米ウーバーテクノロジーズは、フードデリバリーサービスの「Uber Eats」において、都市部でのドローンによる配達の商用化に向けた実証試験を米サンディエゴで実施する。ファストフードチェーンの米マクドナルドと提携し、配達実験を実施。配達用のクルマとの連携で顧客のカバー率を上げる戦略だ。
ウーバーが2019年6月11日と12日、米ワシントンで開催した。カンファレンス「Uber Elevate Summit 2019」で公表した。規制当局と調整中のため、商用サービス開始の時期については触れなかった。
ウーバーによれば、Uber Eatsは開始から3年以上が経過し、520超の都市でサービスを展開。22万を超えるレストランと提携している。Uber Eatsを担当するリズ・メイヤーダーク ビジネスデベロップメント・シニアディレクターによると、「Eatsを通じて注文された料理は2018年に80億ドル(約8800億円)に達した」という。
このエコシステムをさらに拡大するため、ドローンによる配達の実現を狙う。
ドローンでリレーし30分を8分に短縮
ドローンによるフードデリバリーの特徴は、短時間で配達できること。その分、温かな出来たての料理を届けられる。ウーバーによれば、配達時間(注文から注文者の手に届くまでの時間)は現在、平均30分ほど。例えば、サンディエゴの実験ではマクドナルドに注文すると、ドローンで配達することで8~10分にまで短縮できるという。
ただ、「多くの顧客はドローンが宅配できるメールボックスや、パラシュートで届ける庭がない」(ウーバーのエレベート ヘッド・オブ・フライトオペレーションズのルーク・フィッシャー氏)というのが実態。
そこでドローンのフードデリバリーでは、クルマとの連携を打ち出した。イベント会場の展示スペースに、そのモックアップと、着陸地点となる自動車を展示した。具体的な流れは以下の通りである。
配達車の上にドローンが着陸
マクドナルドの敷地内にある離着陸場に待機しているドローンに料理を積んだのち、ドローンが目的地に向かって飛行。次に、ウーバーの運航管理システムを通じて、配送先の近くにいるUber Eatsの配達者にドローンの出発を通知する。続いて、その配達者が配達先のそばに向かい、その配達者のクルマの上にドローンが着陸。それを配達者が引き取り、料理を注文した顧客に届ける。
ドローンに積載する配達ボックスも展示。それほど大きいものではなく、2~3人分ほどのハンバーガーセットを格納すると一杯になるほどのサイズだった。説明員によれば、積載量5ポンド(約2.27kg)で配達距離が10~20kmのドローンの実現を目指しているという。
集合住宅の高層階の住人などにはドローンで直接届るのが難しいため、こうした方式を考えている。フィッシャー氏は、米サンフランシスコにおける配達パートナーの動きを可視化したCGを見せ、最後の宅配を十分にこなせると強調した。
専用ドローンを開発し、運行システムを横展開
講演では、マクドナルドと2018年に実施した試験飛行の様子を収めた動画を流した。この試験では既存のドローンを利用したが、現在専用のドローンを開発中である。
専用ドローンのローターは「チルト型」で、離陸時には、地面に対してローターが水平(ローターの回転軸を垂直)になるようにし、地面に向けて風を吹き付けて浮上する。浮上後、ローター部が地面に対して垂直、あるいは斜めに傾くように回転させて、水平方向の推進力を得て、目的地まで飛行する。これにより、垂直離着陸を可能にし、巡行時は大きな推力を得やすくすることで高効率な飛行を実現する。 ドローンが確実に車体に着陸できるように、QRコードを目印として利用する。
こうしたドローンによるフードデリバリーには、ウーバーの運行管理システムを利用する。19年7月開始予定のヘリコプターによる移動サービス「Uber Copter」や、2023年の開始を目標に掲げる空のライドシェア「Uber Air」などに向けた「Elevate Cloud Systems」と呼ぶクラウド型のシステムである。
フィッシャー氏は規制当局と調整中として具体的なサービス開始時期については述べなかったが、「ドローン宅配によって、顧客だけでなくレストランの行動も変わる」と意欲を見せた。