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寿司やラーメンもう古い?NYの日本食が多様化
うどん専門店「つるとんたん」は有名店の跡地に出店
ニューヨーク市の日本食シーンで次なる目玉となるのは、ラーメンあるいは寿司とは関係ない。植松錠史氏(36)はそう考えている。
植松氏は日本で人気のうどんチェーン「つるとんたん」の海外第一号店を同市で出店する準備責任者だ。
その賭けは決して小さなものではない。店が入るのはレストラン業界の大物ダニー・マイヤー氏が経営する有名レストラン「ユニオン・スクエア・カフェ」が入っていた場所だが、植松氏によれば、資金パートナーたちは改装に200万ドル(約2億円)を投じた。全128席のおしゃれなうどんレストランは数週間後にオープンする予定だ。
植松氏は、通行人やソーシャルメディアから得た反応で判断する限り、成功に自信を持っている。
ニューヨーク市内にある日本食レストランはますます専門化しており、東京や大阪の日本食シーンと変わらなくなりつつある。ニューヨーカーたちは今や、数あるニッチ志向のレストランでさまざまな日本食を選択している。たこ焼きから、抹茶入りスポンジケーキ、カツカレーなど多種多様だ。
こうしたなか、既に目立つプレーヤーも複数登場している。日本国内で定食専門店など235店舗を展開する大戸屋は、マンハッタンに3店舗オープンしている。米国大戸屋はまた、2015年にミッドタウンに高級天ぷら店「天婦羅まつ井」を開業した。天ぷらは、近隣の日本食レストランでは前菜として出されることが少なくないが、同店ではそれがメインで、お任せコースが1人当たり200ドル(約2万円)を超える場合がある。
同市の外食産業でもう一つ名が通っているのは、マンハッタンでいくつもの店舗を運営するT.I.C.レストラングループだ。傘下にはカレー専門店のほか、日本酒中心のレストラン「酒蔵」などがある。
その他の日本食レストランの進出も予定されている。すき焼きの「浅草今半」は来年にニューヨーク店をオープンする計画だ。
外食産業の専門家によれば、多様な日本食ブームは、幾つかの要因が寄与している。顧客たちは、本で読んだりテレビで見たりした世界中の料理を食べてみたがっている。そのなかでも日本食が抜きんでているのは、比較的軽めの食事で、品質が高く、周到に仕入れた材料に力を入れているからだ。
ニューヨークの日本食ダイニングの世界では、比較的新しいコンセプトの店舗は料金が比較的安く、ミレニアル世代にとって魅力的なものが多い。ニューヨーク市内で6店舗を展開する「ゴーゴーカレー」は、大半の商品が5~10ドルだ。
ゴーゴーカレーUSAの大森智子社長は、米国では時として、日本食と言えば高価な寿司だと誤解されていると指摘。「品質がすべてだが、われわれが提供しているものは安価でもある」と述べた。
このように極めて多様化した日本食レストランのすべてが成功するかどうかは分からない。だが、進出したレストランがたとえ経済的に大成功を収めなくても、ニューヨークに店を構えていること自体が遠く日本にメッセージを送ることになる。
ニューヨークの日本カルチャーを紹介する英字誌「チョップスティックスNY」の古村典子編集長は、「ニューヨークは、日本にいる食品業界関係者にとって常に夢の都市なのだ」と述べている。