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今回は「生活者行動の決定要素のプロセス」で「心理的特性」について説明しよう。
市場調査の意義と方法④ |
[3]生活者行動の決定要素とプロセス(2)
(5)心理的特性
① 動機
「動機」というのは、人々の「ニ-ズ」や「ウォンツ」を満たすための心で、それを達成しようとする心理的な状況をいう。「動機」に関する理論としては、フロイト、ハ-ズバ-グ、マズロ-の理論が代表的である。
【フロイトの動機理論】
フロイトは、人々は多くの場合、自分の行動の真の動機を意識していないと考えている。フロイトは、人は成長に伴い、多くの衝動を抑えていくが、それらは潜在的に残り、夢の中や、言葉の端に現れるとしている。また、自分自身の動機を完全に理解することはできないとしている。
フロイトの理論をマ-ケティングに活用したのが、ア-ネスト・ディクタ-で、意識下の動機という観点から購買状況および商品選択を説明して、これを「モチベ-ション・リサ-チ」と呼んでいる。ディクタ-や他のモチベ-ション研究者は、少数の生活者から深層の情報を収集し、購買の動機を明らかにした。その内容としては、「連想語法」「文章完成」「図解法」「ロ-ルプイング」などがあけられる。
【ハ-ズバ-クの動機理論】
ハ-ズバ-クは、「動機づけ」に、「不満足要因」と「満足要因」があるとし、「不満足要因」というのは、それがなくては不満足を感じるが、あったからといって満足を感じるものではないとしている。
これは何を意味しているかというと、「不満足要因」を取り除く努力が重要ではあるが、それと同時に、お客様が満足をするような要因をつくりださなくては、「動機づけ」に結びつかないというものである。
【マズロ-の動機理論】
「マズロ-の欲求段階説」は、「動機づけ」について、よく表わしていて、購買の意思決定に大きな要因となっている。
自己実現の欲求 | ←自己実現的ニ-ズとウォンツ ←自己啓発と実現 |
↑
尊敬の欲求 | ←尊敬的ニ-ズとウォンツ ←自尊心と自信をもちたい |
↑
帰属欲求 | ←社会的ニ-ズとウォンツ ←何かに所属したい |
↑
安全欲求 | ←安全的ニ-ズとウォンツ ←危険や脅威から身を守る |
↑
生理的欲求 | ←生理的ニ-ズとウォンツ ←飢え、かわきを満たす |
② 知覚
動機づけされた人は、行動の準備段階にある。動機づけされた人がどのように行動するかは、その人が状況をどのように「知覚」しているかによって影響を受ける。「知覚」は、「視覚」「聴覚」「臭覚」「触覚」「味覚」という「五感」を通して情報の流れを把握し、刺激について学習する。
しかし、人々は自己の固有の方法で知覚情報を収集し、分析して理解をする。したがって、「知覚」というのは、人々が自己の感覚によって選択し、理解した情報によって「自己実現」を行うプロセスといえる。
【選択的接触】
人々は、生活のあらゆる時点で、膨大な量の情報に接触する。しかし、個人個人がこれらのすべての情報に注目をすることは不可能である。したがって、ほとんどの情報は選択されてしまう。したがって、「選択的接触」に値するものは、個人の「ニ-ズ」や「ウォンツ」に合致する刺激するものでなければ効果は高まらない。
【選択的偏向】
外部からの情報は、生活者に注目されたとしても、そのまま発信者の意図どおりに受け入れられるとは限らない。人は、自分自身で形成している知識で情報を解釈するものである。したがって、選択的偏向とは、情報の発信者が受信者の認識構造を理解して、刺激を与えなければならないということである。
【選択的記憶】
人々は、自分の「ニ-ズ」や「ウォンツ」に合った情報は記憶をしているが、多くの情報は忘れてしまいがちである。「選択的記憶」を重要視するということは、イメ-ジが重要視されていることである。イメ-ジというのは、ブランドや商品が生活者に「知覚」されていることであり、他社との比較に有効な手段といえる。
③ 学習
人は行動を起こすことで、「学習」をするのである。「学習」というのは、経験から発生する個人の行動の変化である。人の多くの行動というのは、「学習」されたもので、欲求、手がかり、反応、強化の相互作用を通じて行われるものである。
「学習」から導入できることは、既存商品と似通った欲求に訴求して、似通った刺激を提供することである。この理由は、生活者は異なったブランドより似通ったブランドを志向しがちであるからである。
学習のプロセスは、次の通りである。
1.欲 求:「ニ-ズ」と「ウォンツ」の「感動」を促す刺激
2.手がかり:動因を手がかりに対して採られる行動
3.反 応:動因を反応に導く刺激
4.強 化:同一反応を生ずる確率を増殖させる行動
④ 信念と態度
人は、行動や学習を通じて「信念」や「態度」を形成するものである。「信念」というのは、人が何かについて抱く記述的思考である。企業は、生活者が商品やサ-ビスに抱いている「信念」に対して大変な関心を持っている。これらの「信念」というものは、商品やサ-ビスのイメ-ジを作りあげていくものであり、生活者の行動は「信念」に基づいているものである。
人は、あらゆる事象などについて、何らかの「態度」というものを持っている。「態度」というのは、ある対象や考え方に対して抱いているものである。これには、持続性のある好意や非好意的な認知や感情や行動である。「態度」というのは、物事に対する好き嫌いのアプロ-チをするものである。
「態度」も学習されたもので、商品に対する観察、使用、コミュニケ-シヨンなどを通じて形成されていくもので、広告やサンプルで生活者の「態度」を形成させていくことが考えられる。「態度」は、類似の対象に対しては、一貫した行動をとりがちであるので、なかなか変容はしない。したがって、商品を「態度」にあわせるようにしたほうが効果的である。
(6)生活者行動モデル
コトラ-とア-ムストロングは、「生活者行動モデル」として、次のように説明している。
マ-ケティングの刺激 | その他の刺激 |
製品 価格 流通チャネル プロモ-ション | 経済的 技術的 政治的 文化的 |
↓
購買者のブラック・ボックス | |
購買者の諸特性
| 購買者の意思決定プロセス |
↓
購買者の反応 |
製品選択 ブランド選択 ディラ-選択 購買のタイミング 購買量 |