インフォメーション

2021-08-27 22:06:00

外食、接種先行の海外に活路 すかいらーく米初出店

大阪王将は中国再進出 国内の苦戦補う

 [有料会員限定]

 

think!多様な観点からニュースを考える
石倉洋子さん他2名の投稿石倉洋子蛯原健大岩佐和子

 

すかいらーくHDの米国1号店となる「しゃぶ葉」(イリノイ州シカゴ)

外食大手が海外市場に積極進出する。すかいらーくホールディングス(HD)は今秋にも米国1号店を開業し、イートアンドホールディングスは9月にも「大阪王将」を中国本土に出店する。国内はコロナ下で苦戦中。各社はワクチン接種などで飲食ビジネスがいち早く正常化した海外で中長期の成長シナリオを描く。

すかいらーくHDは今秋、米シカゴにしゃぶしゃぶ料理の「しゃぶ葉」を開く。この直営店で実験を重ね、米国の消費者の需要をさぐる方針。同国市場で受け入れられるメニューや価格、客席設計などを見極め、チェーン展開につなげる。海外事業はこれまで台湾の64店舗とマレーシアの2店舗にとどまっていた。

外食各社はここにきて海外進出に前向きになっている。イートアンドHDは9月にも中国本土の商業施設内に大阪王将を出店する。中間所得層の上位を取り込みたい考え。まず2022年までに3店舗体制にする。海外事業を中長期的な成長の柱のひとつに育てていく。

このほか、外食最大手のゼンショーホールディングスは年内にも主力の牛丼チェーン「すき家」でフィリピンに進出する方針だ。22年3月期は504店の新規出店のうち8割近い388店舗が海外となる。トリドールホールディングスも7月末に「丸亀製麺」の英国1号店をロンドンに開業。年内にも5店舗に増やす。欧州での本格的なチェーン展開を視野に入れている。

英ロンドンに開店した「丸亀製麺」

海外はコロナのワクチン接種が進み、飲食店の営業もほぼ正常化している。吉野家ホールディングスの21年3~5月期の米国事業の既存店売上高は、コロナ前の19年3~5月期を約5%上回る水準まで回復した。サイゼリヤも上海と台湾に限ると、21年8月期の営業利益は第3四半期までに年間の最高益を更新した。

食文化の異なる海外でのチェーン展開はハードルが高い。それでも海外進出の動きが相次ぐのは、コロナ収束後を見据えても、海外のほうが成長期待が大きいからだ。英ユーロモニターインターナショナルによると、米中の25年のフードサービス市場規模がコロナ前の19年に比べて1割強増える一方、日本は2%減の見通しだ。

イートアンドHDは12年に大阪王将を上海などに出店したものの、採算が取れず14年に撤退した経緯がある。中国は当時に比べて中間所得層がさらに厚みを増し、冷凍機能付きの冷蔵庫も普及した。同社は「冷凍食品の販売も視野に入れられる」とみて再挑戦する。コロナ下で20年に同国から外食店舗を撤退した居酒屋大手ワタミも7月に早くも再進出を果たした。

日本市場は長引くデフレでメニュー単価を上げにくい一方、人手不足で人件費がかさみ、高収益を狙うのが難しくなっている。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎首席研究員は「海外のほうが値上げがしやすく、客単価がとりやすい」と指摘する。東京都に4度目のコロナ緊急事態宣言が発令されて外食需要の本格回復が見通せないなか、海外に活路を求める動きは続きそうだ。

(河端里咲、安藤健太)

外食、接種先行の海外に活路 すかいらーく米初出店: 日本経済新聞 (nikkei.com)