米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのビデオ会議サービス「Zoom」の対抗サービスが続々と登場している。米フェイスブックは米国時間の2020年4月24日、メッセージアプリ「Messenger」などの動画機能を強化すると発表した。複数の仮想的な会議室を作ることが可能で、相手がIDやアプリを持っていなくても利用できるようにする。米グーグルは企業向けのサービスを個人でも利用できるようにする。

「Messenger Rooms」を説明するマーク・ザッカーバーグCEO。ミーティングを開催するための仮想ルームを設定できる
「Messenger Rooms」を説明するマーク・ザッカーバーグCEO。ミーティングを開催するための仮想ルームを設定できる
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 Facebook上のビデオ配信で記者会見したマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、新型コロナウイルスの拡散防止に協力していることを述べたうえで、新たなビデオ通話機能について説明し始めた。

 背景にあるのはZoomの利用者急増だ。2019年末に1日に約1000万人だったZoomの利用者は、2020年4月末までに同3億人を超えた。Facebookは20億人以上の利用者がいるが、無視できない存在になってきた。

 対抗策としてFacebookのメッセージアプリであるMessengerに、Zoomのような使い勝手を追加する。

Messengerで50人までの友人とビデオ通話が可能となる(出所/米フェイスブック)
Messengerで50人までの友人とビデオ通話が可能となる(出所/米フェイスブック)
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 「Messenger Rooms」は、特定の友人などに参加してもらう仮想のビデオ会議室だ。50人までのユーザーが時間無制限のミーティングを利用できる。Zoomの無料サービスでは、3人以上のユーザーがビデオ会議に参加する場合のミーティング時間は40分間に制限される。

 用途ごとに「Room」を作って、家族や友人に参加を依頼するリンクを送るといった使い方になる。SNSアプリのFacebook上でも、ビデオを共有する「Story」のエリアの上に各Roomが配置される。

アカウントがなくてもスマホやPCから参加可能

ミーティングの時間を設定し、リンクを送ることで参加できる(出所/米フェイスブック)
ミーティングの時間を設定し、リンクを送ることで参加できる(出所/米フェイスブック)
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 Zoomのように接続先を柔軟に選択できるのも特徴だ。相手側は対応するアカウントを持っていなくても、リンクをクリックするだけで参加できるようになる。スマートフォンだけでなく、パソコンからも利用できる。

 このほか有料課金が可能なイベント・セミナー機能も提供していく予定だという。

 4月末からいくつかの国で随時提供を始め、数週間で全世界に拡大する。Messengerだけでなく、写真共有アプリの「Instagram」やメッセージアプリの「WhatsApp」、ビデオ会議用ハードウエア端末の「Portal」などにも同様の機能を追加していく予定だという。それぞれのサービス間でも接続できるようにする。

WhatsAppのグループ通話機能(出所/米フェイスブック)
WhatsAppのグループ通話機能(出所/米フェイスブック)
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 WhatsAppでは8人までのグループでビデオ会議できる機能も導入する。ザッカーバーグCEOは、エンドツーエンドの暗号化を実現していることを強調していた。

デートアプリの「Facebook Dating」。仮想デート機能を備える(出所/米フェイスブック)
デートアプリの「Facebook Dating」。仮想デート機能を備える(出所/米フェイスブック)
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 このほかデートアプリの「Facebook Dating」でも新型コロナ対応と言える機能を追加した。アプリ上のビデオ機能で交流できる仮想デート機能を導入する。数カ月以内に導入する予定だ。

 新型コロナウイルスの影響でZoomを個人間で使うケースが増えている。フェイスブックにとってはそうした交流の場を、取って代わられることへの危機感が大きい。

 ザッカーバーグCEOは批判を浴びたZoomのセキュリティー問題を念頭においてか「我々は標準的なプライバシーとセキュリティーを意識して実装している。部屋(Room)に知らない人が入ってこないようにロックできる」と説明した。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00109/00086/?n_cid=nbpnxr_mled_mainlink