トレーニング専用フードの宅配サービスを行うMuscle Deli(マッスルデリ、東京・渋谷)は、フランチャイズ契約店の募集を開始した。新型コロナウイルスで経営が落ち込んだ飲食店の支援と同時に、リアル店舗への進出を果たす。コロナ禍で生じた双方の思いが、新しいフランチャイズのモデルを作った。

マッスルデリがコロナ禍で困窮する飲食店を支援しながら、テイクアウトやデリバリー事業に進出する
マッスルデリがコロナ禍で困窮する飲食店を支援しながら、テイクアウトやデリバリー事業に進出する
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 マッスルデリは20年4月28日~5月10日、デリバリーやテイクアウトの提携飲食店の募集を実施した。フランチャイズ契約のような仕組みだが、そのモデルは一般的なものと少し違う。同社は、レシピと導入・維持費用として30万円を提携店に提供する。提携店はそのレシピを基にお弁当を作り、デリバリーやテイクアウトで販売をする。デリバリープラットフォームの手数料を引いた売上の10%を提携店が支払う仕組みだ。

マッスルデリが提供する新しいフランチャイズモデルの仕組み
マッスルデリが提供する新しいフランチャイズモデルの仕組み
これまでサブスク型での購入しかできなかったが、テイクアウトやデリバリーを利用することで1食単位での購入が可能になる
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 これまで同社は、サブスクリプション型の宅配サービスのみで弁当を提供していた。「以前からUberEatsなどのデリバリーサービスをしてほしいとの声があった」(マッスルデリ代表取締役の西川真梨子氏)ものの、人材リソースや店舗固定費が課題となり実現できていなかった。そこで、今回のコロナ禍によって店舗家賃や人件費が負担となっている飲食店と提携することで、テイクアウトやデリバリーサービスを可能にした。

 新型コロナウイルスの流行拡大で、店舗を持つ飲食店は感染拡大を防ぐために余儀なく休業したり、テイクアウトやデリバリーへと業態を変え営業したりしている。その一方で宅配サービスを行う同社は、注文数が新型コロナウイルス流行拡大前の2月と比べ、4月は約1.5倍になった。リモートワークの増加や外出を控える動きが広まった影響で、自宅にいながら手軽に健康的な食事をしたいというニーズが増えたことが要因だ。緊急事態宣言の解消後も、しばらくは外食の自粛は続くだろう。テイクアウトやデリバリーがあることは、お店選びの優先事項になるかもしれない。

テイクアウトで小売りを実現

 これまで同社はECサイトで、セット売りのみ販売していた。例えば一番人気の体型を維持したい人向けの「MAINTAINプラン」では、お試し購入(1回限りの宅配)で5食セット5800円、定期購入で5食セット5400円だ。提携飲食店でのテイクアウトやデリバリーでは1食から販売でき、しかも出来たての温かいものを届けることができる。メニューにもよるが、1食1000円~1500円程度を想定しているという。「デリバリーやテイクアウトという今まで自社が持っていなかった窓口を持てるので、これまでマッスルデリを知らなかった層にも知ってもらう機会になり得る」と西川氏は話す。この利点を考慮し、一般的なフランチャイズ契約で発生するライセンス料や初期加盟費用は取らない。

 提携店は初期導入費用として30万円入るだけでなく、人件費や店舗固定費を無駄にせずにすむ。また提携したとしても、もともとの自社事業を続けることができるので、メニューを増やすことになり、顧客層の幅が広がる可能性がある。

 東京都の一部エリアという限定的な募集だったが10店舗ほど応募があり、「まずは1~2店舗と提携し、徐々に提携店舗数を増やしていきたい。新型コロナウイルス感染症収束後も継続して、マッスルデリの食事を販売してくれる店舗と提携したい」と西川氏は期待する。同社は今後フランチャイズやポップアップショップなど、店舗の展開も検討しているという。

 マッスルデリは、体づくりやダイエットに取り組む人に栄養バランスの取れた食事を提供するサブスク型の宅配サービスだ。管理栄養士がカロリーや栄養素を計算し献立を立て、40種類以上の中からさまざまなメニューが冷凍で届く。

マッスルデリの弁当の一例
マッスルデリの弁当の一例
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 プランは減量したい人向けの「LEAN」(5食セット4900円、10食セット9400円)、体型を維持したい人向けの「MAINTAIN」(5食セット5400円、10食1万400円)、増量したい人向けの「GAIN」(5食セット6400円、10食セット1万2400円)から自分の目的に合わせて選び、配達周期は毎週、隔週、1カ月から選択できる。アスリートやトレーニングをしている人、健康志向の人を中心に注目を集め、20年4月には月間4万5000食にまで成長している。カロリーだけでなくたんぱく質など個別の栄養素の数値まで記載しており、自身で手軽に栄養管理できるのが受けている。

(写真提供/マッスルデリ)