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2018-02-25 12:05:00

今回は、いよいよ「個性化戦略」について、「コンセプト」と日本の事例で説明しよう。その中でも今回は「お客様の個性化」と「商品の個性化」である。

 

個性化戦略(19

 

[8]個性化戦略について

 

 「マ-ケティング戦略」の動向も、第1世代の「差別化戦略」による市場細分化によって、「潜在需要開発」を中心とした「業種から業態への転換時代」から、第2世代の「競争戦略」による市場細分化によって、「真空需要開発」を中心とした「業態確立の本格化時代」から、第3世代の「個性化戦略」による「市場裁断化」によって、「深層需要開発」を中心とした「フォ-マット時代」へと発展させていく必要がある。

 「差別化戦略」や「競争戦略」というのは、あくまでも企業間の競争のための戦略であり、お客様の立場からとられた戦略ではない。これから必要なのは、お客様から選ばれる戦略で、しかも個人個人から見たお客様の立場を志向する戦略が不可欠になってきた。

 つまり、お客様に「感謝」を提供する「ハイ・クォリティ・オブ・ライフ」の戦略が「個性化戦略」であり、21世紀には必要不可欠である。

 

(1)お客様の個性化

 すべてのお客様にご来店を願おうとすると、きわめてあやふやなコンセプトづくりになってしまうので、訴求をするお客様を絞り込むことが必要になる。これを、「お客様の個性化」という。

「お客様の個性化」の好例としては、「モスバ-ガ-」があげらる。一般的なハンバ-ガ-・ショップは、高校生以下が多いが、「モスバ-ガ-」は、OLや大学生を対象にしている。ただし、訴求している以外のお客様は大歓迎であるが、企業として訴求対象は絞り込んでいれば問題にならない。

 このように、「個性化戦略」を志向する場合は、まず第1に「訴求対象」を思い切り絞り込むことが最大の要件になる。ここが中途半端であると、あらゆる客層に目がいってしまい、ビジネスが何を訴えているのか、お客様が皆目わからなくなる危険性をはらんでしまう。

 現在、売上が落ち込んでいる企業の最大の欠陥は、お客様を絞り込んでいないことがあげられているにもかかわらず、絞り込むことに臆病であり、売上の低迷の原因を他に転嫁しているので、ますます業績は低下してしまっている。

 

(2)商品の個性化

 お客様に愛されるということは、「ビジネス・フォ-マット」がト-タルで確立されていることであるが、その中心は誰が何と言おうと「商品」そのものである。これはどんなに世の中が進歩しようが、「ヒドノミクス」の時代であっても、その要件にマッチした商品づくりが中心でなければならない。

 フ-ドビジネスで言えば、最大のポイントは商品そのものの魅力であり、「商品の個性化」というのは、お客様が「○○」を食べたい時に行かれる店の特徴のある商品のことで、どこの店でもある商品ではないことある。つまり、物真似ができない商品のことである。

 「商品の個性化」の好例としては、「モスバ-ガ-」があげられる。「モスバ-ガ-」では、お客様は味には正直で、本当に美味しいものがあれば、遠くからでも足を運ばれるという信念がある。この信念を実現するために、誰にも真似のできない美味しさづくりがなされている。

 一般的にはハンバ-ガ-の味というものは、アメリカン・スタイルがほとんどで、美味しいという感覚が湧かないが、「モスバ-ガ-」の商品は、これらのイメージをまったく一新してしまった。その代表的な商品は「テリヤキバ-ガ-」で、まさしくモスの代名詞的存在であり、他のチェ-ンも追随ができ得なかった個性化された商品である。

さらに、1986(昭和62)12月に販売された「ライス・バ-ガ-」は、最高の傑作である。「ライス・バ-ガ-」は、「創造的破壊によるイノベ-ション」の賜物である。

他社が真似をしても似ても似つかないもので、何時の間にか消えてしまったほどである。  「テリヤキ・バ-ガ-」は、しょう油とミソをベ-スにした画期的なタレ・ソ-スを使用したハンバ-ガ-である。

この商品は若い人はもちろんのこと、ハンバ-ガ-に抵抗のあるシルバ-族までも魅力のとりこにしてしまったほど、商品のオリジナル性というものが追求されている。

 「モスバ-ガ-」の商品開発の基本的な考え方は、一流料理店の一品料理を安い価格でお客様に提供しようという考え方である。

つまり、オ-ル・ビ-フが主流のハンバ-ガ-のパテを牛肉と豚肉の合挽きでつくり、他のチェ-ンのパテが45gなのを60gにし、パンもバサバサしたものでなくジュ-シ-にして、何となく味気のないハンバ-ガ-に、美味しさというものを加えてお客様に提供したのであった。

 「ライスバ-ガ-」は、洋風化が進んだ中でも、お米は健康食、ダイエット食と見直されている。そこで、ハンバ-ガ-という商品はバンズと肉という固定概念をくつがえしたものを誕生させたのであった。

 この商品開発は、「洋風+和風」ではあるが、たんに小手先の和風でないところが素晴らしい。つまり、「バンズ」を「ライス」に変えてしまったことにある。

「ライス」の部分は炊き立てのご飯を厚さ約1cmのプレ-トに、外側は濃い口しょう油で、内側はみりんじょう油で、それぞれ香ばしく味つけし、表面をサット焦がして出来上がっている。

中味の「つくね」は中荒挽きしたチキンを、タマネギと幸甚量でピリット味付けしている。そこに、タマネギ、インゲンを入れ、テリヤキソ-スでさらに良い味を生み出している。

 「モスバ-ガ-」は、1997年(平成9年)に、「新価値宣言」で食材の見直しを行い、国内の協力農家に農薬と化学肥料を極力使わず育成された野菜、オ-ストラリア南部のタスマニア州とニュ-ジランド南島で放牧し育成した牛肉によって、「モスの野菜」「モスのビ-フ」として安心・安全・健康をお客様に訴求している。

2002年(平成14年)から「創作料理」として商品開発を行っているが、「モスバ-ガ-」は、「ファ-ストカジュアル」への転換を図っている。

「モスフ-ド」の企画している「ファ-ストカジュアル」というのは、「高級レストランな並の質の高い商品を、ゆったり落ち着ける快適な空間で、丁寧なサ-ビス」というもので、現在を「赤モス」としていているのに対して「緑モス」として看板から転換をした。

 「創作料理」でエポックメ-キングは、2004年(平成16年)8月に販売を開始した「ニッポンのバ-ガ-匠味」で1日の販売は時間や数量を限定しているとはいえ、「緑モス」のブランドイメ-ジを高めている。

さらに傑作なのは、「モスの菜摘」シリ-ズである。この商品はハンバ-ガ-のバンズの代わりにレタスを使用していて、ライスバ-ガ-と同様に創造的破壊を行った商品として人気上昇中である。