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今回は、「おもてなし」についての「茶道」の続きを説明しよう。
② 和敬清寂
さらに、千利休は次のような「和敬清寂」を提唱している。
1.和
「おだやか、なごやか、のどか」という意味で、主客相互が身分の上下を問うことなく「和」をつくりあげていくことである。
2.敬
「つつしむ、うやまう」という意味で、主客相互が細やかな心遣いで、敬い「敬」をつくりあげていくことである。
3.清
「すんでいる、きよいこと」という意味で、茶室の周辺は勿論のこと、茶室や道具もお客様を迎えるために清らかにしていくことである。
4.寂
「しずかなさま、ひっそり」という意味で、「詫び・寂び」の心でお客様をお迎えすることである。「詫び」というのは、「真心で礼儀正しく真面目」ということで、「詫び」というのは「素直に目だたずに自然体」ということで、心に迷いがなく達観しているということである。
③茶事と礼儀作法で学ぶ「おもてなしの心」の原点
「茶事」においては、亭主となった人は、まずお客様をお迎えするために、茶室に通じる門から通路、庭、玄関にいたるまで清掃し、水をまき茶室の周辺をきれいにする。さらに茶室の中は、目的や季節に合った掛け軸、花、水差、茶碗、釜などを用意して、炭をおこしお湯を沸かす。さらに最高のお菓子を用意して、お客様を迎える準備をする。これらのことは「しつらい」といいね語源は平安時代の「室礼」で、晴れの儀式の日に、室内を飾ってお客様に喜んでもらおうと準備することから来ている。
お客様がお見えになったら、丁寧にご挨拶をし、お茶を点てるのであるが、この際には、お客様の好みは「濃いお茶がよいか、薄いお茶がよいか」「熱いお茶が好きか、普通の熱さがお好きか」というように、お客様一人ひとりの好みによって差し上げ、さらに、お客様が喜んでもらったかを考えることが「茶道」の「おもてなしの心」である。
一方、招かれたお客様は、亭主の「おもてなしの心」の意図を汲み取り、「感謝」の念を亭主に申しあげる。かくして主客が一体となって、はじめて「一期一会」が成立するのである。かくして「茶道」は、小笠原流礼法とあいまって、日本文化の「おもてなしの心」の原点になっている。
④接客サービスへの「おもてなしの心」の応用
「おもてなしの心」を「接客サービス」へ応用するために、次のことを思考していけば、実現はだれでも可能になると、「接客は利休に学べ」で提唱している。
1.人にやさしくしたい気持ちを持つこと
2.人に思いやる気持ちを持つこと
3.人に感謝する気持ちを持つこと
4.人に喜んでもらいたい気持ちを持つこと
5.人を愛する気持ちを持つこと
6.人を信ずる気持ちを持つこと
7.人と手を取り合う気持ちを持つこと
(4)料亭について
料亭というと、高級、接待、宴会、要人の密談というイメージが高く、一般的には近寄りがたいイメージがあるが、その原点は「茶事」に出される茶懐石なのである。それが現在の料亭になったのは、1700~1800年代にかけてであろうとされている。
京都菊乃井の村田吉弘の「京都料亭の味わい方」によると「建物の構えや庭の佇まい、床の間の掛け軸や置物など調度品の贅沢さ、生けてある花の風情、女将の挨拶や立ち振る舞いなど、すべての要素を複合的に楽しめる飲食の場が料亭」で、「食事を提供する場でありながら、日常とかけ離れた異空間」としている。
日本料理の様式は数多くあり、その主なものとして懐石料理と会席料理がある。懐石料理は、鎌倉時代から安土桃山時代に「茶道」と結びつき茶を楽しむためにという原型が作られね江戸時代に確立された。一方、会席料理は、江戸後期に酒を楽しむための料理として発展し、現在の料亭、日本料理店、旅館などで提供されている。
料亭は、日本文化の集大成の場として見ることができる。当然、料理は世界屈指の日本料理で空間は格式や威厳のあるものだが、そのなかで最も評価の高いのが女将を始め客室係の「おもてなしの心」の素晴らしさであり、常連客の多くは日常とかけ離れた応対に感動を超え「感謝」の気持ちを感じている。