2017年ももうすぐ終わり。連載「話題の商業施設オープン速報」で、グルメトレンドライターの桑原恵美子氏が取材した飲食店や食のショップは100店以上。うち、実際に試食して味を確かめた店は約80店。その中でも特に桑原氏の印象に残った飲食店をベスト5形式で紹介する。
第5位「芋園」(MeetFresh 鮮芋仙)
今年人気を呼んだスイーツには濃厚さを売りにしたインパクトの強いものや、見た目に新奇性がある派手なものが目立った。そんななかで、2017年4月、赤羽にオープンした台湾スイーツ専門店「MeetFresh 鮮芋仙」(ミートフレッシュ・シェンユイシェン)の看板スイーツの「芋園」は拍子抜けするほど素朴な味が印象に残った。
黒砂糖で作ったシロップに、芋園(芋で作ったグミのような食感の団子)、あずき、タロイモ、タピオカが入っている。シロップの甘さは物足りないほど控えめだが、そのおかげで芋や豆本来の甘さがはっきり感じられる。芋園のもっちり感、タロイモのねっとり感、ゆであずきの柔らかさ、大きめのタピオカの弾力といった食感の違いも楽しい。例えるなら“地味ゆえの奥深い味”で、穀物を主食として味わって来たアジア圏の人々が共通して好きな甘さではないだろうか。スイーツなのに罪悪感なく食べられ、むしろ健康食のような安心感があるのは、動物性の食材を使っていない穏やかな味だからだと最後に気が付いた。
第4位「まるまる一羽! HULIHULI チキン La Ohana」(ラ・オハナ)
2017年6月に横浜・本牧にオープンした、すかいらーく初のハワイ料理専門店、「La Ohana(ラ・オハナ)」1号店。その看板料理が、鶏肉を直火焼きしたハワイ料理・HULIHULI チキンだ。1羽まるごとで1280円という激安価格にも驚いたが、出て来た鶏の大きさにびっくり、食べてみてその軟らかさ、ジューシーさ、力強いうまみにびっくり……と驚きの連続だった。特に、パサつきがちな胸肉まで滴るほどの肉汁があったのは衝撃。肉そのものの味付けが絶妙だったので、添えられたソースは使わずじまいだった。
料理は低価格ながら、「ハワイの上質なリゾートホテルの空間をイメージした」(すかいらーく)という内装は高級感がある。それもそのはず、改装などにかかったコスト(店舗投資額)は、すかいらーくの通常店に業態変更した場合の約2倍だという。ハワイを体験させる仕掛けにこれだけの費用をかけ、この価格で料理を提供できるのは、グループ全体で約2800店舗を展開しているパワーがあるからこそだろう。「専門性を前面に出したブランドは成長スピードが速い。同じ場所でも専門店であれば遠くから食べに来る人が増えるので、商圏が大きく広がる」(すかいらーく)という言葉に、ファミレス業界の生き残りの厳しさを感じた。