Welcome
古本屋日誌
このところ野坂昭如は全然売れない。
以前は新潮文庫の「てろてろ」は人気があってすぐに売れたし、文春文庫の「文壇」の帯付きも欲しいというお客さんがかなりいた。
同じく文春文庫の「エロトピア」1、2は根強い人気があって「あれ探してんねんけど、ないねん、見つけたらゆうてや‼️」と頼んでくる人もいた。中公文庫の「1945夏神戸」も人気の作品だった。20世紀の末にでた3巻本の「野坂昭如リターンズ」はでた当初は「あれ全部揃えて送ってくれ‼️」というお客さんがいた。
野坂の扱ってる題材がエロに関するもので、また小説の文体がねちっこく、汗臭いものだからレオドラントで、除菌、自粛の今日に合わないからだろう。
でも「てろてろ」はエロスには暴力的な芽があることを哲学的に追求した作品だし、一読して全然エロではないよなあ。
男女のあれこれをつづったエッセイの「エロトピア」にしてからが壮大な思考実験で楽しく大笑いができるギャグでエロさはない。ラブホテルでの営みの話があるけど、「男がしゃかりきになるなんてどうなんだと思うよ、女の身体て見てみたらかなり奇妙な形だろう」と話を進めてベットに男が仰向けになって、天井から吊り下げられた女があれこれを致すてな話で、まあ男の方が手抜きをしたい場合の面白い手法が書いてある。
野坂は思考実験が好きで自伝的長編の中で戦時中、神戸の神社に住民が集まって「さあ‼️今日はお宮さんの神さんが出征されるぞ‼️神さん御自ら鬼畜米英を撃つわけや‼️ありがたいことやなあ‼️」と盛り上がったんだが、その直後B29の空襲で神社は全焼してしまう。
さて盛り上がっていた大衆は「神さんは沖縄でヤンキーとたたこうてはるんや、ちょっとお住まいが手薄になってもそりゃあしゃーないよなあ」となるのか「神さんゆうたかてこんなもんや」と目が覚めるのか、それとも「…………………」ひたすら沈黙を決め込み時流に流されていくのか興味深いですな。
野坂とは対照的に村田基の「フェミニズムの帝国」の方はえらい人気があって、とりわけ文庫本が欲しいというお客さんが多い。この本は以前は全く人気がなく俺がお客さんに「これ面白いですよ、ぜひ読んでくださいよ‼️」と勧めて読ませても「なんやこれは‼️女を襲う男の話を女に置き換えただけやないか、工夫が一個もないよなあ」と全否定されてがっかりした。
でも男がやるくらいの事はとうの昔に女もやってるわけでそれを赤裸々に描いたのは画期的だと思うけどなあ。
iPhoneから送信
私の連れが体調が悪く、咳が出るということで医者と相談してPCR検査を受けた。費用は2万5千円とのことで、俺はバカバカしいと思うけどね。
検査方法は唾液をたくさん採取するというもので15mlとのことで集めるのに10分くらいかかったというから笑わせる。翌日結果が来て問題なしだったが、ひょっと陽性のケースでは保健所から連絡が来るのだそうだ。
今日は新しくオープンした京都伏見のブックオフに行ってみた。
中書島の駅から徒歩20分くらいでスマホのアプリに住所を入れたら目的地までの経路が矢印で出てくるやつをいつものように利用して到着。
二階建ての店舗で三階はモータープール、二階は大きな釣具屋だ。
一階フロアの正面に本、左手や奥にハードオフで扱う商品で、新刊も扱っていてレジ前に流行りの新刊が並んでいる。
ここの新書の配置は出版社別になっていて、昨今のブックオフのように「歴史」とか「宗教」とかのジャンル別にはなっていなくて、探しやすいことは確かだ。
店の方も本が多くていちいちジャンル別に仕分けなんかしてられないということだろう。
iPhoneから送信
中野信子が自伝と銘打って講談社現代新書から「ペルソナ」を出した。
齢45で、どんな業績があるのかよくわからないが、相変わらず表紙は物憂い中野先生のお写真で「年齢にしてはきれいやな」みたいな反応が一般的だろうが、ご本人の意図は何なんだろうか。
内容だが、自伝にしてはディテールがなってない。
先輩の男性教員から抱きつかれた時、どう対処したらいいのかが書いてある。
泣き叫んだり、面罵するのではなく、「お体に障りますよ」と言うのが一番だそうだ。
しかしそういう教訓めいたことを読者は求めてはいないだろう。
中野信子は何回抱きつかれたのか知らないけれど、対処など人によりけりだろう。殴りつけて川に投げ落とした方がいい場合も多いことはいうまでもなかろう。
だから中野先生ご自身が遭遇したセクハラめいた行為を赤裸々に開陳していただきたいところなんだけどなあ。
合間合間にはわれわれの脳の不思議な仕組みが語られる。
自分の舌で味わいで「これは美味い」と思っていても、世間で名の通っているブランドの料理を食べたら脳は「こっちの方が美味い‼️」といとも簡単に自分の味覚を裏切る判断をしてしまうという。
中野は「われわれの脳は世間を生き延びるために周りに合わせてやっていくように、そもそも出来ている」と言う。
だから周りに流されたり、その時々の雰囲気に支配されて考えを変えてしまうのは人としてむしろ正しい反応であって、きちんとした自己などというものは存在しないというのだ。
iPhoneから送信
昨日は京都のお客さんのところに伺ってあれこれ。
「わしは全く恩恵はないけど観光客は戻ってきてるから、土産もんやとかは喜んでるで。ゴートゥーイートの京都の商品券はえらい人気なんやけど、あんなもんよう買うよなあ。わしは要らんわ。だいたい京都は観光都市で客は気分が大きなってしょうむない料理でもありがたがって食いよるさかい、うまい店てほぼないよなあ。ちょっと普通の味覚を持っとったらわかりそうなもんやけどな。世間はバカがいくらでもおる。」
とのことで、これに関しては私も異論はありません。
またこのところの京都の古本屋事情に関して
「コロナがどうとかで、古本てどこのどいつがいろたもんやら皆目見当もつかんよってに、毛嫌いする人もおるよなあ。せやさかいこじんまりしたいつもの古本屋には行かんとからして、通路も広うて、なんとはなしに清潔な感じのするブックオフに行きよるのが増えてるな。」
なるほど、古本は新刊本と違ってやや清潔感に欠けるとの感覚ですな。
味噌もクソも一緒くたにした乱暴なお話で面白かったです。
iPhoneから送信
昭和10年にサイレン社から出た本で元々は箱入りでした。
この本はなかなか古書価が高く箱入りの美本は1万円くらいしていました。タイトルが「大阪の話」で刊行が昭和10年、大大阪時代の真っ只中で風俗小説としても面白そうだと思っていました。
さて、入手して一読しましたが大阪の話と言えるのは巻頭の短編だけで後は東京の話でした。それでも大大阪の頃の雰囲気は味わえる短編ではあった。
①大阪の商家ではそろそろ月給制が採用となり本作では勤続20年の二番番頭が月に30円で、この金額では金はたまらない。一番番頭は60すぎで100円もらっている。
②心斎橋筋を少し東西に入った通りにかつてあった老舗は店をたたみ、喫茶店になってしまった。
③二番番頭の店は帽子を扱っていて儲かっているが本宅は打出にあって旦那夫婦はそこに居住している。しかし親旦那は未だに心斎橋の店に住んでいる。
④尼崎にはダンスホールがあって御寮人さんや大家の次男坊や三男坊が遊びに出向いているが、警察の取り締まりがあり、個人が特定されて警察に呼び出され親族も出頭を命じられて指導される。
⑤女子の服装は少し前まではほぼ和装だったが昨今洋装が幅を利かせ出した。
小説自体は2番番頭が御寮人さんの不貞を告げ口して一波乱ありそうなところで終わっていて物足りない。
やはり、藤澤桓夫には問題がある。
それはさておき、このところ京都、大阪の各所で小規模な古本市がある。天王寺さんや知恩寺のような古本市だとものすごい量の古本を運び込まなくてはならず、トラックを用意して積み込みのためにアルバイトを雇わなくてはならないなど面倒な用事が立て込んでしまう。
ところがたくさんの古本屋が持ち寄りで、しかもせいぜい本棚一つ分(それでもダンボール10箱くらいはあるけど)出すだけならさほど苦労せずに持ち込むことができる。
この気軽さがうけて昨今の古本市繁昌につながっている。
iPhoneから送信