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2020-09-27 17:40:00

 

今回は、新原浩朗著「日本の優秀企業研究」日経ビジネス人文庫(2006)を紹介しよう。新原浩朗は、独立行政法人経済産業研究所コンサルティングフェロー。専門分野は、企業論、産業組織論で通商産業省では、通商産業省で産業政策関係の多くの法案作成に携わっている。

 

現代経営者の条件(20)

 

 

 

[6]日本の優秀企業研究

 

(1)分からないことは分けること

 

①分からない事業をやらない勇気

 

1.取り組む事業の範囲についての考え方で、「分からないことは分けること」

 

経営者が自分で分かっていない事業を自分の責任範囲の事業としては手がけていけない。そういうときは、他に分けなければならない。取り組む事業の範囲については、社長の現場感覚が必要である。

 

優秀企業の経営者は、自企業が取り組むべき事業の範囲を明確に認識している。特に、その会社が取り組むべきでない事業が明確であり、経営者が分からない事業は決して手がけない。

 

 

 

2.なぜ経営者の理解の範囲に絞るのか

 

 経営トップが現場の実感を大観できることが重要。現場に自ら頻繁に足を運び、最前線の「普段着」の現場の生情報を肌で感じ取り、意思決定を行うことが不可欠である。

 

成功のためには、現場・現物・現実の3「現」の重視。優秀な成果を収めている企業の社長は、例外なく自身がこの3「現」を体感している。

 

 

 

②シナジ-効果

 

 企業が意味のあるコンセプトがまとまっている場合、狭さとその外側はやらないという境界性があることによって、企業内部での技術や商品の連関性が生まれ、自然発生的なコミュニケ-ションを容易にし、シナジ-(相乗)効果を生む。

 

 

 

③フラットな組織

 

 企業組織のヒエラルキ-(ピラミッド型組織)が重層でなく、フラットな構造にとどまっている場合、経営者とスタッフの間の「顔と顔のコミュニケ-ション」が容易になり、それが商品開発や事業の円滑な遂行に貢献する。

 

 

 

(2)自分の頭で考えて考えて考え抜くこと

 

 「トップが論理的であること」が優秀企業の条件である。優秀の経営者は、例外なくロジカルである。自分の行った一つひとつの意思決定について、実に論理的説明できる。

 

 

 

(3)客観的に眺め不合理な点を見つけられること

 

 改革のため、自社を「客観的に眺め不合理な点を見つけられること」。このためには、「傍流」の経験が不可欠である。

 

 

 

①神輿に乗らない経営:部分最適から全体最適

 

1.利益マインドの確立

 

2.連結指向の定着

 

3.組織の壁の打破

 

 

 

②愚直にくどいくらい伝え続ける

 

 「経営理念」「ビジョン」を社内への徹底するためには、自分の言葉で語る「顔の見える経営者」になること。

 

 

 

③経営理念、ビジョンを形骸化させない

 

 自分の言葉で表現した方向性通りに会社運営を行うという言行一致。

 

 

 

(4)危機をもって企業のチャンスに転化すること

 

 追い詰められたときこそ、冷静さを失わず考え抜いて、危機をつくり出した「隙間」を確実にモノにして、長期的発展に向けた新しい方向性を見出すことである。

 

 

 

(5)身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視すること

 

 良好な成果を示している企業は、資本市場に邪魔されない「自律性」を有している。つまり、自ら生み出したキャッシュフロ-の範囲のなかで、身の丈に合った研究開発、長期投資を行っていくことである。

 

 

 

(6)世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいくこと

 

 優秀企業には「起立」がある。特に、経営者自身が起立(経営者の発言が神の言葉である)であって、スタッフにとっての予測可能性がないというのではなく、経営史やとスタッフの双方を律する自己規律の企業文化が埋め込まれている。