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2015-10-31 16:12:00

「おもてなし」の第14回として、フランスのパリのミシュラン・ガイドの三つ星レストラン「マキシム・ド・パリ」が日本に出店して、「真のサービス」について日本人の心に植え付けたので紹介しよう。さらに、日本万国博覧会によって、世界の料理が日本に紹介され、アメリカの企業が日本に進出した状況についても説明しよう。

 

(6)マキシム・ド・パリ

 現在は、フ-ドサ-ビス産業として位置づけられているが、1960年代までは、飲食業とか水商売とかと揶揄されていて、社会的地位はかなり下にみられていた。このような中で一番驚かされたのは、1966年(昭和41年)5月に東京・銀座ソニ-ビルに開店した「マキシム・ド・パリ」であった。

「マキシム」というのは、当時フランスのパリでミシュランガイドの三ツ星に輝いて、その店が再現されたものであった。当時のソニ-のファンダ-であった盛田昭夫のアイデアと進出にあたって、尽力されたことはあまり知られていない。当時、わが国には本格的なフランス料理の店はほとんどなかったが、「マキシム」はフランス料理の発展に大いに貢献した。

 「マキシム・ド・パリ」の店の格調の高さと最高の料理は、最高と芸術であるが、接客サ-ビスについては、当時のパリ「マキシム」の社長であるポ-タブルは「真のサ-ビスとは、一人の男の人生を捧げつくしても、到底極めることができぬ“最高の芸術”だ」と説明しているが、これがレストラン・ビジネスにおいて格調高いサ-ビスの重要性についての始まりであった。

 

(7)日本万国博覧会

 日本の飲食業界に驚愕が走ったのが、1969年(昭和44年)3月に第二次資本の自由化で、あたかも鎖国時代の1853年7月(嘉永6年)にアメリカの特使ペリ-が浦賀に現われ日本に開港を迫るために黒船で来日をしたのを称して黒船来るというように飲食業界は騒然となった。

これに追い討ちをかけるように、1970年(昭和45年)大阪北千里で3月14日から9月13日間開催された日本万国博覧会(EXPO70)で、世界から77ケ国が参加して、各国のパビリオンでは、その国の自慢料理を味合うことができるだけでなく、接客サ-ビスの良さについては多くのレストラン経営者に衝撃を与えた。

特に、アメリカよりケンタッキ-・フライド・チキンやハワ-ドジョンソンが出展し、巨大な売上をあげているのを目のあたりにし、アメリカの黒船の威力に驚くと同時に、レストラン経営者の危機観を持つ動機となった。

この日本万国博覧会は、世界の祭典ではなく、わが国の人々に海外旅行ブ-ムを呼び起こすとともに、レストラン経営者ばかりでなく、お客様にとっても世界的な接客サ-ビスの良さに関心を持つようになり、日本の接客サ-ビスを見直すようになった。

 

(8)アメリカ企業の日本進出

 資本の自由化によって、特にアメリカの企業の日本進出はめざましく、日本の企業が数多く倒産するのではないかと、予測しているマスコミや識者がいた。しかし、結果として日本の飲食業界をフ-ドサ-ビス産業の確立に大いに貢献したのであった。

アメリカ企業の日本進出の主な企業としては、「ケンタッキ-・フライド・チキン(KFC)」が、1969年(昭和44年)11月新宿高野が7店舗の集合体ワ-ルドスナック・アルキペゴラに出店、日本万国博覧会にも出展していたが、本核的な出店は三菱商事と合弁会社を設立し、1970年(昭和45年)11月:名古屋名西ショッピングセンタ-であった。

ついで、ダスキンがフランチャイズ契約によって、「ミスタ-・ド-ナツ」を1971年(昭和46年)4月大阪郊外の箕面に出店した。「マクドナルド」は藤田商店と合弁会社を設立して、1971年(昭和46年)7月東京銀座の三越の店頭に開店した。またイト-ヨ-カ堂がフランチャイズ契約によって、「デニ-ズ」を1974年(昭和49年)4月神奈川・上大岡のイト-ヨ-カ堂に併設して開店した。

 これらの企業に共通している点は、「店舗運営の原理原則」として「Q=Quality:品質第一」「S=Service:最高のサ-ビス」「C=Cleanliness(清潔感一杯)」の通称「QSC」と言われるもので、さらにチェ-ン・オペレ-ションの三大原則として、「Simplification:単純化」「Standardization:標準化」「Specialization:専門化」の「3S主義」をもたらし、

わが国の飲食業界に新たな息吹を吹き込むと同時に科学的な思考によって、産業化を目指すようになった。

 これらのなかで、「マクドナルド」のメニュ-ボ-ドに「スマイル0円」とか、「デニ-ズ」の来店客に対してデニ-ズ・レディの「いらっしゃいませ!デニ-ズへようこそ!」などで、接客サ-ビスについて日本の業界でかなりの話題になった。