。翻訳者の松岡が30年くらいもかかっていた作品で、誰か他の人に翻訳を依頼した方がよかった。
人気があるのは、シェークスピアはセリフが面白いからだろう。
⓷泉鏡花集成、これは全集ではなく主要な作品を集めたものだが、後半の巻を探しているお客さんはたくさんいる。帯がついているものはあまり見たことがない。
お化けや妖怪への怖いもの見たさが人気の原因だろう。
⓸詳注版シャーロックホームズ全集、事典付き、これはかなり新刊で売れている。
古本屋に持ち込まれることも多い。ホームズの「推理」なるものには全く同意出来ないが、犯人を突き止めてそれで終わりにならないところは確かに素晴らしい。
裁判官のように判決を下すし、それをきちんと実行する。
自ら犯人を死刑に処することもあるわけで、これが読者にはたまらない魅力なのだ。(俺もそう思う。水谷豊のゆうてることなんか、真実は少しもない)
⑥カフカセレクション、これは全3巻なんだが、探しているお客さんは多い。
カフカは短編が多いので読みやすいし、異常な世界観を味わうこともできるから人気があるのだと納得している。
⑦バートン版千夜一夜物語、これは全11巻もあるんだが、人気は高い。
死刑を免れるために、あらゆる知恵や経験を動員して話を作る。そのあたりがいいんだろう。