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2014-07-27 17:26:00
 
2014 年 7 月 23 日 12:07 JST

 

 

Fred Harper

 米国人の食生活に関する健康、利便性、儲けをめぐる戦いで、食品・外食業界にとって朝食ビジネスが最後のフロンティアになってきた。

 ファストフードのヤム・ブランズやバーガー・キング・ワールドワイド、シリアル食品のケロッグといった企業は、米国人の1日の始め方を変える戦いに打って出ている。その他の食事時間帯、つまり昼食時や夕食時の需要の伸び悩みで苦戦しているためだ。しかし、消費者がシリアルから遠ざかり、タンパク質が豊富な食品を試し始めているにもかかわらず、彼らの朝食時のそれ以外の習慣は頑固なまでに変わっていない。つまり、大半の米国人は依然として自宅で朝食を取っており、朝のルーティーンは昼や夜よりも厳格で、習慣的な行動に従っているのだ。

 バーガー・キング北米部門のアレックス・マセド社長は最近のインタビューで、「人々は朝、時間に追われており、その後どこに行くか承知している。その習慣はあまり変わらない」と述べた。サンフォード・C・バーンスタインによると、バーガー・キングは、米国人が毎年ファストフード店での朝食に費やす470億ドル(約4兆8000億円)の2.8%を占める。同社は今年、朝食時のバリューメニューの提供を始めたほか、朝食のメニューにバーガー類を追加した。売り上げを増やすためだ。

 

消費者の嗜好の変化で炭水化物中心の朝食からたんぱく質の豊富な朝食へ

 多くのファストフードやファストカジュアルレストランのチェーンは、朝食に開拓のチャンスを嗅ぎ取っている。バーンスタインによれば、1週間に最低2回外食する消費者のうち、30%は朝食時に外食すると答えており、それは昼食時の40%や夕食時の50%を下回っている。

 それに加え、朝食は材料費がかからないため概して収益力が高い、とレストラン運営会社は指摘する。バーンスタインは、朝食が昨年のマクドナルドの売上高に占めた比率は約25%だが、税引き前利益に占めた比率は40%だったと推測している。

 それでもなお、標準的な米国人の朝に外食業界が入り込む余地はほとんどない。何十年か前の朝食時には、のんびりとした時間が流れていた。例えばオレンジジュースを飲みながら新聞を読んだものだが、現在では、朝食を取る時間が平均で1日12分にまで減っている、と調査会社NPDグループの食品業界担当チーフ・アナリストのハリー・バルザー氏は言う。これは昼食(28分)や夕食(24分)に費やす時間の約半分だ。

 朝食時に慌ただしさをもたらしたのは、社会的なシフトだ。小さな子供を持つ母親でも職場の仕事を持つ人は増えている。その結果、追加的なプレッシャーが家族にのしかかっており、朝食を準備し、子供を託児所ないし学校に送り、職場に向かわなければならない。労働統計局によると、昨年の1歳未満の子供を持つ母親で就業中の人の比率は57.3%と、03年の53.7%から増え、過去16年近くで最高の水準に達している。

 

ファストフード各社の朝食メニューが全体の売上高に占める割合

 さらに、ベビーブーマー世代が仕事を続けていることで、米国で最も人口が多いこの年代の朝のルーティーンが制約を受けている。ギャラップ社の最近の調査によると、就労しているベビーブーマー世代の半数近くは66歳以上になるまで引退しないと述べている。この中には、生涯引退しないと言う人たち(10人に1人)も含まれる。

 ヤム・ブランズ傘下のタコ・ベルは、新たな習慣の創出で消費者を引き付けようとしている。便利だが、ヘルシー志向の食事のトレンドに逆らうメニューを出し始めている。例えば今年3月、新製品のワッフル・タコスで大きな賭けに出て、初の朝食メニューの提供を全国で始めた。朝食メニューには他に、シナボンのパンやソーセージ入りのA.M.クランチラップ(710キロカロリー)がある。

 

 ヤムのデービッド・ノバクCEOは先週の決算発表の際、朝食が既に収益を上げていると述べ、朝食ビジネスによって、年間売り上げが1店舗当たり7万―12万ドル増えるとの見通しを示した。

 

 他社の成果はまちまちだ。ドクターズ・アソシエーツ傘下のサンドイッチチェーン、サブウェイは2010年に全国で朝食メニューの提供を始めたが、バーンスタインによれば、朝食が昨年の売り上げに占める比率はわずか6%にとどまる。ウェンディーズは昨年、朝食メニューを全国で提供する計画を撤回した。十分な利益が上げられなかったことが理由だという。

 

マクドルドが1971年に投入したエッグマフィンは昨年の売上高が89億ドル6000万ドルで同社のドル箱朝食 John Taggart for The Wall Street Journal

 

 マクドナルドは1971年にエッグマックマフィンでファストフード店の朝食の先駆者となり、現在もこの分野を支配している。バーンスタインによれば、昨年の朝食の売上高は89億6000万ドルで、米国市場の19%以上のシェアを持っている。マクドナルドが朝食を発売してからは長い時間がたっている。このため、同社は他企業よりも米国人の朝の習慣にうまく組み込まれていると言える。

 

 しかし、一部の消費者は依然として、ファストフード店の朝食に抵抗を持っている。カリフォルニア州オレンジ郡在住のキム・サリバンさんは、「私は習慣の生き物で、かなり健康的な食事をしており、それをコントロールしたい」と述べ、「しかも、朝は非常に慌ただしく、行く途中にそういったファストフード店はない」と話した。

 

 これらの全ての傾向の中で、大きな敗者がシリアルだ。シリアルは長年、米国で最も人気の朝食の1つだった。だが便利さをめぐる争いで苦戦しているだけでなく、消費者の「低炭水化物で高タンパク質」食品へのシフトによっても、消費が落ち込んでいる。

  シリアルは依然として年間100億ドル前後の産業だが、消費は減少している。ケロッグは、今年は4%も減少する恐れがあると推定している。

 

 ケロッグのジョン・ブライアントCEOは最近のインタビューで、「朝食時の競争が激化してきた」と述べ、「当社とファストフード店との競争が次第に激しくなっているのは事実だが、それよりも人々が高タンパク質食品を望んでいることから受ける影響の方が大きい」と話した。

 

 ケロッグやゼネラル・ミルズなどのシリアルメーカーは、牛乳と一緒ならシリアルも高タンパク質食品になり得ることを「消費者に注意喚起する」必要があると話している。

 

 ゼネラル・ミルズは最近、1食当たり7グラム(g)のタンパク質を含む新製品「チェリオ・プロテイン」を発売した。通常のチェリオスには1食当たり3gしかタンパク質が入っていない。スキムミルクを加えると、新製品には1食当たり11gのタンパク質が含まれる。これはマクドナルドの「ソーセージ・マックグリドル」に含まれるタンパク質の量と同等だという。

http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303828304580046300821909866?nid=LF20140724&reflink=NLhtml_20140724_a3