Welcome

古本屋日誌

2020-03-08 00:04:00

坪内祐三は雑誌「ぴあ」に大阪を取り上げたエッセイを長らく載せていた。
磯田敏夫の短編集「道頓堀左岸」を取り上げて「大阪の山本夏彦」とよばれる作家であって極めて興味深いと書いていた。
坪内はおそらく「文学雑誌」81号の磯田敏夫追悼特集号で磯田のことを知ったんだと思う。

ただこの「大阪の山本夏彦」なる形容は仄聞にして見たこともなく、いったい誰が言ったことなんだろうとずっと考えてきた。
昨日ミナミをぶらぶらして例の「波屋書房」に入って藝能懇話が出している「藝能懇話 別冊水市断章」を見つけてこれは肥田晧三が最近書いたものを集めた本なんだがその中に磯田敏夫の「道頓堀左岸」の紹介したページがあって、磯田の作品は大阪の様々な固有名詞が大正時代から昭和まで謎解きのように散りばめられていて難解で「さしずめ大阪の山本夏彦といった感がある」と書いている。
あーこれなのか、肥田が言い出したのかと思い初出を見たら平成15年の「大阪の歴史」だ。でも坪内がこんなマイナーな雑誌に目を通しているとは考えにくい。


実は坪内は先の「びあ」の連載をまとめた単行本「まぼろしの大阪」を出すにあたって谷沢永一と対談していておそらくそこで谷沢の口から肥田の話が出たのではないか。
でも出来たら坪内には「まぼろしの大阪」で肥田晧三の名前を出して欲しかったなあ。
坪内にしたら肥田はあまりにもマイナーなので誰も知らないだろうからここはメジャーな山本夏彦を利用したのだろう。
でもまあ肥田は地味な書誌学者だし、学歴もないから学閥とも無縁で、その上本人は極めてマイペースで好きなことしかやらない人物なので江湖に認められにくいキャラなわけだから、そこのところを十分に考慮してもらいたかったよ。



iPhoneから送信


2020-03-07 11:13:00

筑摩書房から出た神蔵美子の「たまもの」の1刷を久しぶりに入手しました。

既にちくま文庫でコンパクトサイズのものは刊行されていますが、写真集ですから大判の方がリアルです。

1月に急逝してしまった坪内祐三の若い頃の写真、かなりこえてた頃のも含めてたくさん載っているのは面白いけど、残念だなあという思いがまたこみ上げてくる。

キャプションめいたエッセイが神蔵の手であれこれ書いてある、1990年の秋頃神蔵は人妻なのに坪内に惚れて友人に「坪内さんと一緒になりたい」と漏らし、坪内は坪内で一ヵ月後に結婚式を控える身だった。

友人は神蔵に「あんた虫が良すぎるで、今日は週末なんだから坪内さんは恋人とどこかのホテルでセックスしてるに決まってるでしょう」と注意したことは書いてある。

ところが何がどう転んだか結婚式の一週間前に婚約破棄となり神蔵とひっついてしまった。

困った連中ですなあ。どれだけの人に迷惑をかけたか計り知れませんなあ。この本で残念なのは神蔵が前の夫と別れるに至った修羅場や坪内が婚約破棄に至った面白そうな話が全てカットしてあることだよな。

書いてあるのは神蔵の友人のセリフだけでは、本人の夢中になる様子は伝わるけど、女子高生や中坊やないんだから、ちょっと気持ち悪いよ〜〜

思い出したくないんだろうけど、せっかく芸人ぶってプライベートを売り物にするんだったら、そこを書かないとあかんでしょう。

 


2020-03-06 10:13:00

雑誌「BRUTUS」の3月15日号は「大阪の正解」と題して飲み屋、バー、名所、建物、キャバレー、古本屋、レコード屋などを網羅したガイドブックだ。
「夜ふかしの正解」としてキャバレー「ユニバース」が取り上げてあって60年代の内部の写真が見開きにカラーで掲載してある。
センターにステージがありここに向けてダンサーの乗る円盤が降臨してくる仕掛けだ。ステージを中心に客席がサークル状に何重にも取り巻いている。ポスターのあおり文句は「世界最大の超弩級キャバレー、世紀の大開場愈々迫る❗️❗️」だったり、「社交係3000人、大募集受付開始」などとある。
カラー写真を見ると場内は紫めいた漆黒の中にきのこ型の赤いテーブルライトが輝き、その奥に白く照りかがやくステージを見はるかせるようになっている。
社交係3000人はどうかと思うが、ダンサー以外にホステスは常時500人いたそうだから大した繁盛ぶりだ。
それにしても「世界最大の」という形容はいいのかなあ〜〜宗右衛門町の「メトロ」や「富士」なんかの方が大きい感じもするのだがほんとのところどうなんだろうか。

昨日は心斎橋に出向いてあれこれ散策。長堀通りから一本北に入った、心斎橋筋に面した角地にあった喫茶店がクリスビクリームドーナツになっているのでビックリした。
以前は周防町通りと心斎橋筋の角に大きな店舗があって当初は行列もできていた甘~~いドーナツ屋だ。
そのすぐ北側に「スターバックス」ができていて間口も広い二階建ての店舗なんだが、トイレが異常に汚い。
オーダーが済んで支払いをするときに渡されるレシートを店員が指差して「トイレに行かれる時はこの番号を押してください」という。
注文もせずにトイレだけ使う客を締め出したいというわけで、トイレのドアには金属製の押しボタンキーが付いていて4桁の番号を正確に押さないと扉が開かないようになっている。
中のトイレは御多分にもれず極めて汚く悪臭が絶えず立ち上ってくる。まあ従業員も面倒な仕事はしないわけだ。


iPhoneから送信


iPhoneから送信


2020-03-05 11:05:00

集英社新書から三上智恵の「証言沖縄スパイ戦史」が出た。三上は沖縄に通いつめてこれまで知られていなかった「護郷隊」の実像を映像化した監督だ。三上が行ったインタビューを中心に構成されたのがこの本で700ページ以上ある大冊。

「護郷隊」は15才くらいの子どもを赤紙で召集して作られたスパイ部隊で、陸軍中野学校出身のその道のプロに率いられてスパイ、敵の補給基地の破壊、交戦、狙撃などを受け持っていた。

何といってもこの本の白眉は次から次へと繰り出されるインタビュー記事で90近いたくさんの元の隊員があれこれ当時の模様を話してくれる。

三上はよほど人たらしなんだろう。

沖縄戦のこれまでの回顧録では帝国陸軍の装備は貧弱だし、火器もアメリカのものと比べると性能も劣るし、何より補給も行き届いていないので銃砲弾がすぐに尽きてしまい、それこそ勝負にならないみたいな話が多かった。

しかしハラスの「沖縄シュガーローフの戦い」を見ればすぐわかることだが帝国陸軍の装備や弾薬もあるところにはあるもので、全くアメリカの物量に引けをとらない。

この三上の本でも多くの証言者が「アメリカーが上陸してこれはすぐに負けると思った、だって火炎放射器はあるし、機関銃もすごいし、こちらは数発撃ったらまた弾込めしないといけないし、手入れしないとすぐに銃身が赤くなってしまう」みたいなことを言う。

しかし三上のすごいところは「あれはあまり信用できない。だって戦争が終わってから自分がアメリカ兵を殺したというのは言いにくいし、言っても何の得にもならないからね」と冷静に分析できるところだ。

もちろん戦後の風潮に背を向けて正直に「俺は米兵を100人は狙撃して殺したよ。子どもだったからあやしまれないし、普通の格好して向こうの基地の様子を調べてまた帰ってきて隊長にその模様を報告してたよ」と話してくれる老人もいて三上もビックリしている。

しかし笑わしてくれるところもある。

地上戦では沖縄の無辜の大衆がたくさん犠牲になった。「戦争になると軍隊は住民を守らない、自分の保身で精一杯、住民を置き去りにして逃げてしまう」とのステレオタイプがある。

三上はたくさんの証言を集めてそれを実証していく。しかしある意味それは当然なんだと言う。

彼女がルポした「護郷隊」はスパイ部隊なわけで「ほんま助かりましたわ」「食べるもんもないんですわ、なんとかなりませんか?」と言って頼ってくる大衆を守ろうとしたらそれこそ米軍に所在を知られることになってしまうから、住民を切り捨てていくしかない。

そのリアリティを三上はしっかり描いて、ではどう考えれば良いのかとなって、さてどんな考察があるのかとグッと期待してしまう。

その答えは「それは戦争などしないことだ」

あんた、そりゃないでしょう、そんなことはわかりきっていることで、今現在の視点で断罪しても何の意味もない。

住民をかばおうとしたら「アフガン、たった一人の生還」みたいになってしまうこともある。だからといってソンミ村みたいな蛮行はありえない。そこでどうしたのかだろう。

 


2020-03-04 00:24:00

昨日も晴天で気温も15度くらいまで上がり嫁と京都に出かけてみた。

出町柳の「ふたば」は豆大福の老舗で本来火曜日は休みなんだが三月三日のひな祭り、紋日ということで開いていたがいつもは3間ある店を三重くらいにうねうねと続く行列がほとんどなかった。

京都大学の本部に出向いて本部食堂で昼食、2年前に出向いた際はテーブルの上にオーバードクター向けの就職説明会の案内が掲示してあったが、今日はなし。

京都大学に来ていつも思うのは濃厚なバカの気配だ。百万遍の交差点に面する歩道に寝転がってスマホをいじる学生が今日もいた。

本部構内も寒いのに薄手のセーターだけ、サンダルばきというバックパッカーのような人、工学部の校舎のコンクリートの階段でしゃがみこんで動かない人や放心したように天を見つめる女、法経館と教育学部棟の間の道でジーパンにスニーカーで正座している女。

東大にせよ京大にせよそもそも募集人員が多すぎるからバカな学生もいくらでも入学してしまう。入学後、学問的水準についていけないのは別に問題はないが、喪失感にさいなまれて、やる気もなく人生をあやまることになる。

アル中になって人生をあやまった坪内祐三は横浜国立大で学生運動がかつて盛んだったのは、この大学に入ってくる学生が第一志望大学に落ちたあげくの入学で、深い喪失感やアイデンティティの危機に直面しているからではないか❓と書いていた。

これは京大ではないが近藤雅樹の「霊感少女論」には芸大の学生が自らの能力の低さに直面して「私には霊感やシックスセンスがある」とおかしな方向に逃げ込む姿が細かく書いてある。

そういえば京大の農学部の院生の女が教授から命じられた解剖実験のレポートを出したんだが出来が悪く、「お前❗️やる気があんのか❗️なめとったら承知せんぞ❗️」と叱責されて「メス入れるときに、細胞のみなさんの痛がる声や泣く音が聞こえるんです〜〜」と泣き出した話も聞いたなあ。

四条河原町から大丸まで歩いたんだが、大丸は全店臨時休業。高島屋や藤井大丸は営業していたのに、いったいどういうことなんだろうか。