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今回は、「ウエンディズ」の「店舗に対する競争戦略」について、説明しよう。
個性化戦略(12) |
(6)店舗に対する競争戦略
①店舗デザイン
1.店舗デザインの明確化
「ウエンディズ」の店舗デザインは、従来のハンバ-ガ-・チェ-ンと比較して思い切った明確化を図った。店舗そのものは、大きな窓ガラスで明るくしているところは、いままでのファ-ストフ-ドの店舗と変わりはないが、ファサ-ドに思い切って黄色を使っているところにまず驚かされた。
「ウエンディズ」の看板には、店のネ-ミングとなった創業者ト-マスの2番目の娘の顔が飾られ、その顔の周囲には、「Quality is our recipe」と表現されているが、いかにも品質を重視しているかをうたっている。
2.店内について
次に驚かされたのは、店内に一歩入った時である。壁にはすべて温かい木質のパネル材が使われているが、オ-ダ-・カウンタ-とダイニング・ル-ムの間には、ビ-ズで装飾されている。
オ-ダ-・カウンタ-やお客様のテ-ブルは、すべて1910年代の新聞や広告を飾ってあり、オ-ルド・ファッションを的確に表現している。また、従来のハンバ-ガ-・チェ-ンのお客様の椅子は固定されていて、長時間座っているのには不向きであるが、「ウエンディズ」の椅子は曲げ木で、しかも固定されていた。
店内全体の雰囲気は、他のハンバ-ガ-・チェーンよりは、はるかに豪華で、ゆったりと落ち着いているところは、まさにアダルトの世界を醸し出している。ダイニング・ル-ムは隅から隅まで、なんとカ-ペットが敷きつめられていて、ランプはティファニ-・スタイルで、ノスタルジックなデコ-ルでお客様を喜ばせている。
②ドライブ・スル-・システム
1.トライブ・スル-・システムのブ-ム
「ドライブ・スル-・システム」というのは、お客様が車に乗ったままで、オ-ダ-・ボックスで注文し、車を降りずにドライブ・スル-・ウインド-より商品を受け取っていけるシステムである。
「ウエンディズ」では、ダウンタウンのように、このシステムが採用できない場合を除き、何と第2号店から全店に採用した。この結果、いまではハンバ-ガ-・チェ-ンばかりでなく、ファ-ストフ-ドのどのチェ-ンでも採用しなくてはならないほどのブームを沸き起こした。
2.従来のドライブ・スル-・システム
「ドライブ・スル-・システム」は、何も「ウエンディズ」が元祖ではなく、すでにハンバ-ガ-・チェ-ンの「ジャック・イン・ザ・ボックス(Jack―In-The―Box)」とか、ホット・ドッグ・チェ-ンの「ウインナ-シュニンツル(Winerschninzle)」が採用していたが、どちらというと、両チェ-ンとも客席がまったくないか、あるいはあっても、ほんのわずかという程度で、どちらかというとテイク・アウトを主体としていた。
3.ドライブ・スル-・システムの利用度
最近の傾向としては、ファ-ストフ-ドのチェ-ンといえども、お客様も客席に座ってゆっくり食事を味わいたいという「ニ-ズ」が高くなり、客席数は増大していて、店舗の建設コストは高まっている。
しかし、「ウエンディズ」は、店舗コストを軽減する目的もあったが、それよりもお客様はハンバ-ガ-を召し上がるのに、わざわざ車を降りるより、そのままオフイスや家庭に持ち帰るお客様が思っていた以上に多いことが判明し、その利用度が何と30~40%になるので、全店の採用につながった。
4.他社の動向
「ドライブ・スル-・システム」の旋風が起きたものの、他のチェ-ンは新設店ならいざしらず、既存店はドライブ・スル-用の車の乗り入れができるような面積がないために、完全においてきぼりになってしまった。
しかし、「マクドナルド」は、世界の王者であることを見せつけた。つまり、この旋風に乗り遅れずに、積極的にドライブ・スル-・システム併用型に転換させたのであった。
③店舗オペレ-ション・コスト
1.設備投資と売上高
「ウエンディズ」の標準店の規模は、店舗面積が2200平方フィ-トで、「マクドナルド」の店舗面積の3700平方フィ-トの60%、「バ-ガ-・キング」の3000フィ-トの70%で、1店当たりの設備投資が「マクドナルド」の50%、「バ-ガ-・キング」の60%と少ないにもかかわらず、売上高は「マクドナルド」の90%で、何と「バ-ガ-・キング」より約20%多い。
2.投資回転と利益率
投資回転が、「ウエンディズ」が2回転、「マクドナルド」が1.5回転、「バ-ガ-・キング」が1回転である。
また、売上高対人件費率が「ウエンデイズ」が15%、「マクドナルド」が22%、「バ-ガ-・キング」が28%と高くなっている。この結果、税引前純利益率が何と「ウエンディズ」が23%、「マクドナルド」が18%、「バ-ガ-・キング」は10%となっている。