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古本屋日誌
平成7年に初版が出た吉田守男の「京都に原爆を投下せよ」の1刷、帯付きが手に入りました。
ぜひご覧ください。角川書店の出版で、後の朝日文庫の白と青のおとなしい装丁と正反対の全体をイエローで包み、帯は漆黒という派手派手しいいでたちでこころおどります。そもそもタイトルからして朝日文庫は「なぜ日本の古都は空襲をまぬがれたのか」とかいうえらい抑えたものになっています。
さて中身ですが京都は原爆投下目標だったこと、ウォーナーが日本の文化財リストを作成して空襲しないように働きかけた話は伝説でしかなく、リストは枢軸国が奪い取っていった文化財の返還を促すためのものだったことが書いてあった。なんでも日本が進出した国から持ち帰った文化財は返却させるが、返却が不可能だった場合にはそれと同等の文化財を日本から持っていくことで埋め合わせをすることになっていて、文化財の価値をランク付けする必要があってそのためのリストなんだそうだ。
まああれですね、アメリカの行為は原爆もそうだが都市の絨毯爆撃など当時の国際法に照らしても明らかな戦争犯罪であり、その加害者どもに媚びへつらうとは見上げたものだよなあ。
私は50代半ばだが、私より一回り上の世代の人には遠慮会釈なくアメリカの批判をする人がいた。
例のニューヨークのビルの事件の際も「今まで散々爆撃やら原爆やらやってた連中がちょっとやられたぐらいでオタオタ騒いで見苦しいよなあ」てなことを言っていた。確かに言わんとしていることはよくわかる。
「漫画アクション」連載の「バスタブに乗った兄弟」の3巻が出た。
東京が突然の海面上昇に見舞われ三階あたりまで水没しあたりには凶暴なサメが出没して襲ってくる。兄が29のデブでブスの引きこもり、弟が17の女とやることしか考えていない高校生コンビが着の身着のまま、バスタブに乗って漂流する話だ。
バカバカしい話で素晴らしい。
さらに細部が妙にリアルで心惹かれる。
同じクラスのとんでもないブスの女に、やりたい一心でこくって、女の方はその気になっていて、こんなカタストロフィーの中でも健気に兄弟を助けてくれる。ところが彼氏の方は「好きでもないのに付き合ってくれ❗️❗️」と言ってしまったことをこの期に及んでも深く後悔していて、つい口にしてしまう。
相手が傷つくことより自分の気持ちが落ち着かない方を優先するわけだから、本当にくだらない男だ。
でもまあ人間はそういうもんだよなあ。読んでいて安心感があって楽しめます。
ディスカヴァー携書から高野陽太郎の「日本人論の危険なあやまち」が出た。
日本人はタテ社会であるとか、集団主義で個性を重んじないなどの過去の様々な日本人論に異を唱える本だ。だいぶ前に高取正男の「日本的思考の原型」にも日本人は一人一人違う箸を使うのに対して、欧米人はフォークやナイフを家族で共用しているから、どちらかというと日本人の方が個人主義的ではないかとの指摘があった。
またハサウェイのハリウッド映画「プラダを着た悪魔」には編集長から息子の幼稚園のお迎えを業務として命じられる編集部員の姿がこれでもかこれでもかと描いてあった。日本では今はもちろんだがかなり前でも明らかに公私混同であって社内で許されることではなかろう。
週刊ポストが「裏面の大阪学」と称してインバウンドや万博に沸く大阪の裏側を暴くとして記事を掲載している。
在日の首都だったこと、山口組が制圧する前にいろんなヤクザがいたこと、ヨシモトが席巻する前浄瑠璃や歌舞伎の上品な文化があったことなどが取り上げてあるが、どれもこれもこれまで言い古されてきたネタばかりでくだらない。
井上章一もコメントしていて「昭和の初めに一大工業都市となり煤煙が市内を覆うようになってしまったためにブルジョアジーは阪神間に居宅を移し、代わりに九州や四国から大量の労働者が流れ込んで芸能も彼らに寄り添うものになった」という。
でも漫才はそれなりに受けたわけだが、浄瑠璃や歌舞伎の衰退は高度成長期以降だと思うけどなあ。
NHK出版新書から更科功の「残酷な進化論」が出た。入手したのは2刷なんだがオレンジの通常のカバーの上からまたグリーンのカバーがかけてあって、都合2枚もカバーが付いている。
中公新書は10万部を突破した場合特別仕様のカバーをまとえる特権が与えられることは井上章一が言ってたなあ。NHK出版も似たようなシステムがあるようだが2刷で10万はない気がするよなあ。
さて中身だが。人間の体は進化の頂点にあるわけではないことを豊富な例をもとに論じている。
肺の機能は大したことはなく、例えば鳥類に比べると彼らが群れをなしてエベレスト級の高山を飛び抜けていけるのに対して、われわれは酸素ボンベがあっても難しい。
人間は尿素を大量の水に溶かして排出しているが、陸上の水に恵まれない環境では極めて不利で、その点鳥類や爬虫類のように尿酸で排出することにしたら、ほとんど水も使わずに排出できて陸上生活にフィットしている。
なるほど、確かにわれわれの身体はベストフィットではないんだろうなあ。