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2023-04-01 17:35:00

日本の飲食店初の「B Corp」 世界基準のクッキーブランドとは

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「自分が納得するような、アメリカンクッキーがつくりたい」

アメリカンクッキーとは、アメリカの家庭でつくられるクッキー。その定義は様々だが、一般には「セサミストリート」のクッキーモンスターが持っているような、大きくて丸いものが想起される。

アメリカンベイクショップ「ovgo Baker」(OVGO社)の創業者・溝渕由樹が憧れたのも、そんなクッキーだった。学生時代から“納得の味”を求めて、趣味でアメリカンクッキーを焼いていた溝渕だったが、「ovgo Baker」では、それを植物由来の原料のみでつくることに成功。そのおいしさが、OVGOの成長の柱になった。

本連載「OVGOの軌跡」では、創業者の溝渕へのインタビューを中心に、OVGOの成長の軌跡を辿る。第2回となる今回は、多くの人の心を掴む「商品」の魅力に迫る。

>>第1回 三井物産を辞めクッキー屋さんに 「ovgo Baker」はこう誕生した


「プラントベースは美味しくない」を変えたい

1番人気は、ソフトな食感が特徴のチョコチップクッキー。ほかにも、ザクザク食感のオートミールクッキーやスパイスフレーバーなど、多様なバリエーションのクッキーを展開。2022年10月からはサブスクリプションサービスもスタートした。

原材料はプラントベースでそろえ、米油、豆乳、ナッツミルクなどを使用している。バターや卵、牛乳などの動物性のものは一切不使用だ。

また、できる限り国産やオーガニックの食材を使用し、輸入や生産にかかる環境負荷が少ない手段でお菓子づくりを行っている。そのうえで、1枚あたり300円~400円の手に取りやすい価格に抑えている。

ただ、溝渕が生粋のクッキー好きということもあり、味への妥協は一切許さない。「プラントベースはおいしくない」というイメージを変えたいという強い思いもある。

「卵やバターを使った一般的なクッキーよりもおいしくなければ、商品化には至りません。せっかく自分たちでつくるならば、他では食べられない味と、見た目もおいしいクッキーでありたいと思っています」



これまで、プラントベースのクッキーは、ヴィーガンや食品アレルギーを持つ人をターゲットにつくられることがほとんどだった。だからこそ、卵やバターを使ったクッキーにくらべて、“おいしくない”と感じてしまうものも多かった。OVGOのクッキーがおいしいのは、そうではないからだ。

「ターゲットをヴィーガンなどに狭めず、すべての方に気に入ってもらいたいと考え、納得のいく味を追求しています」

制限があるからこそ可能性が広がる

では、卵、バター、牛乳といったクッキーの基本となる原材料が使えない中で、アメリカンクッキーならではのおいしさを、どのように実現しているのか。

試作品を作り始めた2019年夏頃は、まだ国内にオーツミルクが流通しておらず、乳製品の代用となるのはココナッツミルクか豆乳だった。そうすると、ココナッツミルクを入れたクッキーはココナッツ味になってしまい、豆乳は豆っぽい味になってしまう。その風味を抑えるために、ココアや抹茶、スパイスを多用したり、味噌を入れてみたりと、様々な材料の組み合わせを考えた。

「原材料の選び方しだいで風味がかなり変わるのが、プラントベースのお菓子の面白さでもあります。油は米油を使っていますが、米の種類もたくさんありますし、米油以外にもごま油もオリーブオイルも菜種油も使えます。ミルクも、油脂が多くて濃厚なココナッツミルクを使うか、軽い味わいのオーツミルクを使うかで、風味が大きく異なる。組み合わせによって、風味の可能性が広がるんです」

そうした試行錯誤の結果、イメージ通りのアメリカンクッキーが完成した。

現在、製造は神保町のセントラルキッチンと一部店舗で行っている。期間限定商品など新商品のアイデアは、アルバイトを含む店舗スタッフからも募集。例えば、バレンタイン時期の小伝馬町店では、考案したスタッフの名前が入ったクッキーを販売した。



また、3月1日には東日本橋に新店をオープン。イートインスペースが広いこちらの店舗では、初めての食事メニューとして、プラントベースの「フムス」や「ミネストローネ」なども展開している。朝昼晩とプラントベースの食事ができる場所になった。

「より人々の食をプラントベースに代替していくことや客単価を上げていくことも課題のひとつでしたので、かねてから食事の提供は考えていました。今後はさらにメニューを増やしていきたいです」

B Corp認証取得でアメリカ進出へ

「ovgo Baker」はこの春、アメリカンクッキーの本場ニューヨークに進出する。

それに先駆け、2023年1月には、環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度「B Corporation認証(B Corp)」を取得した。日本では16社目で、飲食店としては初となる。

B Corpは、アメリカの非営利団体B-Labが定めた基準(ガバナンス、社員、コミュニティ、環境、顧客の5つの指標)を満たした企業が取得を認められるグローバル認証だ。

OVGOは、B Corpの取得にあたって、製造するクッキーの原材料調達から販売・廃棄までの温室効果ガス排出量を計測。ovgo Bakerのチョコレートチップクッキーは一般的なチョコレートチップクッキーと比較して、温室効果ガス排出量を約84%も削減できていることがわかった。



プラントベースにこだわるOVGOは、創業時からB Corpの取得を目指してきた。ただ、その取得までには2年を要した。申請に向けた社内制度や、申請後の複数回の面談や、審査順の待機に時間がかかったからだ。

「アメリカなどでサステナブルな会社として事業活動を行うときに、お墨付きを得たので、とてもやりやすくなりました。脱炭素の視点でも、プラントベースの重要性について、数値的な裏付けができ、自信につながりました」
日本の飲食店初の「B Corp」 世界基準のクッキーブランドとは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)