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メニューを吟味する必要がない、気まずい「間」もない――
シェフが選んだ魚を次々に供する米国の「おまかせ」日本料理店で、顧客や見込み客を接待する米企業幹部が増えている。
客たちによると、おまかせスタイルの店は高級ステーキハウスに代わる接待の場としてもてはやされている。ただしコストは2倍。6~10皿のコースで1人80~150ドル(9000~1万7000円)にもなる。
企業幹部らは、おまかせコースは商談に適していると話す。メニューを吟味しながら雑談する必要がないため、すぐにでも本題に入れるためだ。テーブルを囲む全員の皿が同じタイミングで運ばれるため、気まずい思いをすることもない。
スター・レストランツが保有する飲食店モリモト(フィラデルフィア店)のゼネラルマネジャーは、「商談のお客さんは決めることに疲れている」ため、食べる物まで決めたくないのだと話す。この店では、8皿のおまかせランチやディナーを65ドル、100ドル、150ドルで提供している。
おまかせコースの売上高は増加しており、昨年は約5%伸びた。おまかせのディナーは約70%がビジネス利用だという。
おまかせコースの注文に慣れたホストは、まるでナレーターのように接待相手に料理を説明しながら、信頼できそうな雰囲気を醸すことがある。そう語るのは飲食店15店を擁するイノベーティブ・ダイニング・グループのパートナー、リー・マエン氏だ。同グループがカリフォルニア州ウエストハリウッドで運営する「Roku」は、6皿のおまかせランチとディナーを80ドルで提供している。
客の多くは、丹精込めて用意された料理が次々に出されると、かしこまった食事の席が明るくなると話す。ただし、商談をするより料理をまじまじと見る時間が増えるかもしれない。魚介類中心のおまかせコースは、よどみなく静かに流れる点が多くの人に気に入られている。同席者が大きなステーキを切っている時のような気まずい「間」もない。
ボカ・レストラン・グループの「モモタロ」のマーク・ヘリヤー氏は、前の料理が終わる30秒前に次の皿が運ばれるようにしていると話す。コースは平均13皿だが、全部で2時間もかからないという。
ニューヨークのブルーリボン・スシ・バー・アンド・グリルのおまかせコースでは、魚料理以外の料理も出している。ブルーリボン・レストランツの共同創業者によると、オックステールのフライドライスやチキンウイングが入ることもある。そうしたアレンジで商談客がさらに増えているという。